侯爵家の七男です。開拓村の村長を押し付けられました。村人はいません。

7 村の名前が決まりました

「若手の有望株五百人だ」

「「「「「よろしくお願いします」」」」」

　兄さんの一声で職業軍人が五百人やってきた。
　家の前の広場にずらりと並んでいるが、多い。
　全員、武器防具が統一されていて、壮観。

「多くない？」

「こんなもんだろ。一党のガキどもだし」

　小領主より職業軍人の数が多くなった。侯爵家長男の力、半端ない。

「こっちが孤児と浮民のリストだ。代官には許可をとってある」

　子どもも入れて総勢一万人。

　これ村の人数じゃないよね。

「浮民対策の費用が浮いたって喜ばれたぞ」

　侯爵領、どれだけ人が余ってるんだ。

　辺境、広いからいいけど。

　畑は倍に増やしておこう。

「誘致した商会のリストと支店長の面会リストはこれ」

　王都に並ぶ名店の数々が並んでる。

　これ侯爵領関係ないよね？！

「こっちが、各ギルドからの手紙だね」

　王都並に、各種商店とギルドが揃ってしまった。

「領都の宿に滞在してるそうだけど、どうする？」

　交通網をどうするか、だよね。

　街道を作ってもいいし、飛行船を作ってもいいし、転移ゲートを設置してもいいし。
　迷うなあ。

「そういえば、この人たちはどうやってここに来たの？」

「全員、転移魔法が使える」

　レベル高いな。侯爵家長男家臣団。

　収穫物の交易も必要だし、転移ゲートが便利かな。

『転移ゲートの設置許可ください』

『侯爵領全域ニ作レ』

　嫌なこった。

『飛行船の発着許可をお願いします』

『侯爵領全域ニ作レ』

　ふざけんな。

「侯爵領から街道を整備するから、各自で来てもらえる？」

「妥当だな」

「開拓団の方は、転移魔法で呼ぶから、代官屋敷に集まって貰って」

「いいだろう」


　一月後。辺境に一万人規模の村が出来た。


　あれ？　俺の役目終わったんじゃないか。



『開拓村が出来たんで、帰宅していいですか？』

『あー、あー。ごほん。開拓村一つ作ったくらいでいい気になってんじゃねえよ。大穀倉地帯作れつったろ。代官に任せられるところまで、整備しろよ」

『普通にしゃべれんじゃねぇか！　くそ親父』

『隣国が戦争しかけてくるっていうんで、王都に行ってたんだよ。十万人規模の出兵だぞ。村長やめて将軍になるか？』

　冗談じゃない。

『兄さん達、帰らなくていいの？』

『好きにさせろ。向こうは勇者を出してくるっつーから、腕がなるぜ』

　はいはい。

『年寄りの冷や水にならないでね』

『総大将に任命してやろうか？　剣聖サマ』

　お断りします。

　勇者かあ。

　勇者って対人戦するんだな。対魔物用のスキルだと思ってた。

「兄さん。開拓団の人たちってスキルあるの？」

「お前が鑑定すりゃいいだろ？」

　スキルは生まれ持ったものだけど、鍵がついているので、鍵を開けないと使えない。
　鍵を開ける方法は、いろいろあるけど、一般的には神官に鑑定してもらい、スキルを自覚する事で鍵が開く。

「神官呼ぶとお金かかるし、俺が鑑定するか」

　一万人の鑑定をするのは面倒だなぁ。

　土人形に鑑定スキルつければいいか。

　後は。

『村の名前だな』

『父さん、遠話中に心眼使わないで』

『いいだろ、息子なんだ』

『プライバシー侵害です』

『村の名前、お前の名前な』

『嫌だよ』

『もう決定。記録した』

『クソ親父！』

『悔しかったら見返してみろ。賢者様』

『そういう煽りいいです。間にあってます。俺は一生平凡に暮らすので』

『お前が平凡に生きられるタマかよ』

　ムカつく。




「村の名前が決まりました」

「おー」

「リュートです」

　兄さん達を盗み見ると、笑いを堪えていた。




　開拓村『リュート』。
　村民一万人。
　自警団五百人。
　収穫高は、やる気次第かなあ。

　初代村長、リュート。

　一日も早く引退できるように頑張ろう。