蜘蛛の糸の雫

ha-na-ko

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ドライブ

2. フルスモークのガラスがさらに曇って行く

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めったに人が来ないような山道から、さらに脇に反れた舗装もしていない場所で車を止めた。
弘和さんはカチンと自分のシートベルトを取ると、僕に顔を近づける。

「んんっっ!!」

突然のキスに、大事に抱えていた配達しそびれた新聞をぐしゃっと握り潰してしまった。

それでもお構いなしに僕の顔を両手で覆い、しつこく舌を絡めてくる。
しまいに僕のメガネも奪い取り、ダッシュボードへと投げ入れた。

くちゅ、ちゅっ、ちゅっ、くちゅ……

「んっ……ふぅん……んんっ……」

息も荒く体温が一気に上昇し、フルスモークのガラスがさらに曇って行く。
そして唇を離した弘和さんを、僕は切なく見上げた。

「どうして、抵抗しないんだ」

まだ怒っているのか、荒っぽい口調でそう問いただした。

「………」

「憶えているだろ!? 
私の事を……」

自分の事を「私」と呼ぶようになっていた弘和さんは、やはりあの頃とは違って、大人なんだと実感する。
そして、そんな大人に僕が夢中になってはいけないのだと悟った。

思わず、首を横に振る。

「見ていたんだろう!
あの茂みに行く私の姿を……」

強く肩を掴まれた。
それでも僕は黙ったまま首を振り続けた。


急に助手席のシートが倒れた。

僕はそのシートごと寝転がってしまう。
手早く僕のシートベルトも外し、弘和さんは僕に馬乗りになった。

「大きくなったな……」

見上げる僕の姿をマジマジと眺め、そう呟いた。

弘和さんとのキスで、学ランの中の僕の股間は大きく膨らんで、破裂しそうになっていた。
その事を指摘されたのかと一瞬思い、顔が真っ赤になる。

「もう……3年になるか」


ああ、そういう意味か。と少しほっとした。

「君もあの頃とは違うんだろ?
私が君にした事の意味を知っている。

……そうだろ!!」

弘和さんは僕を見下ろし息荒くそう言ったが、僕はただ怯え、こくんと頷いた。



その途端に、また圧し掛かってきた弘和さんは、僕の学ランのボタンを外し出した。
流石に僕は抵抗した。

すると弘和さんは僕の両腕を掴み、自分の緩めていたネクタイを外し、両手首にぐるぐる巻きにしたかと思うとシートのヘッドレストに縛り上げた。

「あぁっ!!」

僕は思わず声を上げてしまった。

「!!!!」

弘和さんは一瞬動きを止めた。





「君……声変わりしているのか……」

恥ずかしくて、僕はぎゅっと目を瞑った。

「………あの頃と、違うから……」

僕は涙目になりながら、そう一言だけ発した。


そう、僕はあの頃のように幼児体系の柔らかな身体じゃない。
ちんこだって、皮もむけた。
声だってこんなんだし、あの頃のように、可愛くない……。



もう、弘和さんに興奮してもらったあの頃の僕とは違うんだ。




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