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婚約

忙しさ

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「これもお願いします」


「お前な」
「あの件で揶揄ったけど、これはないだろー」

議会の後のプロポーズに、あれはない!ムードがないと散々いったのを根に持たれたようだ。
王太子と騎士が文句を言う相手は、次期宰相で。
涼しい顔だが、幼馴染の2人には少々の不機嫌がわかった。

書類、資料、嘆願書。
仕事の山だ。

フィンステッド・ハレスこの国の王太子だ。

地方での衝突にならないよう、御令嬢から領地のことを聴く名目で集める。
そのため嘆願書を振り返り、頭に入れてもらう作業だ。

「これで揉め事になったら目も当てられん」
ローランドの危惧もわかるが王命だ。つまり、宰相の父も関わっている。

「まあその危惧より、今の事情を聴こうって試みだからな。」
王の判断で、王太子の相手探しでもある今回の機会だが、不穏ものぞく。

「『私も早く結婚したい』って顔だなー」
「だなっ!」

王太子と騎士のレイモンドは私と幼馴染。2人がかりでローランドを揶揄い、逃げるのが常だった。
そこら辺は子供の時から変わっていない。

「煩いぞ、レイ。お前も忙しいだろ。」

幼馴染ので気安さで愛称で指摘する。
騎士の仕事ではないが、3人の御令嬢に探りを入れる役目が与えられた。
あわよくば、婚約者を決めては?と目論みもあるが、まずは王太子の相手を決めなければどの結婚式もない。

「オレも早く結婚したい」
「諦めろ、俺が先だ。」執務中だが言葉遣いが“私”ではなくなった王太子に

「んんっ、これもお願いします。」と注意して、ローランドは気持ちを立て直し、山に書類を増やした。


「追加するなよ」
次期宰相も騎士も。臣下が先に結婚する訳にもいかず。
決まったら次は、生まれていない王子の相手にと貴族達の結婚ラッシュが予想された。

「まあわからなくもない現象だが。」
騎士の余裕の態度だが、相手を慎重に決めねばならない。婚約者もいないのは、弟が既に婚約がおり。
せっつかれていないためでもあった。


「私は早く、婚約者と仲を深めたいので。」そんな現象などどうでも良いと、ローランドの本音だ。


「ムッツリ!」「羨ましい」

「婚約者だ。」

レイも騎士として、結婚は頭にあるが。この2人の行く末を見守るしかなかった。
祝える状況になって嬉しいのは確かなのだが。
「長年思ってたもんなあ。権力使いすぎじゃねーか?」

「気合が入るくらいある。」
「あの顔で気合入ってたんだな。」

フィンステッド王太子が軽口を叩くも、こう話していては仕事が終わらない。

彼女を実家に帰してあげたいし。
いつ会いにいけるのか。ともどかしい思いもあるが、目の前の仕事は山積みだ。

きな臭さや、警備の強化と仕事が終わらないのが、
(苛立ってきた。)


「あ、やべちょっと行ってくるわ。」

ローランドの苛立ちを察知したのか、騎士然としてレイモンドが退室した。あの切り替えの速さは見習いたい。

今回の3人の令嬢を迎えるのこと自体デリケートな問題だ。
各地からとバランス良く集めたものの、各地の代表となって背負ってしまった。


誰かを選ぶのは決まっているが、決まらなかった令嬢はどうなるか。


騎士の嫁でも、王太子の幼馴染を夫に!となるか?
それも込みで当たるのを薄々感じているだろう。あんな身軽な動きをする騎士だが、察しは良い男だ。


「私の政局的に、中立派から選んだと思われるだろう。そう思われても彼女と居たい。」
ローランドの覚悟にフィンステッドは片眉を上げて反応する。

幼馴染の未来の宰相殿は、未来の王妃選びの重要さを知りながら
自分の伴侶を選びとれと発破をかけたのだ。

打算だらけ?
それでも真実思うことは忘れないようにしよう。
フッとわらい、妙に入った肩の力を抜く。

「私はこの国の王になるのだから。」
王になるために、通る道。

「未来の王にお仕えするのが私の役目ですから。」

頼りになる未来の宰相も相手を決めた。いや、やっと手に入れたと言うべきか。


気性もメイドとしての活躍と活動も目を見張るものがある。
(彼女の目からも、未来に王妃を見出してもらわねば。)


3人とも御令嬢と言う立場から、“メイドに見られている”という意識が希薄だ。
そこを利用して、人となりや行動を見せてもらう。

「頼りになる夫婦だよ。」


早く2人に休暇と結婚式を挙げさせたいと友として思う未来の王だった。




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