30 / 87
030 復讐の始まり
しおりを挟む
(いったい、何が起きているの? あの人が名乗った瞬間、シエラさんたちの様子が変わった。まるで“シン”って名前の人がここにいるのが絶対にありえないみたいに……シン?)
そこでふと、クリムはその名前に聞き覚えがあることに気付いた。
アルトが言っていたのだ。クリムが【黎明の守護者】に入る前、パーティーにいたユニークスキル持ちの名前がシンだったと。
それ以上の詳しい内容は知らないが、とにかく何か理由があって冒険者を辞めたとだけ聞いていた。
アルトの話しぶりから、シンという人物は円満にパーティーから抜けたとクリムは思っていた。
しかし、目の前に広がる光景はその予想からあまりにかけ離れていた。
そう。
まるで殺し合った末に別れたのではないかと疑うほどに、彼らの雰囲気は緊迫感に満ちていた。
「――――――ッ!」
その時、状況を観察していたクリムを、シンの鋭い眼光が捉えた。
「お前がクリムか」
「ど、どうして、私の名前を知って……」
クリムは恐怖心をできる限り抑えながら、震える声で応じる。
するとシンは事も無げに言った。
「今回の計画を実行に移す前、お前たちの情報を集めている時に知った。またユニークスキル持ちをパーティーに入れていると……相変わらずだな、アルト」
「っ! ……お前!」
シンの視線がアルトに戻る。
彼は明らかに動揺した様子だった。
不意に訪れる静寂。
お互いが出方を窺った結果、一時的に場がシーンと静まる。
そんな中で声を上げたのは、これまで無言を保っていたセドリックだった。
「落ち着いてください、皆さん! 相手の言葉に騙されてはいけません!」
セドリックは自身の杖を握り直すと、微笑みを浮かべながら前に進み始める。
そんなセドリックに対し、アルトは問いかけた。
「どういう意味だ、セドリック?」
「言葉通りです。そこにいる人物は、シンではありません」
その言葉に、シンの眉がピクリと動く。
それに気をよくしたのか、セドリックはさらに笑みを深めながら歩みを進めた。
「確かに姿形は似ているようですが、貴方がシンのはずはありません。だってそうでしょう? 彼がこれだけの威圧感を醸し出せるわけがありませんし、何より――あの場にいた皆さんも知っているはずです、そんなことは絶対にありえないと」
セドリックの力強い主張を聞き、ガレンとシエラはゆっくりと緊張を解いた。
「そ、そうだよな。アイツがあそこから生き延びられるわけがねぇ」
「え、ええ。思わず戸惑ってしまいました。これは美しくありませんね」
セドリックは止まらない。
「ご理解いただけたようで何よりです。ただ、それでも疑問は残ります。まず貴方がシンでないのは間違いないでしょうが……なぜ、あの時に起こったことを知っているのか。そしてどうして、彼の代わりに私たちへ復讐しようとしているのか……非常に気になります」
シンまであと一メートルのところまで近づいたセドリックは、にこやかな笑みで左手を伸ばします。
「お願いいたします、見知らぬ貴方。どうか、私の溢れんばかりの知的欲求を満たすため、何があったか教えてはくれません――――」
ずるり、と。
セドリックは、自分の視界が斜めにズレるのを体感した。
「――――は?」
何が起きたか理解することすらできず、上半身だけになったセドリックは地面にポトリと落ちた。
セドリックだけではない。
この場にいる誰もが、いったい何が起きたか理解できなかった。
全てを把握しているのは、どこから現れたのか漆黒の剣を持つ青年ただ一人。
彼は自分の足元で、今も何が起きたか理解できないまま呆然とするセドリックを見下ろす。
「ちょうどよかったよ。初めから決めていたことだ」
そのまま、シンは告げた。
「お前が、一人目だ」
かくして。
敵対する者の体と心、その全てを蹂躙するための復讐が幕を開けた。
そこでふと、クリムはその名前に聞き覚えがあることに気付いた。
アルトが言っていたのだ。クリムが【黎明の守護者】に入る前、パーティーにいたユニークスキル持ちの名前がシンだったと。
それ以上の詳しい内容は知らないが、とにかく何か理由があって冒険者を辞めたとだけ聞いていた。
アルトの話しぶりから、シンという人物は円満にパーティーから抜けたとクリムは思っていた。
しかし、目の前に広がる光景はその予想からあまりにかけ離れていた。
そう。
まるで殺し合った末に別れたのではないかと疑うほどに、彼らの雰囲気は緊迫感に満ちていた。
「――――――ッ!」
その時、状況を観察していたクリムを、シンの鋭い眼光が捉えた。
「お前がクリムか」
「ど、どうして、私の名前を知って……」
クリムは恐怖心をできる限り抑えながら、震える声で応じる。
するとシンは事も無げに言った。
「今回の計画を実行に移す前、お前たちの情報を集めている時に知った。またユニークスキル持ちをパーティーに入れていると……相変わらずだな、アルト」
「っ! ……お前!」
シンの視線がアルトに戻る。
彼は明らかに動揺した様子だった。
不意に訪れる静寂。
お互いが出方を窺った結果、一時的に場がシーンと静まる。
そんな中で声を上げたのは、これまで無言を保っていたセドリックだった。
「落ち着いてください、皆さん! 相手の言葉に騙されてはいけません!」
セドリックは自身の杖を握り直すと、微笑みを浮かべながら前に進み始める。
そんなセドリックに対し、アルトは問いかけた。
「どういう意味だ、セドリック?」
「言葉通りです。そこにいる人物は、シンではありません」
その言葉に、シンの眉がピクリと動く。
それに気をよくしたのか、セドリックはさらに笑みを深めながら歩みを進めた。
「確かに姿形は似ているようですが、貴方がシンのはずはありません。だってそうでしょう? 彼がこれだけの威圧感を醸し出せるわけがありませんし、何より――あの場にいた皆さんも知っているはずです、そんなことは絶対にありえないと」
セドリックの力強い主張を聞き、ガレンとシエラはゆっくりと緊張を解いた。
「そ、そうだよな。アイツがあそこから生き延びられるわけがねぇ」
「え、ええ。思わず戸惑ってしまいました。これは美しくありませんね」
セドリックは止まらない。
「ご理解いただけたようで何よりです。ただ、それでも疑問は残ります。まず貴方がシンでないのは間違いないでしょうが……なぜ、あの時に起こったことを知っているのか。そしてどうして、彼の代わりに私たちへ復讐しようとしているのか……非常に気になります」
シンまであと一メートルのところまで近づいたセドリックは、にこやかな笑みで左手を伸ばします。
「お願いいたします、見知らぬ貴方。どうか、私の溢れんばかりの知的欲求を満たすため、何があったか教えてはくれません――――」
ずるり、と。
セドリックは、自分の視界が斜めにズレるのを体感した。
「――――は?」
何が起きたか理解することすらできず、上半身だけになったセドリックは地面にポトリと落ちた。
セドリックだけではない。
この場にいる誰もが、いったい何が起きたか理解できなかった。
全てを把握しているのは、どこから現れたのか漆黒の剣を持つ青年ただ一人。
彼は自分の足元で、今も何が起きたか理解できないまま呆然とするセドリックを見下ろす。
「ちょうどよかったよ。初めから決めていたことだ」
そのまま、シンは告げた。
「お前が、一人目だ」
かくして。
敵対する者の体と心、その全てを蹂躙するための復讐が幕を開けた。
52
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる