外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、敵対するその全てを蹂躙する~

八又ナガト

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068 交流の日々

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 ―――無貌《むぼう》の巨人《きょじん》を討伐してから、一週間が経過した。


 その間、俺とイネスは引き続きダンジョン攻略を続けていた。 
 目的は変わらず、イネスのレベル上げだ。

 無貌《むぼう》の巨人《きょじん》ほど高レベルなモンスターはそうそう存在せず、さらに現在は俺が【痛縛の強制フォースド・ペイン】を使うことなく足止めしている。
 そのため、おのずとレベルアップ効率は落ちてしまったが……それを考慮しても、イネスの成長速度は一般的なそれを大きく凌駕していた。

 その証拠に――


「やった! レベルが1000になったよ、シモン!」


 Sランクダンジョン【幻影《げんえい》の樹海《じゅかい》】
 その最深部にて、レベル1200のボスを倒したイネスが嬉しそうに叫んだ。

 これで彼女は、Aランクを飛び越えてSランクに到達した。
 Sランク冒険者ともなれば、この迷宮都市であっても有数の実力者だ。
 少なくとも、以前絡んできたような奴らではもう相手にすらならないだろう。

 1000レベルは、多くの冒険者が目標にする最終到達点。
 そこに至ったイネスだが……彼女はしばらく喜んだかと思えば、すぐにその勢いを衰えさせた。

「で、でも、本当にいいのかな……? こんなわたしが……」

 イネスは申し訳なさそうに、俯いて呟く。
 対して俺は肩をすくめてみせた。


「まだ物足りないか? それなら、もっとペースを上げて――」
「逆だよ!? わたしのレベルが、こんな簡単に上がっちゃっていいのかなって意味だから! ……だって全部、シモンに頼りきりだもん」
「……ああ、そういうことか」


 ようやく理解できた。
 イネスは、俺の力を借りての急成長に戸惑っているようだ。

 その心情は理解できなくもない。
 レベル1000ともなれば、通常ならどれだけの天才であろうと10~20年はかかる領域。
 並の冒険者であれば――いや、多少才能に恵まれていたとしても、99%の冒険者は一生をかけても到達できないだろう。

 それをイネスは、俺の手を借りてわずか数日で到達してしまった。
 その成長速度は、かつて俺が【黒きアビス】で経験したそれすらも大きく上回っている。
 こういった反応になるのも至極当然だ。

(……まあ、さすがにこれからは効率も落ちるだろうけどな)

 周辺にあるAランク以上のダンジョンは、ほとんど網羅しつつある。
 無限再生を隠している以上、自死によって再出現させるわけにもいかないし……ちょっと両足を斬っただけであれだけ騒いでいたことを考えると、イネスも納得はしないだろう。

 俺にできる手助けにも限度はある。
 別れの日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

 俺はそんなことを思うのだった。


 ◇◆◇


「はぁ……疲れた……」

 数時間後。
 宿に戻った俺たちだったが、今日だけでダンジョンを2つも攻略したためか、イネスは疲労の色を隠せずにいた。

「シモン……ちょっと、休んでいい?」
「ああ、構わない。部屋で休んでこい」
「うん、ありがと……」

 そう言って、イネスは自室へと向かっていった。

 俺はひとまず、宿の食堂へと向かう。
 そこには、宿の手伝いをしている少女の姿があった。

「あ、シモンさん! お帰りなさい!」

 少女――確かミアだったか――が、俺に気づいて嬉しそうに駆け寄ってくる。
 この宿に来てから一週間、いつの間にかミアとイネスは仲良くなっており、その流れでミアは俺にも話しかけてくるようになっていた。

「最近、イネスさんとよくお話ししてるんですよ。とっても優しくて、素敵な方なんです!」

 ミアはキラキラとした瞳でイネスの話をする。
 どうやら、イネスのことを相当気に入っているようだ。

 俺は返答に困りながらも、相槌を返す。

「……そうだな」
「はい! ……あっ、話し込んじゃってごめんなさい! すぐにお料理を持ってきますね!」

 ミアはそう言い残し、またテキパキと動き始める。
 途中、イネスが疲れて部屋から出られないことを伝えると、彼女の分も別で用意してくれた。


 食事を終えた後、俺はイネス用のトレーを彼女の部屋まで運んだ。

「イネス、いるか?」
「うん、どうぞ!」

 部屋に入り、イネスにトレーを渡しながら経緯を説明する。
 疲れ切った表情の彼女だが、ミアの話を聞いて少し表情が明るくなった。

「ミアちゃん、本当に良い子だよね。こんなに優しくしてもらえるなんて……」
「ああ、お前との相性が良いみたいだな」

 そう言葉を返した時だった。
 イネスの表情が、少しだけ翳《かげ》った。

「ミアちゃんは、優しい子だからね……あんな子に身分を隠してるって考えたら、少しだけ心苦しくなっちゃうけど」
「……イネス」

 そう。イネスは今でも、自分がハーフエルフであることを隠し続けている。
 差別の恐怖に怯えながら、必死に素性を隠しているのだ。

「もし、ハーフエルフだってバレたりしたら……ミアちゃんも、わたしのこと嫌いになっちゃうのかな……」

 イネスは悲しそうに呟く。
 人間に交じって生きる、ハーフエルフの宿命とも言える。

 俺はそんなイネスの言葉に、どう反応すれば良いのか分からなかった。
 ただ無言で、イネスを見つめ返すことしかできない。

 そんな折、先ほど見た少女《ミア》の表情が浮かんだ。

「……案外、あっさり受け入れるかもしれないけどな」
「えっ?」

 イネスは驚いたように、きょとんとした表情を浮かべた。

「前にも言ったが、誰も彼もが差別意識を持っているわけじゃない。他人の評価よりも、自分の目で見たものを信じる奴は少なくないはずだ」
「…………」
「俺から言えるのはそれだけだ。今日はそれを食って、とっとと体を休ませろ」

 そう言い残すと、俺は扉まで向かいドアノブに手をかける。
 すると――

「……ありがと、シモン」

 背後では、イネスがポツリと感謝を呟いていたが……
 俺は聞こえなかったふりをして、そのまま部屋を後にするのだった。
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