外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、敵対するその全てを蹂躙する~

八又ナガト

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069 揺れる決意

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 それからさらに数日後。
 俺とイネスはSランクダンジョン【風《ふう》絶《ぜつ》楼《ろう》閣《かく》】を攻略していた。


『ダンジョンボスを討伐しました』

『攻略報酬 アイテム【風纏《ふうてん》の絶弓《ぜっきゅう》】が与えられます』


 ダンジョンボスであるレベル1500のグリフォンを討伐すると同時に、攻略を告げるシステム音が鳴り響く。
 報酬として与えられたのは、1張りの巨大な弓だった。


 ――――――――――――――

 【風纏《ふうてん》の絶弓《ぜっきゅう》】
 ・攻撃力+1500
 ・ダンジョン【風絶楼閣《ふうぜつろうかく》】の攻略報酬。
 ・この弓から放たれる矢は風を纏い、速度と貫通力が大きく上昇する。

 ――――――――――――――


 効果を見た俺は、小さく呟く。

「……外れだな」

 残念ながら今回もSPステータス・ポイントじゃなかった。
 数十のダンジョンを踏破する中で分かったが、どうやらパラメータ上昇に繋がる攻略報酬はかなりのレアらしい。

 一方、俺の呟きを聞いたイネスは全力で首を左右に振っていた。


「いやいや、大当たりだよ!? 攻撃力だけでもすごいのに、追加効果まであるなんて……こんなすごい武器、滅多に入手できないからね⁉︎」
「……そうか。ところでイネス、今の討伐でレベルは上がったか?」
「えっ? う、うん。ちょうど1200を突破したけど……」


 それを聞いた俺は、風纏《ふうてん》の絶弓《ぜっきゅう》をイネスに手渡す。

「シ、シモン? これって……」
「受け取れ。それだけのレベルがあれば、この弓も最低限扱えるはずだ」

 手っ取り早く成長するのに、新武器は効率がいい。
 考えようによっては、レベルアップ以上に有効な手段と言えるだろう。

 しかしイネスは両手で弓を握りしめながら、どこか納得のいかない表情を浮かべていた。

「武器を譲られるのは気に入らないか?」
「ううん、そういうことじゃなくて……さすがに、貰いすぎなんじゃないかって」
「……貰いすぎ?」

 何を言ってるのか理解できずそう尋ねると、イネスは真剣な目をこちらに向け、大きく口を開いた。


「だってそうでしょ!? 魔力を注ぐことで刀身が伸びて切れ味が増す【錬魔《れんま》の短剣《たんけん》】や、装備中に一度だけダメージを肩代わりしてくれる【無貌《むぼう》の仮面《かめん》】……他にも、高ランクダンジョンにふさわしい報酬を幾つもゲットしてるのに、シモンが迷うことなく全部わたしにくれるから。もう、何が何だか意味が分からなくなってくるよ……」


 ぐるぐると、両目を回しながらそう主張するイネス。
 どれも俺には不要なアイテムだったから譲っただけなのだが(【無貌《むぼう》の仮面《かめん》】は有用そうに見えて、肩代わりできるダメージに上限があった)、彼女からすれば、相当常識外れの行為だったらしい。

 それにしても、自分に有益なことが起こっているにもかかわらず、こんな風に不満を抱くなんて――

「……イネスは変わってるな」
「ぜーったい! 変わってるのはシモンの方だからね!?」

 納得いかないとばかりに、イネスは全力でそうツッコんできた。

 ここ数日でそれなりに親交が深まり、素を出せるようになったからだろうか。
 出会った当初に比べ、イネスは自然体で振舞うようになっていた。
 この感情豊かな姿が、彼女の本来の姿なのだろう。

 それにしても……

(誰かから、こんな接し方をされたのはいつぶりだったかな)

 俺はふと、そんなことを思った。
 それは自然と湧き出てきた、特に意味のない疑問。

 その、はずだったのだが――

「…………」
「……イネス?」

 なぜかイネスは、唖然とした表情で俺を見つめていた。
 呼びかけると、彼女はハッと我に返る。

「ごめん、急にぼーっとしちゃって」
「いきなりどうしたんだ?」
「その……シモンが笑ってるところ、初めて見たなと思って」
「えっ?」

 思わず自分の顔に触れる。
 そしてようやく、俺は自分が笑っていたことに気付いた。

 それは無意識によるものだったが、俺にとっては衝撃的な事実だった。

(俺が、笑った……?)

 楽しさも、喜びも、嬉しさも。
 そういった感情は全て、あの地獄で自死を繰り返す中で削ぎ落としてきた。
 今になってそれらを取り戻すなんてありえないはずだ。

 だけど今――現実に、俺は笑っていた。
 それだけは目を逸らすことのできない、まごうことなき事実。

 その事実を認識した時、一つの懸念が浮かび上がってきた。
 俺が楽しさや喜びといった感情を失ったのは、それらが復讐に必要のないものだったからだ。
 しかし今、それらを思い出し始めているということは……

(俺の中にある、復讐心が薄れてきてるのか……?)

 もし、その予想が正しかったなら。
 これは俺にとって看過できない事態だった。

 俺と、大切な家族を悲惨な目に遭わせた、始まりの原因であるアダムとブラスフェミー家。
 彼らへ復讐することこそ、俺が地獄から這い上がってきた一番の理由。
 それをこんなところで捨てるわけにはいかない。

 そう。
 その願いをかなえるために、決意が揺らぐ要因は全て取り除かねばならない。

 そのためにも―― 

(……これ以上、イネスと一緒にいるのはまずいかもな)

 きっとこれは一時の迷い。
 数年ぶりに誰かと同じ時間を過ごすことで、混乱してしまったのだろう。
 一人に戻れば、かつてと同じようにまた決意を固められるはずだ。

 だから、俺は――


「? どうしたの、シモン?」
「……いや、何でもない」


 不思議そうに俺を見るイネスを誤魔化しながら、間もなく訪れる別れの瞬間を想像するのだった。
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