38 / 98
第3章
12.ゴブリンをけしかけるのは勘弁してください
しおりを挟む
手足を縛られて横たわったまま太ももをこすり合わせて何かに悶え中っと、いろいろな意味で乙女のピンチへと陥った囚われのエクレア。
このピンチをどう乗り越えるか頭を巡らせるも一時中断させる事態となる。
(誰か来る?)
寝転がって耳を床に付けていたから足音がよく響いていたのだろう。
何者かがこちらに来るならっとひとまず寝たふり。気絶中のふりでやりすごす事にした。
やがて扉が開く音が聞こえる。
「ほぅ、これがお前らの言っていた収穫品か。随分上等なものを捕まえてきたものだな」
ゴブリン達のゴブゴブと解読できない声と違ってはっきり聞こえる男の声。
一体誰かっと気にはなるも今は気絶中。何も聞いてない聞いてないっと思うも……
「お嬢ちゃん、起きてるのだろう。寝たふりは止めたまえ」
(ぎくり)
寝たふりがバレてたようだ。
でもここで起きたら何か負けた気がするので寝たふりを続けるエクレア。
(寝たふり寝たふり……)
「起きないならゴブリンをけしかけるぞ」
「起きます。起きますのでゴブリンをけしかけるのは勘弁してください」
覚悟できたとは思ってもやはりゴブリンにあれやこれやを前にしたら怖気ずくのか、さっと目を覚ますエクレア。何かの勝負は完全敗北である。
再び仰向けからよっこいしょっと腹筋の力で身を起こし始める。
寝たふりは失敗したけどまだまだ手は残ってる。次はとってもか弱くて無力な女の子を装って油断を……
……
…………
………………
「ほぉ、私をみて怯えるのでなくに逆にらみつけるとはただものではないな」
はっと我に返る。
エクレアは男の顔……いや、眼を見た途端逆に睨みつけていた。無意識の内に睨んでしまったのに気付いた。
それもそのはず。あの眼はバジリスクと同じ魔眼の類。瞳を見つめた者の精神になんらかの影響を及ぼすもの。つい無意識に抵抗してしまったのだろう。
でも……
「え~私か弱い女の子だよ~しかも縛られてて何の抵抗も出来ない女の子だよ~ほらほら」
後ろで縛られてる手をもぞもぞさせて何もできないアピールっと、か弱い女の子路線は実行することにしたようだ。
「か弱い女の子がそんな目をするのか?」
「そ、そんなひどいですぅ!!」
ガーンとショックをうけるエクレア。しかもちょっぴり涙をためて……っと路線変更はせずこのまま続行。様々な意味で豪胆だった。
「ふむ、確かにか弱い女の子らしくはなったな」
「しくしく……もういや、なんでこんな目に…おうちに帰してくださぁい」
「だめだな」
「ならせめて縄を解いてください。さっきから痛いんですぅ」
「ゴブリン50匹を素手で血祭りあげたお嬢さんを自由にしろと?何の冗談をお言いかな?」
「ゴブリンの言う事なんてきっと何かのまちがいですよぉ」
「その血まみれの姿で信じろと?」
「これはただ逃げる時に血の海に転んじゃった時のものでぇ~決してゴブリン達をちぎっては投げちぎっては投げをしてついたわけじゃないんですぅ……えぐえぐ」
「………」
「………」
互いの視線の間に走る奇妙な沈黙。
エクレアはとにかくか弱い女の子アピールするも、その様がまさに乙女ゲームざまぁ系のお花畑ヒロインを彷彿させすぎてるせいでうさん臭さが全く抜けない。
ただまぁエクレア自身、こんな見え透いた嘘で騙せるなんて欠片ほども思ってない。
この態度はある目的をもくろんでの釣り針であり……
「そうか、よくわかった。どうやら嬢ちゃんは紳士よりも乱暴者の方が好みであるということを」
どうやら男はぱっくり食らいついてきたようだ。
(かかった!!)
エクレアの目的は男を怒らせることである。
出来なかったら出来なかったで『お花摘みにいかせてください』とか『即座に縄ぶちっで殴りかかる』とかいろいろ手を考えてたが、それらの案は無用となった。
なら次は……
このピンチをどう乗り越えるか頭を巡らせるも一時中断させる事態となる。
(誰か来る?)
寝転がって耳を床に付けていたから足音がよく響いていたのだろう。
何者かがこちらに来るならっとひとまず寝たふり。気絶中のふりでやりすごす事にした。
やがて扉が開く音が聞こえる。
「ほぅ、これがお前らの言っていた収穫品か。随分上等なものを捕まえてきたものだな」
ゴブリン達のゴブゴブと解読できない声と違ってはっきり聞こえる男の声。
一体誰かっと気にはなるも今は気絶中。何も聞いてない聞いてないっと思うも……
「お嬢ちゃん、起きてるのだろう。寝たふりは止めたまえ」
(ぎくり)
寝たふりがバレてたようだ。
でもここで起きたら何か負けた気がするので寝たふりを続けるエクレア。
(寝たふり寝たふり……)
「起きないならゴブリンをけしかけるぞ」
「起きます。起きますのでゴブリンをけしかけるのは勘弁してください」
覚悟できたとは思ってもやはりゴブリンにあれやこれやを前にしたら怖気ずくのか、さっと目を覚ますエクレア。何かの勝負は完全敗北である。
再び仰向けからよっこいしょっと腹筋の力で身を起こし始める。
寝たふりは失敗したけどまだまだ手は残ってる。次はとってもか弱くて無力な女の子を装って油断を……
……
…………
………………
「ほぉ、私をみて怯えるのでなくに逆にらみつけるとはただものではないな」
はっと我に返る。
エクレアは男の顔……いや、眼を見た途端逆に睨みつけていた。無意識の内に睨んでしまったのに気付いた。
それもそのはず。あの眼はバジリスクと同じ魔眼の類。瞳を見つめた者の精神になんらかの影響を及ぼすもの。つい無意識に抵抗してしまったのだろう。
でも……
「え~私か弱い女の子だよ~しかも縛られてて何の抵抗も出来ない女の子だよ~ほらほら」
後ろで縛られてる手をもぞもぞさせて何もできないアピールっと、か弱い女の子路線は実行することにしたようだ。
「か弱い女の子がそんな目をするのか?」
「そ、そんなひどいですぅ!!」
ガーンとショックをうけるエクレア。しかもちょっぴり涙をためて……っと路線変更はせずこのまま続行。様々な意味で豪胆だった。
「ふむ、確かにか弱い女の子らしくはなったな」
「しくしく……もういや、なんでこんな目に…おうちに帰してくださぁい」
「だめだな」
「ならせめて縄を解いてください。さっきから痛いんですぅ」
「ゴブリン50匹を素手で血祭りあげたお嬢さんを自由にしろと?何の冗談をお言いかな?」
「ゴブリンの言う事なんてきっと何かのまちがいですよぉ」
「その血まみれの姿で信じろと?」
「これはただ逃げる時に血の海に転んじゃった時のものでぇ~決してゴブリン達をちぎっては投げちぎっては投げをしてついたわけじゃないんですぅ……えぐえぐ」
「………」
「………」
互いの視線の間に走る奇妙な沈黙。
エクレアはとにかくか弱い女の子アピールするも、その様がまさに乙女ゲームざまぁ系のお花畑ヒロインを彷彿させすぎてるせいでうさん臭さが全く抜けない。
ただまぁエクレア自身、こんな見え透いた嘘で騙せるなんて欠片ほども思ってない。
この態度はある目的をもくろんでの釣り針であり……
「そうか、よくわかった。どうやら嬢ちゃんは紳士よりも乱暴者の方が好みであるということを」
どうやら男はぱっくり食らいついてきたようだ。
(かかった!!)
エクレアの目的は男を怒らせることである。
出来なかったら出来なかったで『お花摘みにいかせてください』とか『即座に縄ぶちっで殴りかかる』とかいろいろ手を考えてたが、それらの案は無用となった。
なら次は……
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄された瞬間、隠していた本性が暴走しました〜悪女の逆襲〜
タマ マコト
恋愛
白崎財閥の令嬢・白崎莉桜は、幼いころから完璧であることを強いられた女であった。
父の期待、社会の視線、形式ばかりの愛。
彼女に許されたのは「美しく笑うこと」だけ。
婚約者の朝霧悠真だけが、唯一、心の救いだと信じていた。
だが、華やかな夜会の中、彼は冷ややかに告げる。
「俺は莉桜ではなく、妹の真白を愛している」
その瞬間、莉桜の中の何かが崩れた。
誰のためにも微笑まない女——“悪女”の本性が、静かに目を覚ます。
完璧な令嬢の仮面を捨て、社会に牙を剥く莉桜。
彼女はまだ知らない。
その怒りが、やがて巨大な運命の扉を開くことを——。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる