いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-(アルファ版)

やみなべ

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第4章

29.せっかくだし、定番のアレをやってもらおうかな(side:エクレア)

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(う~ん……私って一体何言ってるんだろ)

 エクレアの本心をさらけ出した言葉は、自分でも少々何言ってるかわからないところがあった。
 “キャロット”の正体含めて今の段階では所詮仮説。まだまだ謎が多すぎて整理しきれてない状態。
 エクレア本人の記憶と『神』が仕込んだ偽の記憶、そこに本当の“私”であろう名前すら思い出せないおぼろげな前世の記憶が混雑したあやふやな人格が今のエクレアだ。
 『混沌』とも言うべき今の状態での言葉では、わけわからないのもある意味当然である。

 だが、そんなエクレアの言葉をローインはしっかり受け止めたようだ。

「なるほど……エクレアちゃんは神様からの命令に逆らうため『力』を求めたわけで、世界滅ぼす気はないとみていいんだよね」

「もちろん。状況から推測すると世界を滅ぼすのは『魔王』の仕事で、私の仕事は国を滅ぼす事。だから、世界は滅ぼさないけど国の方は場合によって滅ぼす事もありうる……のかな」

「それは冗談……じゃないんだよね?」

「冗談じゃないよ。神から与えられた任務だしそう簡単に逆らえないから。でも……大人しく言われた通り滅ぼす気はさらさらない。例えば私が女王様になって国名を別にしちゃうとかね。そうすれば今のストロガノフ王国は滅んだとも取れるでしょ」

「それ、屁理屈もいいところなんだけど……通用するの?」

「別に~通用しないかもしれないけど国を滅ぼしたのは事実なんだし、それで文句言って来たら改めてぶん殴ればいいだけのお話。むしろ文句言ってくれた方がいいかな。そうすれば殴る大義名分できるわけだもんね」

 その開き直りともとれる発言にローインは固まった。何を考えてるのか、表情から読み取れないが……
 唐突に『ぷっ』っと噴き出したかと思うと

「あはははははははは!!!うん、やっぱりエクレアちゃんはエクレアちゃんだよ!!疑ってごめん!!!君はエクレアちゃんだ!!!誰が何を言おうとエクレアちゃんだ!!!」


 笑い出した。腹を抱えて笑い出した。
 その様に少々思うところあるも、あえてローインが落ち着くのを待つことにした。

 そうして数分が立って落ち着きを取り戻したローインは改めて話し出す。

「わかった。あんまりよくわからないけど、とりあえずエクレアちゃんの目的が『神』をぶん殴るって事で片づけておくよ。それで僕からも一つ伝えておきたい事があるんだ」

「何?今日は今日で予定あるからあんまり長話したくはないんだけど……つまらない話だったらぶん殴るよ」

 ぶん殴る……
 そのキーワードは予想以上に効いたようだ。一瞬ローインがびくっと怯えるも、彼は引っ込む気ないらしい。
 覚悟を決めたかのように、口を開く。その言葉は……

「あのその……昨日僕は夢を見たんだ。エクレアちゃん、君に告白して振られる夢を」

 エクレアにとって予想外のものだった。

「ゆ、夢ぇ!?」

「そう、夢の中で僕はエクレアちゃんに告白しようとしたんだ。ただものすっごいヘタレだった僕はエクレアちゃんの逆鱗に触れちゃって」

(そう来たか!)

 エクレアは昨晩の事をなかったことにした。夢の中ということであえて忘れる選択肢を取ったが、ローインも同じく昨日の事を夢の中の出来事にした。
 だから今話すのはローインの夢。そこにエクレアがどうこう言う権利はない。
 なにせ夢の話はいわば妄想の類。一応『勝手な夢みるな!』っと殴って止める事もできなくはないが……
 それだと今後も夢の話を禁止することにも繋がる。

 上手い事考えたものだっとエクレアはついため息を付く。

「それで……」

「もういいよ。これは完全に私の負け。まさかそんな手使われるとは思わなかった。だから私思い出した。昨夜の事思い出しちゃった」

 エクレアはローインの話を静止させて敗北宣言を出す。

(全く、その頭の回転の早さをなぜ機能の告白に発揮してくれなかったのよ……)
 
 そう思うと再度ため息を付きたくなる。

「じゃ、じゃぁ……改めて謝らせてもらうよ。ごめんっとね」

「はぁ……許すよ。あれは私も酒の勢いがあり過ぎてちょっと言いすぎてたかなって気にしてたし、むしろ私の方こそ謝りたいぐらいだったかも」

 結果としてこれはこれでよかったのかもしれない。
 でも、このままローインに出し抜かれたままだというのもシャクだし……

 何よりここで告白されるなんて浪漫も何もあったもんじゃない。
 それでもこのまま強引に話をぶった切るのは愚行だ。ギャラリーも黙ってないだろう。

 どうしたものかと考えてたら……






ピコーン






 エクレアの頭上に電球が付くかのごとき名案が浮かんだ。


(そうだ!せっかくだし、定番のアレをやってもらおうかな)


 そう思ってエクレアはにやりと笑い……。


「7年後」



 エクレアはローインの出鼻をくじくかのごとく、その言葉を口にした。
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