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ネグレクト
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「……それって、ネグレクト、ってやつかもね」
カレーを食べながら、和也と紫音の話を聞いた母親の絵美は、困ったように眉間に皺をよせた。
「子供の世話をしない、育児放棄ってやつ。うーん……ねえカズ、アッキー君ってどんな感じなの?」
「えーと……すごく細いよ。あんまりお風呂も入ってないみたいだし、服も汚れてる」
「じゃあ、ご飯をちゃんと食べられてないのかな」
「たぶん……アッキーのお母さん、毎日帰りが遅いんだって。で、パンとかお弁当とか買ってきてくれる時もあって、それ食べてるって言ってたけど、毎日じゃないみたい。あと、金、土は家に帰らないって言ってた。金曜日の朝に、5百円くらい置いていって、日曜の夜に帰ってくるんだって」
「だからね、明日も遊びに来ていいって言っちゃったんだけど……ダメだったかなぁ」
不安げに尋ねた紫音に、絵美は『ウーン』と唸った。
「こういうのって、正直どうしていいのかわからないんだよね。うちとしては、来てもらっていいよ。一緒にご飯食べるくらい、どうにでもなるし。でもそのせいでアッキー君がお母さんに怒られたりしないか、心配で」
「あ……そっか……」
紫音も顔をしかめ、和也は不思議そうに尋ねた。
「なんでアッキーがお母さんに怒られなきゃいけないのさ。なんにもしてくれないお母さんの方が、怒られる事じゃないの?」
「うーん……なんていうか……確かに、アッキー君はまだ子供だし、お母さんが面倒見てあげなきゃいけないと思うけどね? でも、アッキー君のお母さんにも、何か辛い事があるかもしれないじゃない。仕事がすごく忙しいとか、心が疲れてしまっているとか。こういう事って他人が『親は子供の面倒を見るのが当然だ』って言って『はい、わかりました』となる事じゃないと思うの。もちろん、このままでいいというわけじゃないよ。でも、それぞれに、それぞれの事情ってものがあるだろうから」
「えー……」
「ほら、うちだって、他の人に『両親が仲良くする事が子供の為だ。離婚したなんてとんでもない!』って言われたって困るじゃない。二人には、本当に辛い思いをさせちゃって申し訳なかったけど、お母さん、お父さんとはもうどうする事もできなかったし……」
「あーそっか、そういう事か……うん。オレ、お母さんは悪くないと思うよ!」
「わたしも。お母さんは全然悪くないもん。離婚して良かったと思ってるよ」
……父親は、会社の若い同僚と不倫をし、妊娠させ、今は新しい家庭をもっている。
「でもオレ、アッキーがこのままなのは……嫌だなぁ……」
和也の言葉に、絵美は笑いながら頭をグリグリ撫でた。
「そうだね、お母さんも嫌だよ。とりあえず明日、アッキー君から話を聞いてみよう。今後、うちでご飯食べるようになっても大丈夫そうかどうか。学校の方にも、相談できそうなら相談してみるし。とにかく、本人に聞いてみないことにはね」
「うん。ありがとう、お母さん」
納得し、和也はにっこりと笑った。
カレーを食べながら、和也と紫音の話を聞いた母親の絵美は、困ったように眉間に皺をよせた。
「子供の世話をしない、育児放棄ってやつ。うーん……ねえカズ、アッキー君ってどんな感じなの?」
「えーと……すごく細いよ。あんまりお風呂も入ってないみたいだし、服も汚れてる」
「じゃあ、ご飯をちゃんと食べられてないのかな」
「たぶん……アッキーのお母さん、毎日帰りが遅いんだって。で、パンとかお弁当とか買ってきてくれる時もあって、それ食べてるって言ってたけど、毎日じゃないみたい。あと、金、土は家に帰らないって言ってた。金曜日の朝に、5百円くらい置いていって、日曜の夜に帰ってくるんだって」
「だからね、明日も遊びに来ていいって言っちゃったんだけど……ダメだったかなぁ」
不安げに尋ねた紫音に、絵美は『ウーン』と唸った。
「こういうのって、正直どうしていいのかわからないんだよね。うちとしては、来てもらっていいよ。一緒にご飯食べるくらい、どうにでもなるし。でもそのせいでアッキー君がお母さんに怒られたりしないか、心配で」
「あ……そっか……」
紫音も顔をしかめ、和也は不思議そうに尋ねた。
「なんでアッキーがお母さんに怒られなきゃいけないのさ。なんにもしてくれないお母さんの方が、怒られる事じゃないの?」
「うーん……なんていうか……確かに、アッキー君はまだ子供だし、お母さんが面倒見てあげなきゃいけないと思うけどね? でも、アッキー君のお母さんにも、何か辛い事があるかもしれないじゃない。仕事がすごく忙しいとか、心が疲れてしまっているとか。こういう事って他人が『親は子供の面倒を見るのが当然だ』って言って『はい、わかりました』となる事じゃないと思うの。もちろん、このままでいいというわけじゃないよ。でも、それぞれに、それぞれの事情ってものがあるだろうから」
「えー……」
「ほら、うちだって、他の人に『両親が仲良くする事が子供の為だ。離婚したなんてとんでもない!』って言われたって困るじゃない。二人には、本当に辛い思いをさせちゃって申し訳なかったけど、お母さん、お父さんとはもうどうする事もできなかったし……」
「あーそっか、そういう事か……うん。オレ、お母さんは悪くないと思うよ!」
「わたしも。お母さんは全然悪くないもん。離婚して良かったと思ってるよ」
……父親は、会社の若い同僚と不倫をし、妊娠させ、今は新しい家庭をもっている。
「でもオレ、アッキーがこのままなのは……嫌だなぁ……」
和也の言葉に、絵美は笑いながら頭をグリグリ撫でた。
「そうだね、お母さんも嫌だよ。とりあえず明日、アッキー君から話を聞いてみよう。今後、うちでご飯食べるようになっても大丈夫そうかどうか。学校の方にも、相談できそうなら相談してみるし。とにかく、本人に聞いてみないことにはね」
「うん。ありがとう、お母さん」
納得し、和也はにっこりと笑った。
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