【R18】餌付けした少年が大人になってやって来た

カナリア55

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 翌日。

『お昼ご飯食べにおいで』と誘っていた明弘は、12時少し前にやってきた。

 お昼ご飯のメインは鳥の唐揚げ。
 昨晩と今朝、チキンカレーを食べて鶏肉続きだが、気にする人は誰もいない。

 切り分けた鶏モモ肉をビニール袋に入れ、すりおろしたショウガと醤油、酒も入れて揉み、朝から冷蔵庫で寝かしておいた。
 それに溶き卵を入れ、片栗粉と小麦粉を入れて馴染ませ、油で揚げていく紫音。
 その隣で、和也と明弘はおにぎりを握っていた。
 中身は昆布の佃煮とサケフレークと梅干しの三種。

「あーあーカズ、欲張って具を入れすぎると、パカンって開いちゃうでしょ! アッキーは慎重すぎ! そんなに固く握らないの。もう少し適当に握っても大丈夫」

 母、絵美は監督だ。

 大量のキャベツの千切り、山盛りの唐揚げ、朝のうちに焼いておいた厚焼き玉子、おにぎり、豆腐とわかめの味噌汁。

「さあ、それじゃあ、あなた達が作ってくれたご馳走、いただきましょうか!」

 母親のその掛け声に、全員で『いただきます!』と続ける。

「うめーっ! 唐揚げうめーっ!」
「おいしい! すっごく! なんか、味がすっごくおいしい! それに、カリカリしてる!」
「シオンの唐揚げって、美味しいのよねー。あんた達が作ったおにぎりも美味しいわよ」
「ちょっと! キャベツも食べなきゃ! ほらみんな、皿出して。もう分けちゃうから」

 ワイワイと騒ぎながら昼食を食べ終わると、和也と明弘は一緒に宿題をし、終わったらゲームをした。
 そして夕飯は、昼に食べ過ぎたので、軽くうどんと残っていた唐揚げを食べ、風呂にも入ってからいよいよ、母親が明弘の話を聞く事になった。

「言いたくない事は、言わなくていいからね」

 そう前置きをしてから、絵美は明弘に尋ねた。

「アッキーはお母さんと二人だけで暮らしているんだよね?」

 コクリと頷く明弘。

「お母さんはお仕事忙しくって、あんまりご飯作ったり、洗濯してくれないのかな?」

 また、コクリと頷く。

「叩かれる事とかは、ある?」

 この言葉には驚いたように目を大きくし、ブンブンと首を横に振った。

「そっか、それなら大丈夫だ」

 絵美は明弘を安心させるようににっこりと笑った。

「ねえ、アッキー。もしアッキーがそうしたいなら、毎日うちに来て晩ご飯食べてもいいわよ。わたしは仕事でいないと思うけど、シオンがご飯作ってくれてるから」
「え、でも……」
「言っとくけど、あんまりたいした物は作れないよ。テスト期間中とか、すっごい手抜きするし。それに、手伝ってもらう事もあると思うよ」

 紫音が補足すると、明弘はコクコクと頷き、

「……ほんとうに、いいんですか?」

 と尋ね、絵美は『うん、いいよ』と微笑んだ。

「ただね、アッキーのお母さんの了承をもらわなくちゃいけないと思うの。黙っているわけにはいかないから。それは、大丈夫だと思う?」
「……あの……お母さん、話しかけても、無視するっていうか……学校の面談の事とかは、聞いてくれるけど、その他の事はあんまり……」
「あー、そっか、うん……じゃあ、おばちゃんが手紙書くから、お母さんに渡してちょうだい」

 そう言って、絵美は明弘の母親宛に手紙を書いた。
 それは、和也が明弘と友達になって家に遊びに来たという事。一緒だと、宿題も早めにちゃんとやるようなので、これからも家に来て欲しいと思っているという事。その際、遅くなったら夕食を食べさせてもいいだろうか、という事。自分は仕事でいないと思うが、高校生の娘がいるので大丈夫だという事、だった。

「これを渡してもらいたいんだけど、どう? 読んでみて。大丈夫そう?」
「……はい」
「じゃあ、あとは電話番号書いて、と……はい、よろしくね」
「あの……ありがとう、ございます」
「いいのよ。それと、もし何か困った事があったら、言える範囲でいいから私達に言うんだよ。家とおばちゃんの携帯の番号渡しておくからね。どっかにしまっときなさい」
「はい」



 そうして、月曜日。

 紫音が学校から帰ると、和也と明弘が宿題をしていた。

「アッキー、お母さん、うちにきていいって?」
「はい!」

 そう言うと、明弘はランドセルから封筒を出して紫音に渡した。

「手紙? あれ、これってお母さんが書いた手紙じゃない」

 突き返されたのかと心配したが、手紙の最後の余白に、絵美のものではない字が書かれてあった。

『すみません。よろしくお願い致します。』

「あー良かった! なんか言われた?」

 そう尋ねると、

「うん。迷惑かけないようにしなさいって」

 明弘は笑顔で答えた。

「お母さんが、一緒ならちゃんと宿題するって書いちゃったからさ、約束守んなきゃいけないじゃん? お母さんの作戦だったのかなぁ」
 
 そう文句を言う和也も、嬉しそうだ。

「宿題終わったら、ゲームしてもテレビ見てもマンガ読んでもいいから、頑張りなさい」
「もー、こうなったらソッコーで終わらす! なっ! アッキー」
「うん!」

 こうして明弘は、毎日水森家にやって来るようになり、紫音は毎日、育ちざかりの男子がお腹いっぱいになるよう、食事を作って食べさせ続けたのだった。

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