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第二章
手紙の内容
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「ねえリザ、そろそろ手紙を見てみたら?」
いつもの4人で昼食を食べ終えてから、ヴィクトリアがエリザベートに提案する。
「どうせ、さっきエド様が言っていた事でしょう? 生徒会に戻れって」
「そりゃあそうでしょうけど……なんと書いてあるのか、気にならないの?」
「別に……でもまあ、ヴィヴィが気になるなら……」
封を開けてササッと目を通し、大きくため息をついてからヴィクトリアに渡す。
「わたくしも読んでいいの?」
「ええ」
「では…………ええっ? なにこれ!」
「なになに? あの、エリザベート様、僕も読んでいいですか?」
「ええ、どうぞ」
エリザベートが許可したので、手紙はヴィクトリアからリアムへと渡される。
「ありがとヴィヴィちゃん……うーん……あー、なるほど……エリザベート様、ありがとうございました」
微妙な表情で返してよこした手紙を受け取り、次は、自分も読みたそうにソワソワしつつも立場上言えないでいるルークに手渡した。
「ありがとうございます。えーと……ルチア嬢に、謝罪するなら、とくべつに、許して、生徒会に戻れるようにして、やる?」
文字を習い、ある程度は読めるようになったルークが小さな声でボソボソ読み上げ、
「……あの、これ、私にはわからない貴族的な言い回しとかが」
「無い無い、そのままの意味よ」
エリザベートの答えに、ルークの顔が怒りで赤く染まる。
「エリザベート様! まさか言われた通りにするつもりでは」
「ないわよ。当たり前でしょう?」
その答えに、三人はホッとした顔をしたが、
「……でもリザ、王太子殿下の命令に従わなくても大丈夫なの?」
「命令って……謝罪すれば生徒会に戻してやると書いてあるだけなのだから、謝罪はしません、生徒会に戻るつもりもありません、でいいでしょう。それに、学園内では王太子なんて身分は関係ないでしょう?」
そう言って手紙をしまい、お茶を入れていると、不意に手元が暗くなった。
何かと思い顔を上げると、そこには憮然とした表情の男子生徒が立っていた。スラリとした長身に、少しキツめの整った顔立ち。短めの髪は太陽の光にキラキラ輝き、赤紫にも青緑にも見える。
「エリザベート・スピネル!」
(はあ……また来たわ)
あの後、学園内で見かける事はあっても、きちんと対面していなかったレオンハルトに、エリザベートは立ち上がってカーテシーをした。
「アレキサンドライト王国の宝石レオンハルト王太子殿下にエリザベートスピネルがご挨拶申し上げます」
完璧なカーテシーに対し、挨拶の言葉は一本調子で全く心がこもっていない。
(……面倒くさいわ)
形ばかりの挨拶をして正面に立つエリザベートを、レオンハルトは睨む。
「エドに聞いたぞ。生徒会に戻らないというのは本当か」
「はい、本当です」
「そんなにルチアに謝罪するのが嫌だと言うのか!」
即答するエリザベートに激昂するレオンハルト。
「心優しいルチアが、謝罪を受け入れてもいいと言っているのに」
「何に対しての謝罪でしょう。『わたくしの婚約者と、人目のない所で二人きりでいるのは誤解を招くから止めるように』と言った事が、謝罪するような事だと仰るのですか? それに、わたくしが生徒会に戻りたいと思っているとでも? そう思ってらっしゃるのでしたら、まっっったくの、思い違いですわ。わたくし、生徒会になんて戻りたくありませんの、これっぽちも」
親指と人差し指がくっつくかくっつかないかの隙間をレオンハルトの顔の前につくってみせ、エリザベートは大きなため息をついた。
「と、いう事ですので、もうよろしいでしょうか。わたくし今、昼食中ですので(食べ終わったけど)」
「なっ……エリザベート・スピネル!」
(あーうるさい。人の名前を大声で連呼しないでほしいわ……)
げんなりしながらため息をついた時、
「レ、レオンハルトさまぁ~」
ぽてぽて、と歩くくらいのスピードで走ってくる女生徒。
(……ここでヒロインも登場ってわけね)
ピンクに輝く、肩のあたりでクルンと内巻きになった髪を揺らし、胸を抑えて肩で息をする彼女。
『一生懸命走ってきました!』とアピールしている感じが鼻につくと思いながら見る。
(大きなピンクの瞳、小さくて細くて、小動物っぽい可愛さがあるわね。わたしとは正反対のタイプだわ。最近まで平民だったせいで、貴族特有の含みのある話し方はせず、差別もせず、みんなに優しくてニコニコしていて頑張り屋……とみせかけて、実は違うのよね、この子は。気を付けないと……)
離れた所からは何度も見ているがこんな近くで直接話すのは初めてなので、エリザベートはクッと胸を張り、姿勢を正した。
いつもの4人で昼食を食べ終えてから、ヴィクトリアがエリザベートに提案する。
「どうせ、さっきエド様が言っていた事でしょう? 生徒会に戻れって」
「そりゃあそうでしょうけど……なんと書いてあるのか、気にならないの?」
「別に……でもまあ、ヴィヴィが気になるなら……」
封を開けてササッと目を通し、大きくため息をついてからヴィクトリアに渡す。
「わたくしも読んでいいの?」
「ええ」
「では…………ええっ? なにこれ!」
「なになに? あの、エリザベート様、僕も読んでいいですか?」
「ええ、どうぞ」
エリザベートが許可したので、手紙はヴィクトリアからリアムへと渡される。
「ありがとヴィヴィちゃん……うーん……あー、なるほど……エリザベート様、ありがとうございました」
微妙な表情で返してよこした手紙を受け取り、次は、自分も読みたそうにソワソワしつつも立場上言えないでいるルークに手渡した。
「ありがとうございます。えーと……ルチア嬢に、謝罪するなら、とくべつに、許して、生徒会に戻れるようにして、やる?」
文字を習い、ある程度は読めるようになったルークが小さな声でボソボソ読み上げ、
「……あの、これ、私にはわからない貴族的な言い回しとかが」
「無い無い、そのままの意味よ」
エリザベートの答えに、ルークの顔が怒りで赤く染まる。
「エリザベート様! まさか言われた通りにするつもりでは」
「ないわよ。当たり前でしょう?」
その答えに、三人はホッとした顔をしたが、
「……でもリザ、王太子殿下の命令に従わなくても大丈夫なの?」
「命令って……謝罪すれば生徒会に戻してやると書いてあるだけなのだから、謝罪はしません、生徒会に戻るつもりもありません、でいいでしょう。それに、学園内では王太子なんて身分は関係ないでしょう?」
そう言って手紙をしまい、お茶を入れていると、不意に手元が暗くなった。
何かと思い顔を上げると、そこには憮然とした表情の男子生徒が立っていた。スラリとした長身に、少しキツめの整った顔立ち。短めの髪は太陽の光にキラキラ輝き、赤紫にも青緑にも見える。
「エリザベート・スピネル!」
(はあ……また来たわ)
あの後、学園内で見かける事はあっても、きちんと対面していなかったレオンハルトに、エリザベートは立ち上がってカーテシーをした。
「アレキサンドライト王国の宝石レオンハルト王太子殿下にエリザベートスピネルがご挨拶申し上げます」
完璧なカーテシーに対し、挨拶の言葉は一本調子で全く心がこもっていない。
(……面倒くさいわ)
形ばかりの挨拶をして正面に立つエリザベートを、レオンハルトは睨む。
「エドに聞いたぞ。生徒会に戻らないというのは本当か」
「はい、本当です」
「そんなにルチアに謝罪するのが嫌だと言うのか!」
即答するエリザベートに激昂するレオンハルト。
「心優しいルチアが、謝罪を受け入れてもいいと言っているのに」
「何に対しての謝罪でしょう。『わたくしの婚約者と、人目のない所で二人きりでいるのは誤解を招くから止めるように』と言った事が、謝罪するような事だと仰るのですか? それに、わたくしが生徒会に戻りたいと思っているとでも? そう思ってらっしゃるのでしたら、まっっったくの、思い違いですわ。わたくし、生徒会になんて戻りたくありませんの、これっぽちも」
親指と人差し指がくっつくかくっつかないかの隙間をレオンハルトの顔の前につくってみせ、エリザベートは大きなため息をついた。
「と、いう事ですので、もうよろしいでしょうか。わたくし今、昼食中ですので(食べ終わったけど)」
「なっ……エリザベート・スピネル!」
(あーうるさい。人の名前を大声で連呼しないでほしいわ……)
げんなりしながらため息をついた時、
「レ、レオンハルトさまぁ~」
ぽてぽて、と歩くくらいのスピードで走ってくる女生徒。
(……ここでヒロインも登場ってわけね)
ピンクに輝く、肩のあたりでクルンと内巻きになった髪を揺らし、胸を抑えて肩で息をする彼女。
『一生懸命走ってきました!』とアピールしている感じが鼻につくと思いながら見る。
(大きなピンクの瞳、小さくて細くて、小動物っぽい可愛さがあるわね。わたしとは正反対のタイプだわ。最近まで平民だったせいで、貴族特有の含みのある話し方はせず、差別もせず、みんなに優しくてニコニコしていて頑張り屋……とみせかけて、実は違うのよね、この子は。気を付けないと……)
離れた所からは何度も見ているがこんな近くで直接話すのは初めてなので、エリザベートはクッと胸を張り、姿勢を正した。
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