6 / 25
第6話
しおりを挟む
「奥様、大変お似合いです。
こんなお美しくお優しく素敵な方とご一緒になれて、本当にぼっちゃまは幸せものです」
「ありがとう、サンディーさん」
「奥様、サンディーとお呼びくださいませ」
ルグラン子爵家にも使用人は居たけれど、ここノックス男爵家の面々は侯爵家に長く仕えていただけありそれは素晴らしく、なかなか奥様として振る舞えないでいる。
「ありがとう、サンディー」
サンディーさんは微笑むと
「あの朴念仁のぼっちゃまの反応がいささか心配ですけど」
とぶつぶつ呟いていた。
体のラインが出ないシンプルなブルーのドレスに、真珠のネックレスを身につけた。
化粧は薄く、頬と口は血色が良く見える程度に色をのせて。
髪は予め緩くカールさせてから、まとめて真珠のピンを数カ所つけた。
これなら、私の悪目立ちする外観も清楚とはいえなくても、多少品よく見えるはず。
クライブ様が待つサロンへ向かうと、窓から景色を眺めていたクライブ様は私に気がつき、なぜか動きを止めた。
そしてらしばらくの間そうしていると、突然はっとしたように口を開いた。
「・・・・・・に、似合っている」
「ありがとうございます。
クライブ様も、とても素敵です」
クライブ様の黒を基調とした正装姿は逞しい体にぴったりで、それは整った目鼻立ちと相まって大人の魅力を醸し出していた。
行こうか。そう言って私の腰に手を添えると、慌てたように手を離した。
「折れそうだ」
「ふふふ、コルセットで締め付けているだけですから大丈夫ですよ」
私が笑うと、女性は大変だな。と独り言のように呟いて、大きな手を腰にそっと添えた。
会場へ入場すると、想像通りに多くの視線が興味深そうに私達に注がれた。
『ダンスを一曲踊ったら帰ろう』
クライブ様の小さな言葉に頷いて、しばらくは騎士団員や離宮の知り合いに挨拶をしてまわった。
知り合いと会話をしたせいか、ほんの少し会場の雰囲気にも慣れ、果実水で喉を潤し、ダンスを踊ろうかと話していた時だった。
急に辺りがざわざわしだした。
視線をそちらに向けると、一人の女性がこちらに歩いてくるのが目に入った。
その目を奪われるほど美しく儚げなプラチナブロンドの女性は、ゆっくりとした足どりを私とクライブ様の前で止めた。
不思議に思っていると、女性のグリーンの瞳が隣に居るクライブ様に注がれていることに気づいた。
その瞬間、得体の知れない胸騒ぎを感じた。
ゆっくりと隣に目を向けると、クライブ様は驚愕の表情で女性を見つめていた。
「久しぶりね、クライブ。
何年ぶりかしら」
「コンウォール、前伯爵夫人・・・・・・」
「しばらくは、こちらに滞在するの。
・・・・・・会えてよかったわ」
澄んだ美しい声でそう話すと、女性は去り際に私にチラリと目を向け軽く会釈して歩き出した。
それから、クライブ様と約束していたダンスを踊った。
『ノックス副団長は後悔されて元婚約者のご令嬢への想いを自覚された。
そして、今もなお後悔し続け、元婚約者のご令嬢を想っている』
フランシス様の声が頭の中で何度も繰り返された。
馬車の中で、クライブ様には何か言われたけれど、耳に入らなかった。
お屋敷に着いて湯浴みを済ませると、クライブ様に抱きしめられて、何度も「愛してる」と言われた。
頭の中には、見つめ合う二人の姿が焼きついて、いつもならクライブ様の大きな背中に抱きつくのに、私の両手はピクリとも動かなかった。
こんなお美しくお優しく素敵な方とご一緒になれて、本当にぼっちゃまは幸せものです」
「ありがとう、サンディーさん」
「奥様、サンディーとお呼びくださいませ」
ルグラン子爵家にも使用人は居たけれど、ここノックス男爵家の面々は侯爵家に長く仕えていただけありそれは素晴らしく、なかなか奥様として振る舞えないでいる。
「ありがとう、サンディー」
サンディーさんは微笑むと
「あの朴念仁のぼっちゃまの反応がいささか心配ですけど」
とぶつぶつ呟いていた。
体のラインが出ないシンプルなブルーのドレスに、真珠のネックレスを身につけた。
化粧は薄く、頬と口は血色が良く見える程度に色をのせて。
髪は予め緩くカールさせてから、まとめて真珠のピンを数カ所つけた。
これなら、私の悪目立ちする外観も清楚とはいえなくても、多少品よく見えるはず。
クライブ様が待つサロンへ向かうと、窓から景色を眺めていたクライブ様は私に気がつき、なぜか動きを止めた。
そしてらしばらくの間そうしていると、突然はっとしたように口を開いた。
「・・・・・・に、似合っている」
「ありがとうございます。
クライブ様も、とても素敵です」
クライブ様の黒を基調とした正装姿は逞しい体にぴったりで、それは整った目鼻立ちと相まって大人の魅力を醸し出していた。
行こうか。そう言って私の腰に手を添えると、慌てたように手を離した。
「折れそうだ」
「ふふふ、コルセットで締め付けているだけですから大丈夫ですよ」
私が笑うと、女性は大変だな。と独り言のように呟いて、大きな手を腰にそっと添えた。
会場へ入場すると、想像通りに多くの視線が興味深そうに私達に注がれた。
『ダンスを一曲踊ったら帰ろう』
クライブ様の小さな言葉に頷いて、しばらくは騎士団員や離宮の知り合いに挨拶をしてまわった。
知り合いと会話をしたせいか、ほんの少し会場の雰囲気にも慣れ、果実水で喉を潤し、ダンスを踊ろうかと話していた時だった。
急に辺りがざわざわしだした。
視線をそちらに向けると、一人の女性がこちらに歩いてくるのが目に入った。
その目を奪われるほど美しく儚げなプラチナブロンドの女性は、ゆっくりとした足どりを私とクライブ様の前で止めた。
不思議に思っていると、女性のグリーンの瞳が隣に居るクライブ様に注がれていることに気づいた。
その瞬間、得体の知れない胸騒ぎを感じた。
ゆっくりと隣に目を向けると、クライブ様は驚愕の表情で女性を見つめていた。
「久しぶりね、クライブ。
何年ぶりかしら」
「コンウォール、前伯爵夫人・・・・・・」
「しばらくは、こちらに滞在するの。
・・・・・・会えてよかったわ」
澄んだ美しい声でそう話すと、女性は去り際に私にチラリと目を向け軽く会釈して歩き出した。
それから、クライブ様と約束していたダンスを踊った。
『ノックス副団長は後悔されて元婚約者のご令嬢への想いを自覚された。
そして、今もなお後悔し続け、元婚約者のご令嬢を想っている』
フランシス様の声が頭の中で何度も繰り返された。
馬車の中で、クライブ様には何か言われたけれど、耳に入らなかった。
お屋敷に着いて湯浴みを済ませると、クライブ様に抱きしめられて、何度も「愛してる」と言われた。
頭の中には、見つめ合う二人の姿が焼きついて、いつもならクライブ様の大きな背中に抱きつくのに、私の両手はピクリとも動かなかった。
応援ありがとうございます!
12
お気に入りに追加
2,837
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる