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同棲の始まり
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週末の土曜日は城戸と松永、怜司までもが引っ越しの手伝いに来てくれた。
アパートを引き払い、必要な物はマンションへと運び不要な物はリサイクルショップ等に持ち込んだりしたが、自炊も殆どしない真尋の部屋の荷物は少なく男が5人もいれば、あっという間に片づいてしまった。
「結構、早く終わったな」
リビングのソファーに座り、ペットボトルのお茶を飲みながら城戸は言った。
「早坂···お前、荷物が少ないって手伝ってもらうの遠慮して言ったんじゃなかったのか···包丁すらないってどんな生活してんだ?」
海里が用意した食器や飲み物を運んできた真尋に、松永は呆れた声で聞いた。
「どんなって···包丁が必要だなんて思った事なかったんで」
「え?俺も似たようなもんっスよ?」
「···お前ら、何食べてんだ?」
「カップ麺とコンビニがあれば生きていけますって」
こいつらマジか···と信じられないものでも見るような目を松永は向ける。
「お前ら、自炊くらいしろよ。若いうちだけだぞ···そんな食生活で躰がもつのは。まあ、海里くらい作れとは言わないけどな···」
会話を聞いていた怜司は、海里の隣で料理を手伝いながら言った。そして出来上がった料理からテーブルへと運ぶ。テーブルに並べられていく海里の作った料理は、お洒落な居酒屋で出てきそうな物ばかりだった。
「···課長···凄いっスね···俺、嫁に来たいっス」
ボソッと呟いた城戸の言葉に思わず、
「駄目だ」
と反応してしまった真尋は、しまった···と顔を引き攣らせた。
「···あ、いや、俺も料理くらい出来ないと駄目だな···と」
苦しい言い訳をしながら目を泳がせると、キッチンに立つ海里と目が合った。彼は口元を手で隠し笑いを堪えている。
海里は自分のスマホを手にし、指で指し示した。
スマホを見ろって言ってるのか?
画面を見れば、メッセージ受信の表示が出ている。
真尋はテーブルの下でそっと画面を開いた。
『真尋の口から駄目って言ってくれるなんて嬉しいよ···キスして抱きしめたいくらいだ···』
文字を目で追った瞬間、耳元で海里にそう囁かれたような気がして真尋は慌ててスマホの画面を閉じた。
いつもされているキスを思い出してしまい顔が火照る。
「どうした?」
最後の料理をテーブルに置き、缶ビールを渡しながら隣に座った海里の瞳はまだ笑っている。
スマホを見た真尋の反応を分かっていて楽しんでいる顔だ。
「······」
真尋はそんなメールを今送るな、と文句を言いたげな視線を向けながら無言でビールを受け取った。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
「城戸!おい、起きろ!」
松永が酔っ払って床に転がっている城戸に声をかけるが、完全に酔い潰れていた。
「···課長、こいつ酔っ払って帰るとベッドまで辿り着けずに玄関先でも平気で寝れるんで、このまま転がしておいていいですか?」
「···大丈夫か?」
「こうなると起きないんですよ···」
毎回、城戸の面倒を見ている松永は、いつもの事ですと呆れた視線を投げかけながら酒を煽った。
「まあ···冬じゃないしな」
風邪はひかないか、と海里も城戸をそのまま放っておくようだ。
「松永、お前はどうするんだ?泊まっていくのか?」
「寝れる場所があれば···」
「じゃあ松永、お前ここのソファー使わせてもらえよ。お前も結構、飲んでんじゃねえ?」
怜司は松永の顔を覗き込んだ。
「あ─···城戸を送っていかなくていいと思ったら、ちょっと気が緩んだかもしれない···です」
送って行かなければと思って気を張っていたものが無くなると、酔いは一気にまわる。
松永はソファーの背に凭れかかっていたが、ズルズルと横に倒れ込み、そのまま寝息を立て始めた。
「コイツも寝ちまったな···」
怜司は松永の手から空のグラスを外すとテーブルに置いた。
「ああ···そうだ真尋、お前のスマホに俺の連絡先、登録しといて」
怜司はスマホを真尋に差し出した。
「何でお前と連絡取るんだよ、俺を介せばいいだろうが」
不服そうな顔で海里は真尋を抱き寄せた。
「えっ···ちょっ···」
まさか人前で抱き締められるとは思っていなかった真尋は焦りの声をあげる。
「一人くらい相談出来る奴が居た方がいいだろうが。お前と何かあったって誰にも相談出来ないんじゃ辛いだろ?」
怜司は溜め息混じりの視線を海里に投げかけた後、真尋の方を見た。
「心配するな、海里の恋愛対象が同性なのは前から知ってるし、お前らが付き合ってるのも知ってるから」
「···は?えっ?」
真尋はハッと海里を見た。
「何でそれ言ってくれなかったんですか!」
「何···をだ?こいつに付き合ってるって言った事か?」
「違いますよ···恋愛対象が同性って事です」
「いや···別にわざわざ言うような事じゃないと思って···最初から躰の関係もってるのに、今更カミングアウトも何もないかなと···」
噛みつく勢いの真尋に、珍しく海里が狼狽えている。
「大ありですよ!知ってたらお見合いの時だって、あんなに不安になる事もなかったし···そ、その後だって···」
あんなプレイをされる事もなかったのに···と思い出した羞恥で顔を赤らめながら、恨めしい視線を送る。
「気をつけろよ、真尋。海里は使える情報は自分の有益の為には最大限に活用する奴だからな」
俺はお前の味方だ、と怜司は笑ってみせた。
アパートを引き払い、必要な物はマンションへと運び不要な物はリサイクルショップ等に持ち込んだりしたが、自炊も殆どしない真尋の部屋の荷物は少なく男が5人もいれば、あっという間に片づいてしまった。
「結構、早く終わったな」
リビングのソファーに座り、ペットボトルのお茶を飲みながら城戸は言った。
「早坂···お前、荷物が少ないって手伝ってもらうの遠慮して言ったんじゃなかったのか···包丁すらないってどんな生活してんだ?」
海里が用意した食器や飲み物を運んできた真尋に、松永は呆れた声で聞いた。
「どんなって···包丁が必要だなんて思った事なかったんで」
「え?俺も似たようなもんっスよ?」
「···お前ら、何食べてんだ?」
「カップ麺とコンビニがあれば生きていけますって」
こいつらマジか···と信じられないものでも見るような目を松永は向ける。
「お前ら、自炊くらいしろよ。若いうちだけだぞ···そんな食生活で躰がもつのは。まあ、海里くらい作れとは言わないけどな···」
会話を聞いていた怜司は、海里の隣で料理を手伝いながら言った。そして出来上がった料理からテーブルへと運ぶ。テーブルに並べられていく海里の作った料理は、お洒落な居酒屋で出てきそうな物ばかりだった。
「···課長···凄いっスね···俺、嫁に来たいっス」
ボソッと呟いた城戸の言葉に思わず、
「駄目だ」
と反応してしまった真尋は、しまった···と顔を引き攣らせた。
「···あ、いや、俺も料理くらい出来ないと駄目だな···と」
苦しい言い訳をしながら目を泳がせると、キッチンに立つ海里と目が合った。彼は口元を手で隠し笑いを堪えている。
海里は自分のスマホを手にし、指で指し示した。
スマホを見ろって言ってるのか?
画面を見れば、メッセージ受信の表示が出ている。
真尋はテーブルの下でそっと画面を開いた。
『真尋の口から駄目って言ってくれるなんて嬉しいよ···キスして抱きしめたいくらいだ···』
文字を目で追った瞬間、耳元で海里にそう囁かれたような気がして真尋は慌ててスマホの画面を閉じた。
いつもされているキスを思い出してしまい顔が火照る。
「どうした?」
最後の料理をテーブルに置き、缶ビールを渡しながら隣に座った海里の瞳はまだ笑っている。
スマホを見た真尋の反応を分かっていて楽しんでいる顔だ。
「······」
真尋はそんなメールを今送るな、と文句を言いたげな視線を向けながら無言でビールを受け取った。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
「城戸!おい、起きろ!」
松永が酔っ払って床に転がっている城戸に声をかけるが、完全に酔い潰れていた。
「···課長、こいつ酔っ払って帰るとベッドまで辿り着けずに玄関先でも平気で寝れるんで、このまま転がしておいていいですか?」
「···大丈夫か?」
「こうなると起きないんですよ···」
毎回、城戸の面倒を見ている松永は、いつもの事ですと呆れた視線を投げかけながら酒を煽った。
「まあ···冬じゃないしな」
風邪はひかないか、と海里も城戸をそのまま放っておくようだ。
「松永、お前はどうするんだ?泊まっていくのか?」
「寝れる場所があれば···」
「じゃあ松永、お前ここのソファー使わせてもらえよ。お前も結構、飲んでんじゃねえ?」
怜司は松永の顔を覗き込んだ。
「あ─···城戸を送っていかなくていいと思ったら、ちょっと気が緩んだかもしれない···です」
送って行かなければと思って気を張っていたものが無くなると、酔いは一気にまわる。
松永はソファーの背に凭れかかっていたが、ズルズルと横に倒れ込み、そのまま寝息を立て始めた。
「コイツも寝ちまったな···」
怜司は松永の手から空のグラスを外すとテーブルに置いた。
「ああ···そうだ真尋、お前のスマホに俺の連絡先、登録しといて」
怜司はスマホを真尋に差し出した。
「何でお前と連絡取るんだよ、俺を介せばいいだろうが」
不服そうな顔で海里は真尋を抱き寄せた。
「えっ···ちょっ···」
まさか人前で抱き締められるとは思っていなかった真尋は焦りの声をあげる。
「一人くらい相談出来る奴が居た方がいいだろうが。お前と何かあったって誰にも相談出来ないんじゃ辛いだろ?」
怜司は溜め息混じりの視線を海里に投げかけた後、真尋の方を見た。
「心配するな、海里の恋愛対象が同性なのは前から知ってるし、お前らが付き合ってるのも知ってるから」
「···は?えっ?」
真尋はハッと海里を見た。
「何でそれ言ってくれなかったんですか!」
「何···をだ?こいつに付き合ってるって言った事か?」
「違いますよ···恋愛対象が同性って事です」
「いや···別にわざわざ言うような事じゃないと思って···最初から躰の関係もってるのに、今更カミングアウトも何もないかなと···」
噛みつく勢いの真尋に、珍しく海里が狼狽えている。
「大ありですよ!知ってたらお見合いの時だって、あんなに不安になる事もなかったし···そ、その後だって···」
あんなプレイをされる事もなかったのに···と思い出した羞恥で顔を赤らめながら、恨めしい視線を送る。
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漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
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