上司と部下の恋愛事情

朔弥

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番外編

指輪 3

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 マンションに着いた真尋は、鍵を回しドアを開けた。会社を出てから2時間が過ぎようとしていたが、海里だって会社から家までは距離がある。それを考えれば海里が帰る前に戻れる筈だった。
 誤算は···海里が早い出世が望めるほど優秀だったという事だ。


「···か···いり···」
 ドアを開けて真っ先に視界に入ったのは、まだ会社にいると思っていた海里の姿だった。
 怒ってるのか、表情のない顔をしている。
 これは謝った方がいいかもしれない、と真尋はそっと玄関から上がりながら口を開いた。
「ごめん···ちょっと寄り道してて···」
 遅くなった、と言葉を続ける前に腕を掴まれ海里に引き寄せられ抱きしめられた。
「···帰ってきて明かりがついていない部屋の中を見て俺がどんな気持ちだったか分かる···?スマホに何度も電話したのに出ないし···」
 海里はまだ会社にいると思ってスマホは鞄に入れたまま気にも留めていなかった。なにより指輪を買えた事が嬉しくて他の事に気が回らなかった。
「また···何かあったんじゃないかって···」
 その声は微かに震えていた。
 真尋の無事を確かめるように海里はきつく抱きしめた。
「心配かけてごめん···どうしても、海里に贈りたい物があって···」
 真尋は鞄から小さな紙袋を取り出し、更に中に入っているリングケースを手にして海里の前に差し出す。
「これは···」
 驚いた表情で海里は真尋の手の中にあるリングケースを見つめた。
 蓋を開ければ、2つの指輪が並んでいる。
「いつも海里の優しさに甘えちゃってるけど···俺だって海里の事を想ってるから···」
 真尋は照れたように海里から顔を少し背けた。
「···真尋の指にめてもいい?」
 真尋が小さく頷くのを見ると、海里は真尋の左手を手にとった。リングケースから指輪を外し、薬指にスッと通す。
「真尋も俺に嵌めて···」
 今度は真尋が海里の薬指に指輪を嵌めた。互いの指にお揃いのシルバーリングが光る。
 真尋は海里の指に収まった指輪を見て嬉しそうに笑った。
「思った通りだ···海里の指によく似合ってる」
「俺の事を想いながら選んでくれたんだ···ありがとう、嬉しいよ···」
 海里は指輪が嵌められた手に自分の掌を重ね、指を絡ませていく。そして空いている左手は真尋の頭部へとまわされ、ゆっくりと口づけられた。
 互いに求めるように舌が絡み合う。
「んっ···」
 口腔内の奥まで海里の舌が入り込み、受け入れた真尋の口から少し苦しい吐息と共に甘い声が洩れる。
 海里の舌が撫ぜるように動き、角度を変えながら真尋の唇を味わうように優しいキスを繰り返した。
 口づけを堪能した海里はそっと唇を離す。
 頭部を支えていた手を、キスで高揚し少し呼吸の乱れた真尋の頬に触れさせた。



 ──── 大切にするよ

 指輪も 真尋も ────

 


─────────────────────



 完結と言いながら、本編からの続きっぽいですね···(^_^;)
 海里が指輪を用意しては普通すぎたので、真尋に頑張ってもらいました。
 会社では着けられませんが、それ以外の時は着けている二人です。

 また思いついたら短編書きたいです···


        (2022.03.21)


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