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番外編
側にいて 2
しおりを挟む「真尋、まだ拗ねてる?」
夕食を食べ終わり、ソファーに座っている真尋に海里は声をかけた。
食事の間も口数が少なく、視線を合わせようとしない真尋の様子に、昼間、彼女からタオルを渡された時に断りきれなかった自分の態度に怒っているのだろう、と海里は困った表情を浮かべる。
仕事に支障を来すような冷たい態度を部下である彼女にとる事が出来なかった事もあるが、恋人である真尋の目の前で積極的に迫られた為に彼の様子が気になり上手く立ち回れなかった。
「機嫌、直して?」
真尋の横に座ると、海里は手を伸ばし頬に触れた。
「······俺だって···」
小さく呟いたかと思うと、真尋は勢いよく海里の方へ顔を向け襟首を両手で掴んだ。
「俺だって海里が風邪ひかないか気にしてたんだからな!」
「······え?」
真尋の言葉に、彼女に対する俺の曖昧な態度に怒っていたんじゃないのか、と思わず聞き返す。
「だから···濡れたままじゃ風邪ひくからって···俺だって海里の事、心配してるのに···」
途中で彼女に遮られてしまった。
「悔しいよ···恋人なのに···」
堂々と出来ない関係という現実を突きつけられた気がして、真尋は泣きそうな表情で小さく呟いた。そんな真尋を海里はそっと抱きしめる。
「嬉しいよ···真尋が俺の心配してくれて」
海里の顔ががゆっくりと近づき、唇に触れる。薄く開いた唇から舌が入り込み、真尋の口腔内を堪能するように深く唇を重ね舌を絡めた。
「んっ···海里···」
何度も互いに求めるように唇づけを交わす。
いつもより唇が熱い
海里の求める舌の熱も···
「まっ、待った!海里!」
慌てて唇を離し、真尋は海里を押し退けた。
「真尋?どうし···」
「どうしたじゃないよ!熱があるんじゃ···」
額に手を当てると熱い。
「真尋の手は冷たくて気持ちがいいな」
呑気に言いながら海里は笑みを浮かべる。
「気持ちがいいな···じゃなくて!ベッドで休まないと」
「大した事ないよ。別に躰も辛くないし···」
平気だと言う海里をソファーから立ち上がらせた。
「いいから、もう休めって!」
真尋は海里の背中をグイグイ押しながら寝室に押し込む。
「ちょっ···真尋、まだリビング片付け終わってないし···」
「片付けくらい俺にも出来るから。少しは頼ってよ、海里」
一緒に住んでるのに、と寂しそうな瞳で笑う。
「······そうだな、ごめん真尋」
海里は真尋を抱き締めながら呟く。家族になりたいと自分から言っておきながら、大切にしたいと思うあまり出来る事は全て自分がしたいと考えていた。
でも、それは真尋の寂しそうな瞳を見て間違っていたと気づく。
「頼っていい?」
「当たり前だろ」
海里の言葉に真尋は嬉しそうに頷いた。
翌朝になっても熱の下がらなかった海里は大人しくベッドに横になっていた。
「全然、大丈夫じゃないし···」
昨日、大した事ないって言ったの誰だよ、と真尋は呆れた顔で海里を見下ろす。
「熱を出したなんて···何年ぶりかなあ」
苦笑して見せるが、まだ熱で辛そうな様子が伺える。
「仕事の方は心配しなくていいから、ゆっくり休んでてよ···。ここのところ残業続きだったし、躰を休めるいい機会だよ」
「ああ···大人しくしているよ」
頷くと、海里は真尋に心配そうな視線を向けた。
「真尋こそ···無理してない?昨日、ずっと側についていてあまり寝てないんじゃないの?」
「大丈夫だよ、納期が近い時の方が睡眠少ないくらいだから」
病人が心配しないでよ、と真尋は苦笑した。
だが、睡眠が少なくてもベッドで横になって眠るのとベッドの傍らでうたた寝をするのでは躰にかかる負担がまるで違う。
熱の所為で夜中に目が覚め、ふと横を向くとベッドの傍らでうたた寝をしている真尋の姿があった。時々、汗を拭ってくれているのか、タオルを握りしめたまま寝息をたてていた。
自分を心配してくれる人がいる
熱で辛い筈なのに、なんだか嬉しくて海里は口元に笑みを浮かべていた。
「···海里?」
黙ってしまった海里を心配して真尋が顔を覗き込む。
「なんでもないよ。真尋がいてくれて良かったって感謝してただけ。キスしたいけど、風邪が治るまでお預けかな?」
何時もの悪戯っぽい笑みを浮かべる海里に、風邪で辛くて黙っていたんじゃないのか、と真尋はほっとする。
「キスしたい元気があるなら、今日中に治りそうだな」
会社に行く時間が迫ってきた真尋は、大人しく寝てろよ、と言いながら部屋を出ていった。
玄関のドアが閉まる音が聞こえると、部屋の中は静寂に包まれる。
海里はゆっくりと目を閉じた。
こんなにも静かだっただろうか···
一人に戻るなんて
もう出来ないな···
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漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
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