上司と部下の恋愛事情

朔弥

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番外編

側にいて 3

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 どれくらい寝ていただろうか。すっかり日は落ち、部屋の中は薄暗くなっている。


 丸一日、寝てたな···


 お陰で躰の疲れも取れ、熱もすっかり下がっていた。海里はゆっくり起き上がると、スマホの画面を見る。


 7時か···
 この時間じゃあ、まだ真尋は帰っていないか···


 少し寂しそうな表情を浮かべた海里の耳に物音が聞こえ、ドアを見つめる。
「······真尋?」
 もう帰って来たのだろうか、と確認しようとベッドを降りようとした時、部屋のドアがノックされ真尋が遠慮がちに顔を覗かせた。
「海里、起きてたんだ。どう?熱は···」
「ああ···大丈夫」
 海里の返事に安心したように笑みを浮かべると、部屋の明かりをつけベッドへと近づく。
「真尋、それは···?」
 真尋はトレーを手にしており、そこには温かな湯気の立ち昇る食器が置かれている。
「お粥···作ったんだけど、食べれる?」
「真尋が?」
 包丁さえ持たない生活を送っていたのに作れたのか!?と驚きの混ざった声が思わず漏れる。
「ネット見れば作り方くらい載ってるだろ!これぐらいは···作れるよ···」
 最初は勢いの良かった真尋の口調は次第に小さくなり、視線が泳ぐ。
 ちょっと···吹きこぼしはしたけど···と、真尋は後片付けが大変そうなキッチンの惨状を思い出していた。

「真尋?」
「何でもないよ!」
 誤魔化すように怒った口調で答えながら、真尋はベッドの端に腰掛けた。そしてお粥をスプーンですくうと、海里の口元に差し出した。
「ほら──···」
 食べさせようとして、驚いた表情の海里の視線とぶつかり手が止まる。
「···真尋が食べさせてくれるの?」
 まさか食べさせてくれるとは思っていなかった海里は驚いた表情のまま問いかけた。
「いや···そのっ···」
 途端に恥ずかしくなった真尋は顔を赤らめ、言葉を詰まらせた。
 宙に浮いたままのスプーンをおろす事も出来ずに困った顔をしている真尋を、可愛いなと海里はくすりと笑い、
「食べさせて···真尋」
 と、誘うように囁いた。
 海里に言われ、ゆっくりとスプーンを海里の口元へと運ぶ。
「美味しいよ」
 柔らかな表情で真尋に微笑みかけた。
 包丁も置いていないくらい料理をしないのに、自分の為に一生懸命作ってくれた事が嬉しくて口元が緩んでしまう。
「たかがお粥なんだから···美味しいもなにも···」
 ないだろう、と言いながら顔をふいっと背けた真尋の横顔は、少し照れているようだった。
「真尋、もっと食べさせて···」
「あ···うん···」




 綺麗に食べ終わった食器を片付けようとベッドから立ち上がろうとした真尋を、海里は背後から抱きしめるように腕を回し引き止めた。
「か、海里?」
「誰かが居るって···いいな···」
 抱きしめる腕にぎゅっと力が込められる。
「ちょっ··食器がっ···」
 トレーの上の食器が揺れ、真尋は慌てた声を上げた。
「片付けはいいから、このまま抱きしめていたい···」
 いつも余裕のある態度の海里には珍しく、弱々しく感じられる。
 躰が弱ると気持ちも弱るのだろうか。
「わかったから···ちょっと食器置かせて」
 真尋は海里の腕から抜けると、食器を邪魔にならないように床に置くと、再び海里の元へと戻った。
 腕を伸ばした海里に引き寄せられ、そのままベッドの中へと引き込まれる。
「···真尋···ずっと側にいて···」
 海里の腕の中に収まるように抱きしめられながら、耳元で囁かれる。
 真尋も腕をそっと海里の背にまわした。
「いるよ···ずっと···」
 海里に包まれる温もりを感じながら真尋は瞳を閉じた。


 恋人だと堂々と出来なくても、海里が俺を求めてくれるなら······






─────────────────────



 そのまま眠ってしまった真尋。
 翌朝、キッチンの惨状を片付けたのはもちろん海里です(^_^;)
 料理が一切出来ない真尋が頑張って俺の為に頑張って作ってくれた···と頬を緩ませながら片付ける海里の姿が浮かびます···


          (2022.10.03)





 
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