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番外編
出張 6
しおりを挟むさっさと資料室へ運んでしまおうと、歩き始めた真尋の前を海里の影が横から入り行く手を塞いだ。
まだ何か持たされるのだろうか、と足を止めた海里に視線を向けた真尋を海里は抱きしめた。
「え···?ちょっ···海里?」
何の素振りも見せなかったのに···と、突然の事に真尋は戸惑いの声をあげた。
「···早く真尋に会いたかった···やっと真尋を抱きしめられる···」
「海···り···」
切なそうに囁きながら、海里は真尋に口づけようと唇を近づけた。
あ···キス···される···
甘い雰囲気に流され、唇を薄く開き海里の口づけを受け入れかけた真尋は、ハッとここが会社の地下にある駐車場である事を思い出す。
「ま、待った···!駐車場なんかで···誰かに見られたら···」
焦って海里を押し退けようとするが、両手は渡された資料を抱えている為に塞がっていて上手くいかない。まさかその場に放り投げるわけにもいかず、真尋は海里から離れようと躰を捻り別の方向へと足を向けた。だが、逃がさないとばかりに、抱えた資料ごと抱き竦められた。
「薄暗いし、出入口からは柱の影になってて分からないよ。昨日からお預けくらってる気分だったんだから···逃さない」
「ま···さか、書類持たせたのって···」
この為!?と、真尋は顔を引き攣らせる。
「真尋はすぐ逃げるから···」
海里は悪戯っぽくクスリと笑った。
「会社でそういう事するなって言ってるだろ!」
「そういう事って?」
どんな?と聞き返され真尋は言葉に詰まる。
「···だから······ス···とか···」
「ん?何?」
「キスとかだよ!」
言わされた恥ずかしさから真尋は羞恥に頬を染め俯いた。
「昨日はあんなに大胆だったのに?」
「それは······」
海里の他に誰もいなかったし、煽るように囁くからじゃないか···と恨めしそうに下から見上げる。
真尋は怒っているようだが、羞恥心に耐える表情はそそられるだけにしか感じられない。海里は困った笑みを浮かべながらも可愛いい反応の恋人に頬をほころばせた。
「···なに笑って···」
「やっぱり画面越しの真尋より本物がいいなぁと思ってね。······真尋は?」
「そんなの···」
本物がいいに決まってる
真っ直ぐ海里を見つめる真尋の瞳を見た瞬間、海里は真尋の腰に回した腕に力を込め自分の方へと引き寄せ口づけた。
昨夜、触れられなかった分を埋めるかのように、海里は真尋を求め深く唇を重ねる。
「···んぅっ···」
舌を奥まで入れられ、呼吸さえも貪られる激しい口づけに、真尋は苦しそうな吐息を洩らした。
舌を絡ませ、流れてくる唾液を必死に飲み込む。
「っつ···か···いり·········待って···もう···やめっ···」
合わせる唇の角度を変える僅かな隙に、真尋は乱れた息を吐きながら海里に訴えかけた。
「どうして?」
「どうしてって···これ以上されたら···」
真尋の半身は期待するように軽く熱を帯び始めている。ここで海里を止めなければ、彼を欲しいと求め欲情を抑えられなくなりそうだった。
いつ誰が地下駐車場に降りてくるか分からない状況なのに、それでもいいからシテ欲しいと僅かながら感じ始めている自分の流されやすい理性に、我ながら呆れる。
「と、とにかく早く戻らないと、松永さんに何かあったのかって聞かれちゃいますから!」
海里を求めかけていた事を隠すように口早に話した。
「俺としては、もう少し真尋の唇を堪能したかったんだけど···確かに、これ以上シテたら我慢出来なくなっちゃうかな」
クスリと笑いながら、海里にあっさりと半身に燻る熱を見透かされ、真尋は顔を熱くしながら俯く。
抱えてる書類の陰に隠れて気づかれないと思ったのに···
羞恥に顔を赤らめ俯いている真尋の手から書類を再び自分の手に戻しながら、海里は真尋の耳元に唇を寄せた。
「我慢出来なくなるのは真尋だけじゃないよ···」
海里の言葉に顔を上げた。
「俺も···真尋が止めてくれなかったら抑えられそうになかったかな」
そう言いながら海里は柔らかな笑みを浮かべた。
「続きは···残念だけど帰るまでお預けかな?」
瞳を覗き込むように問いかけられ、
「今日は残業···な···いと思うから···」
気恥ずかしそうに真尋は答える。
「じゃあ···また後で、ね···」
真尋はこくりと小さく頷くと、「戻ろうか」と言った海里の抱えている書類に目を留める。
「···俺、書類運ぶのを手伝う為に呼ばれたんじゃないんですか?」
「ん?ああ、これくらい一人で運べるから、真尋はそこの座席にある紙袋を持って行ってくれる?」
これですか?と紙袋の持ち手を握り、取り出した。
他の書類が入っていると思いながら手にした真尋だったが、やけに軽く首を傾げる。
「それ、部署の連中にお土産。クライアントの人がお勧めだって教えてくれたお菓子」
真尋は書類を抱える海里と自分の持つ紙袋を交互に見つめた。
これ、腕にかけたら一人で持てるんじゃ···
物言いたげな目で見ている真尋に気づいた海里は、
「早く真尋を抱きしめたかったからね」
と、唇の端を上げ悪戯っぽく笑った。
「半分、持ちますよ。松永さんに何しに行ったんだって突っ込まれても答えれないじゃないですか」
真尋は呆れたように軽く溜め息を吐くと、海里から書類の半分を貰い受ける。
「俺が呼びつけたんだから、適当に返せばいいのに。真尋は真面目だな···。まあ、そこが付き合う前から上司としては評価してた所でもあるんだけど」
ボソッと最後に呟いた言葉に、真尋は仕事の面でちゃんと評価していてくれた事が嬉しくて、自然と笑みが零れる。
自分が誘いをかけて躰から始まった関係だっただけに、時々、流れで付き合う事にしただけなのではないだろうかと考えてしまう事がないわけじゃない。でも、こうして付き合う前の自分もちゃんと海里の目に留まっていた···そう知る事が出来ただけで嬉しくなってしまう自分は単純なのかもしれない。
「真尋?行くぞ?」
海里に声をかけられ、慌てて表情を取り繕うと海里の後を追って歩き出しだ。
─────────────────────
スマホ越しに見られながらシテいる真尋の姿を妄想したくて書きました(^_^;)
帰宅後はお預け状態だった海里と···♡
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また思いつけたら書きます···
(2022.11.08)
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