上司と部下の恋愛事情

朔弥

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番外編

二度目のバレンタイン 1

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「ねえ、真尋···今年はチョコ用意してくれた?」
 リビングのソファーに座る真尋を背後から抱きしめながら海浬は問いかけた。
「·········買って···きた···」
 チョコレートを買いに行った日の事を思い出しながら、真尋は小さな声で呟いた。



 ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇



 昨年のチョコを用意していない事を残念がっていた海里の姿を思い出し、今年はバレンタインのチョコレートが売られている特設会場に足を運んだ真尋だった。真剣な表情で選ぶ人や友人と楽しそうに選ぶ女性達の姿に圧倒されながら、殆ど男性客のいないこの場に足を踏み入れるには勇気がいる。
 自分の存在はかなり浮いているのではないだろうか···と今すぐこの場から逃げ出したくなった。
 海里なら、コンビニで買ったチョコレート菓子でも喜んで受け取るだろう。
 チラリとそんな考えが浮かんだ。


 でも···
 やっぱり、ちゃんと選んで渡したい······


 真尋は意を決すると、ゆっくりと彼女達の邪魔にならないよう商品から少し離れた位置からチョコレートを見て回る。
 自分が思うほどチョコレートを選ぶ彼女達は自分の事に真剣で他人に興味はない。真尋は少しホッとしながら、気になった商品の前で足を止めた。
 大人の雰囲気が漂う黒をベースとした箱に詰められたチェリーリキュールの入ったボンボンショコラ。
 海里に似合いそうだ···と、思わず笑みが零れ、恥しさに慌てて口元を手で覆う。
 真尋は手を伸ばしチョコレートを一箱てに取った。そして、レジへと向かう。その表情かおはチョコレートを選ぶ彼女達と同じように幸せそうな顔をしていた。



 ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇



 レジのお姉さんに商品を差し出した所で自分の頬が緩んでいた事に気づき、気まずい思いをした事まで真尋は思い出していた。
 真尋は気恥ずかしさから、海里の顔に背を向けたまま買ってきたチョコレートの箱を差し出した。
「······これ···」
 海里は受け取りながら、
「こういうのって、好きとか言いながら渡してくれるんじゃないの?」
 と、買いに行った時の事を思い出し顔を赤らめている真尋に柔らかな笑みを浮かべながら問いかける。
 男性客の少ない売り場に自分の為に買いに行ってくれただけで十分嬉しい。言葉にしなくても好きだという気持ちは伝わってくる。それでも真尋の口から聞きたかった。
「·········好き···だから···今年は···ちゃんと用意したし···」
 最後の方は声を小さくしながら真尋は呟いた。
「去年は真尋がキスをくれたんだったね」
 海里の言葉に真尋は、そのすぐ後にチョコの変わりならもっと甘いのをと濃厚なお返しを職場で返された事を思い出す。
 チラリと真尋は海里の顔を盗み見た。
 甘い微笑みは真尋からの口づけを待っている。
「···物足りないキスみたいだったから、今年はチョコを用意したんだけど···」
「じゃあ····今年はこのチョコで甘いキス···してくれる?」

「······え?」

 悪戯っぽう笑う海里に真尋は頬を引き攣らせた。
 チョコレートの箱に掛かっているリボンを解き、中からボンボンショコラを一粒取り出した。そのチョコを真尋の唇にそっと触れさせ、耳元で囁く。




 ──── 真尋が食べさせて···





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