処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ

文字の大きさ
97 / 138

地獄に立つ三剣

しおりを挟む
堕天の六翼が静かに舞い降りる。
《ルシフェル》の微笑は、慈悲にも似て、だが――その眼差しは、世界そのものを見下ろしていた。

「また、愚かな者たちが立ち上がるのね」

対するは、聖騎士《レオ・グラディス》。その盾は、かつて幾千の戦場を守り抜いた鉄壁。
そして、白衣を纏う癒し手《ベルナール・ストーク》。
その傍らに、血塗れでうずくまる男――ゼフィル・ヴァイスラント。

「……まだ立てるか、ゼフィル」

レオが言う。だがその声に、憐れみはなかった。ただ、“戦士への問い”があるのみ。

ゼフィルは、歯を食いしばって地を見たまま、答える。

「……俺は……敗れた……誇りも、剣も……砕かれた……」

「なら、今こそ“騎士”として――立て」

ベルナールの声が優しく響く。傷を癒す光が、ゼフィルの体に注ぎ込まれた。

「強さに溺れた者でも、立ち上がることはできる。お前が“英雄”であるならばな」

「……英雄、か……」

ゼフィルの手が、瓦礫の中から愛剣を拾い上げる。
刃は欠けていた。かつて“宝剣”と謳われた剣は、今や見る影もない。

だが、その剣を握る手は、震えていなかった。

「……舐めるなよ、堕天の女王……“美学”ってのはな、敗北を喰らってもなお貫くもんだ」

ゼフィルはゆっくりと立ち上がる。

「俺の誇りは……まだ死んでいない!!」

その背に、金色の光が走る。

レオが、盾を構えて進み出る。

「――行くぞ。俺たちで、“地獄の空”を打ち砕く」

「私も全力を出させてもらいますよ」

ベルナールが杖を構え、祝福と呪詛の両方を込める詠唱を始めた。

ルシフェルは、ゆるやかに六翼を広げた。

「ならば、始めましょう。“堕天”が天に仇なす罪を裁く、最後の審判を」

次の瞬間――

雷のような音と共に、光の矢が三人を襲う。
レオが盾を掲げて防ぎ、ベルナールが即座に防御魔法を展開、
ゼフィルは魔剣を逆手に構え、切り払う。

「くっ……威力が上がっている!さっきより、遥かに!」

「堕天の力に限界など無いわ。私に“信仰”がある限り――力は際限なく溢れるのよ」

ルシフェルが空を割る。次なる一撃、《聖域審断》――天より振り下ろされる、審判の刃。

だがその刃を、ゼフィルが剣で受け止める。

「舐めるなあああッ!!」

魔剣の蒼光が爆発し、空間を裂く。

「俺の名はゼフィル・ヴァイスラント!美しき剣の名に懸けて、お前の顔に泥を塗ってやる!」

「……いい声ね。壊し甲斐があるわ」

笑うルシフェルに向かって――三人は、なおも立ち向かう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...