82 / 92
80.
しおりを挟む
「しかしながらケトル陛下…私から一言だけよろしいでしょうか?」
ウィストン公爵は下げた頭を上げると同時に国王に静かに言う。
「なんだ?ウィストン…」
「失礼を承知で提言させて頂きます。御子息はハイセレクトのトップとして学園の。学生の中心を担っております。御子息の学園生活も残り半年余りです。故に学園を中退されるのは学園の理事をしている者としてもったいなく存じます。
王位を引き継ぎを宣言されて戴冠式を行うまでは最低でも半年から一年掛かります…その間、御子息はこのまま学園に通われて、卒業後に戴冠式を行うのがよろしいかと…」
ウィストン公爵の言葉に国王は眉を寄せる。
「…そちの言う事は分かる。しかし、今回の件で私は…王家は少なからず国民からの信頼を失くすだろう…いち早くケリをつけて、王族としての尊厳を守る為には原因を作った私ができる限りはやく退去し、サムルに王位に着いて貰いたい。その為に引き継ぎたい業務や公務などは多岐に渡る。学園に通いながらでは荷が重く、辛かろう…」
国王の言葉にウィストン公爵はフッと笑う。
「陛下は御子息を見くびっていられますね…彼はそんな事は何の躊躇いもなくこなすでしょう。彼は私達の考えを簡単に超越してしまうような男ですよ。有能な御子息で羨ましい限りです。
また、国王陛下はご自身が思われているよりも、ずっと国民に愛されている。今回の件で多少、王家や国に対しての不満はでるでしょう。しかし、今回の事で貴方が危惧しているような…前国王の時のような民衆暴動は起きませんよ…なぁ…サムル君。君はどう思う?」
ウィストン公爵の問いにサムル様はニヤリと笑う。
「そうですね…優しい国王は国民から愛されている。それは確かですよ。国民もきちんと真実を話せばわかってくれるはずです。
それに、私はやれと言われればどんな事でもやりますし、そつなくこなしてみせますよ。難しければ難しい程燃えるタチですから。周りが無理だと思う様な事程、やりがいを感じます。
それと、学園に関しては何点かやり残している事がありますからね…それだけは何としてもやり遂げたいですね」
そう言ってサムル様は意味あり気な顔をする。
「やり残している事?」
そんなサムル様に対して国王は頭をかしげる。
「はい。有能な人材の勧誘です。なかなかなびいてくれなくて、卒業までには手中に入れたいと思っていたのですが…」
そう言いながらサムル様はアロンの方を見る。
そしてそれから私の方を見てニッコリ微笑む。
アロンは何かを感じ取ってか素早く私の方にくると、サムル様から私を隠すように私を抱きしめる。
「フッ…やっと道筋を見つけ、この機会を逃したくないのでもう少し学園には通いたいですね。
まぁ…父上。心配はしないでください。父上が私を認めてくれた事を後悔させないだけの仕事は致しますよ。フフッ…」
サムル様は私達を楽し気に見つめながら笑い始める。
そんなサムル様を見て国王も驚きつつ笑い始める。
「ハハハ…我息子は想像以上に頼もしいな…これからのこの国の行く末が楽しみだ。わかった。その辺りはお前自身の意志に任せよう。だが、やるからには成果を出せよ。私も引き継ぎについては遠慮しないからな覚悟をしておけよ」
そう言いながら国王も私達…アロンの方に視線を向けて何かを思うように頷いた。
現国王と次期国王2人に何か含みのこもった笑みを向けられるアロン。
アロン…完全にロックインされてますけど…
大丈夫かしら…
アロンは私を強く抱きしめながらハァ…と面倒臭そうに深くため息をついた。
「学園でも御子息の王位戴冠に向けてサポートを致して行きますので、ご安心ください」
「頼りにしてるぞ。ウィストン…」
ウィストン公爵は国王に対して頭を下げると、次に部屋の隅にいるローライ様の方に視線を移す。
「それと、そこにいるローライ・ハリストン。君も学園を辞めるなんて言わないですよね?」
「えっ…」
急に振られたローライ様はただただ驚いた表情をする。
「貴方もハイセレクトとして学園の上に立つ存在です。今回の事で思う事はあるでしょうが、学園はこのまま通いなさい。
君の…君自身のもつ能力はこの国の為となる。学園内では身分や家庭環境など関係ないですからね。最後まで学びきり、この苦境を乗り越え、自身の力でこの国を支える1人になってください」
ローライ様はウィストン公爵の言葉に戸惑いを見せるけど、ゆっくりと頷いた。
なんだかホッとした。
ローライ様はこの騒動にただ巻き込まれてしまっただけの1番の被害者と言ってもいいかもしれない。
でも、今この状況を目の前にして、学園の考えの素晴らしさを…学園の理事をしているウィストン公爵の身分に囚われない考え方の徹底さを身に染みて感じた。
学園は実力主義。
色々あって深く考えなかったし、私は学園を単なる逃げ場と思っていた。
何のしがらみもなくなった私。
アロンと気持ちも通じあった。
今の私にはもう目標も目的も無くなってしまった。
断罪が済んだこの先の事は何も考えてなかったけど、なんだか無性に…実力のみを重んじる学園で私もみんなに負けず頑張っていきたい。
そう思った。
ウィストン公爵は下げた頭を上げると同時に国王に静かに言う。
「なんだ?ウィストン…」
「失礼を承知で提言させて頂きます。御子息はハイセレクトのトップとして学園の。学生の中心を担っております。御子息の学園生活も残り半年余りです。故に学園を中退されるのは学園の理事をしている者としてもったいなく存じます。
王位を引き継ぎを宣言されて戴冠式を行うまでは最低でも半年から一年掛かります…その間、御子息はこのまま学園に通われて、卒業後に戴冠式を行うのがよろしいかと…」
ウィストン公爵の言葉に国王は眉を寄せる。
「…そちの言う事は分かる。しかし、今回の件で私は…王家は少なからず国民からの信頼を失くすだろう…いち早くケリをつけて、王族としての尊厳を守る為には原因を作った私ができる限りはやく退去し、サムルに王位に着いて貰いたい。その為に引き継ぎたい業務や公務などは多岐に渡る。学園に通いながらでは荷が重く、辛かろう…」
国王の言葉にウィストン公爵はフッと笑う。
「陛下は御子息を見くびっていられますね…彼はそんな事は何の躊躇いもなくこなすでしょう。彼は私達の考えを簡単に超越してしまうような男ですよ。有能な御子息で羨ましい限りです。
また、国王陛下はご自身が思われているよりも、ずっと国民に愛されている。今回の件で多少、王家や国に対しての不満はでるでしょう。しかし、今回の事で貴方が危惧しているような…前国王の時のような民衆暴動は起きませんよ…なぁ…サムル君。君はどう思う?」
ウィストン公爵の問いにサムル様はニヤリと笑う。
「そうですね…優しい国王は国民から愛されている。それは確かですよ。国民もきちんと真実を話せばわかってくれるはずです。
それに、私はやれと言われればどんな事でもやりますし、そつなくこなしてみせますよ。難しければ難しい程燃えるタチですから。周りが無理だと思う様な事程、やりがいを感じます。
それと、学園に関しては何点かやり残している事がありますからね…それだけは何としてもやり遂げたいですね」
そう言ってサムル様は意味あり気な顔をする。
「やり残している事?」
そんなサムル様に対して国王は頭をかしげる。
「はい。有能な人材の勧誘です。なかなかなびいてくれなくて、卒業までには手中に入れたいと思っていたのですが…」
そう言いながらサムル様はアロンの方を見る。
そしてそれから私の方を見てニッコリ微笑む。
アロンは何かを感じ取ってか素早く私の方にくると、サムル様から私を隠すように私を抱きしめる。
「フッ…やっと道筋を見つけ、この機会を逃したくないのでもう少し学園には通いたいですね。
まぁ…父上。心配はしないでください。父上が私を認めてくれた事を後悔させないだけの仕事は致しますよ。フフッ…」
サムル様は私達を楽し気に見つめながら笑い始める。
そんなサムル様を見て国王も驚きつつ笑い始める。
「ハハハ…我息子は想像以上に頼もしいな…これからのこの国の行く末が楽しみだ。わかった。その辺りはお前自身の意志に任せよう。だが、やるからには成果を出せよ。私も引き継ぎについては遠慮しないからな覚悟をしておけよ」
そう言いながら国王も私達…アロンの方に視線を向けて何かを思うように頷いた。
現国王と次期国王2人に何か含みのこもった笑みを向けられるアロン。
アロン…完全にロックインされてますけど…
大丈夫かしら…
アロンは私を強く抱きしめながらハァ…と面倒臭そうに深くため息をついた。
「学園でも御子息の王位戴冠に向けてサポートを致して行きますので、ご安心ください」
「頼りにしてるぞ。ウィストン…」
ウィストン公爵は国王に対して頭を下げると、次に部屋の隅にいるローライ様の方に視線を移す。
「それと、そこにいるローライ・ハリストン。君も学園を辞めるなんて言わないですよね?」
「えっ…」
急に振られたローライ様はただただ驚いた表情をする。
「貴方もハイセレクトとして学園の上に立つ存在です。今回の事で思う事はあるでしょうが、学園はこのまま通いなさい。
君の…君自身のもつ能力はこの国の為となる。学園内では身分や家庭環境など関係ないですからね。最後まで学びきり、この苦境を乗り越え、自身の力でこの国を支える1人になってください」
ローライ様はウィストン公爵の言葉に戸惑いを見せるけど、ゆっくりと頷いた。
なんだかホッとした。
ローライ様はこの騒動にただ巻き込まれてしまっただけの1番の被害者と言ってもいいかもしれない。
でも、今この状況を目の前にして、学園の考えの素晴らしさを…学園の理事をしているウィストン公爵の身分に囚われない考え方の徹底さを身に染みて感じた。
学園は実力主義。
色々あって深く考えなかったし、私は学園を単なる逃げ場と思っていた。
何のしがらみもなくなった私。
アロンと気持ちも通じあった。
今の私にはもう目標も目的も無くなってしまった。
断罪が済んだこの先の事は何も考えてなかったけど、なんだか無性に…実力のみを重んじる学園で私もみんなに負けず頑張っていきたい。
そう思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,439
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる