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2章『転生×オメガ=当て馬になる』

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「ふぅん…如月さんが歩む筈のストーリーを真緒ちゃんが歩んでる、と」
「は、はい。そうなんです」

暫くしてリビングに向かった私達は隣り合って話をしている。
最初は私の不安を言う事だった。消えてしまうかもしれない不安。高瀬真緒としての登録が無い不安。等など、全てを在昌さんに打ち明けた。

消えてしまう事に関しては何とも言えない。けれど、分かっていても私と一緒に居たい、と言ってくれた。嬉しさのあまり、また泣いてしまった。

次に戸籍についてだが、オメガが無戸籍という事実が怖い話だが、よくあるらしい。

「昔はオメガの子は嫌われていたからね。産んだ事を無かった事にしたかった人が多かったみたい。悲しい話だけれどね。
だから措置として、オメガと立証出来たら戸籍は作れるよ」

との事だ。本当に悲しい話だと思う。好きでオメガに産まれた訳ではないのに。親の身勝手で権利すら与えられないだなんて悲しいを通り越してムカついてくる。

「俺はオメガだろうがアルファだろうが真緒ちゃんとの間に子どもが産まれたら嬉しいけどね」
「っんんんん…!」

なんて発言をしてくれるのだろうか、この人は!けれど、嬉しいのは確かで。

少し前の私では考えられない状況だ。男性とお付き合いをした事すら無いのに、飛び越えてえっちまでしちゃってるし…。

「話は戻して…。如月さんの事だけどさ。考えすぎじゃないかな」
「考えすぎ、ですか」
「うん。この世界はフィクションなんかじゃないんだよ。皆が皆の考えで生きている。君の言うおめみつの世界では無いんだ」

それは以前、有沢さんにも言われた事だった。

「忘れろって言うのはキツいかもしれない。けど、君はいつまで俺達をおめみつの登場人物として見ているのかな。俺は悲しい。俺はおめみつの神崎在昌では無いから、さ」
「在昌さん……」
「いきなり、は厳しいかな。でも受け止めて欲しいな。この世界の事を、おめみつでは無い世界として」

在昌さんの言う通りだと思う。
私がこの世界をオメ蜜だと思っている限り、この世界はフィクションなのだ。けれど違う事はとうの昔から知っている。

在昌さんも、有沢さんも、桃ちゃんも――…皆、自分の意思で生きているのだ。誰かの打ち込んだ世界ではなく。

「まずは俺に愛されるところから始めようか」
「…え?」
「俺は君が好きだよ。何度でも言う。好きだ。この感情は俺だけのものだ。その、おめみつには無い話でしょう?」
「そ、そうですけど…」

私の頬に掌を添え、ジッと見つめる在昌さんは本気だった。
冗談でもなく、本心から私に言葉を紡いでいる。

「真緒ちゃんは俺が嫌い、かな。おめみつの神崎在昌の方が好き?」
「っ…!」

私の知っているオメ蜜の在昌さんと目の前に居る在昌さんは似ているようで似ていない。小説の在昌さんは甘い言葉しか吐かないし、桃ちゃん一筋だし、ヤキモチなんて妬かない余裕の大人な男性だし――…

けれど、目の前の在昌さんの方が大好きだ。楽しそうに私の頬を突く在昌さんも、優しいけどイジワルな在昌さんも、私の全てを包んでくれる在昌さんも。

全てが大好き、なのだ。

「…在昌さんの方が、すき、です…」
「…おめみつの?」
「違いますっ…!目の前の在昌しゃん…」
「しゃん…」

私の言葉に肩を震わせながら笑う在昌さんの腕をぺちぺちと殴る。痛くないとは思うけれど、精一杯の照れ隠し、だ。

「本当に、かーわいいんだから」

ぽかすかと殴っていた腕を掴まれ、キスをされる。
お互いに目を閉じず、見つめ合う口付け。そっと瞳を閉じれば何度も角度を変えながら口付けを交わした。

「は…、在昌さん、好きです、大好き、です…」

自分の言葉で愛を囁いた刹那、口付けは激しさを増し腔内を在昌さんの舌で嬲られていく。

ぐじゅぐじゅと音を奏でながら腔内を舐め尽くされ、私の口からたらり、と唾液が伝う。

「ン…ふぁ…んむ…」
「ん、気持ちぃね」

どこからか甘い匂いが私の鼻腔を擽る。この匂いを知っている私の身体がひくり、と震えた。

「甘い匂い、してきた。発情しているんだね」
「ぁ…在昌、さ…」
「ほんと、堪らない…」

ぎしり、ソファーを軋ませながら、私を押し倒す在昌さんの瞳は情欲に濡れた獣のような色を灯していて。
その瞳に打ち抜かれた私は、最奥がひくりと疼くのを感じた。

「在昌さん…っ、すき、すき…」
「本当に可愛いね、真緒は…。どうしちゃおうか?」

私の名を呼びながら、自分の唇を舐め私を見下ろす在昌さんの首に私は腕を絡め、囁いた。

「好きにシて、ください」



――次の日、全く起き上がれなかった事は良い思い出である。



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