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信じられない――――いや、信じたくなかった。
そこには普通に過ごしていては、一週間ではとても使いきれない金額が載っていた。
慌ててパラパラと捲り続けるレナードだったが、あることに気がついた。


「これ……騙されているのがちらほら見つけられるな。……セバスチャン、貴方がこれに気づかなかったはずがない。これは一体……?」
「ほほほ。さすがですな。確かにあの中にはこの伯爵家をカモにしようとしていた者も複数おりますよ。……だから、全ての領収書に伯爵印ではなく、お二人のサインを書かせております。そもそもお嬢様が離婚に際しての書類を提出された日からあの男は伯爵ではないのですから。…………さて、この証拠品をまとめてベイツ子爵家に送り付けてもよろしいですかな?領収書については伯爵印が必要ですのでお嬢様がいらっしゃらないことには……。」
「それについては問題ないわ。」

突然のシェイラの登場に、普段飄々としているセバスチャンも目を丸くした。


「お……お嬢様……!何故ここに……。」
「侯爵家の方にレナード様から連絡が。それより、ベイツ子爵家に送る書類を早く纏めてしまいましょう。」
「あ、それなら……。」

レナードの提案によって当初の計画からちょっと伯爵家が得をするように仕向けた。
クリスタちが騙されていた金額のままで子爵家には請求を送り、騙した商人を呼び寄せ、逮捕をちらつかせながら返金させる。
彼曰く、『迷惑料』とのことで、シェイラが受け取って然るべきものだという。ありがたく伯爵家の懐に入れさせてもらうことにした。

その後、速やかにことの顛末と請求書、買い込んだ服飾品及び調度品その他諸々がベイツ子爵家に送られた。即座に謝罪に訪れた子爵から請求額の他に婚約時にシェイラの父である故・伯爵と交わした契約書による慰謝料、そしてそれとは別に多額の慰謝料が払われた。
最後のものについては何度も断ったのだが、バートリー伯爵家とアンダーソン侯爵家に睨まれることを恐れた子爵は一歩も引かなかった。
子爵によると、クリスは、多額の慰謝料を実家が肩代わりする代わりに勘当されたとのこと。
今はどこかで愛しの彼女と共に幸せに暮らしているのであろうか。
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