12 / 86
12. 地下にあったのは…
しおりを挟む「何だか薄暗いですね…。」
「そうだな。だが、この辺りはわざと整備していない感じがするな。」
父さんのいう通りで周りの道は整備されているが、なぜかこの辺りだけは木々が生い茂り薄暗くなっている。
まるで何かを隠すかの様に…。
「おそらく、この辺りに入口があるのでしょう」
空下さんは周りに気を付けながら暗い道を先頭で歩いてくれている。
その時、不自然にへこんで草木が生えていない場所があるのに気がついた。
「お父様、あそこなのですが不自然ではないですか?周りは草木が生い茂っているのにあそこだけが極端に緑が少ない。」
父さんと空下さんは俺の指差した場所に行き地面を触り始めた。
ガチャ…。
何か金属に当たった様な音がした。
「あったぞ。開ける為の金具だ。」
それは木の板の上に取り付けてある金具でその周りは遠くからは分かりにくい様に土や草を張り付けてあった。
「開けてみよう…」
俺達は顔を見合わせて頷いた。
ギイィー。
「下に降りる階段だ…。暗くて先が見えないな…。」
現れたのは下に続く長い階段だ。薄暗くてどこまで続いているかはここからでは確認できない。
「ここからは僕が行ってきます。お父様達はこの辺りで隠れていて下さい。」
「しかし…。本当に1人で大丈夫なのか。」
父さんは心配そうだな。
「お父様、大丈夫ですよ。心配しないで下さい。無理はしませんからここで待っていて下さい。それに空下さんから魔道具の連絡機をもらいましたし、何かあればすぐに助けを求めますから。」
「分かった。何かあればすぐに連絡するんたぞ。」
「はい。では、行ってきます。」
「気を付けてくださいね。」
空下さんも心配してくれているんだな。まあ、8歳の子供だから仕方ないか。
俺は小さなライトを持って暗い階段を下りて行った。入口は俺が2人から見えなくなると閉めるように言ってある。
さすがに何も見えないと不安だな…。
それにこの階段長すぎないか?!いったいどこまで下りるんだ。
暫く下りていると何かの音が聞こえてきた。
サァー、カチャカチャ…。
まだ朝の5時なんだけど…誰か起きているのかな?
足音を立てないようにゆっくりと近づいていった。
階段の終わりが近づくにつれて地下なのに明るくなってきた。
「明るすぎないか?」
そりゃ、日本だと電気もあって地下も明るかったけど…。この異世界では電気はなく、全てが魔力によるものだ。魔力や魔石を使い魔道具を動かして明かりをとっている。
こんなに明るいのは相当な魔道具がないと駄目だよね。だけどこの領地の現状だとそんなお金がかかることができるのか?
階段を一番下まで下りて明るい方へと進む。周りに気を付けながら覗いてみると…。
「何だ…これは…。」
目の前に広がるのは地下で見るとは思わなかった風景だった。
「これは、催眠草?」
目の前には一面に広がる催眠草の畑があった。
「なぜこんな地下に催眠草の畑が…。」
催眠草とは危険な薬として栽培するには国の許可がいるような植物だ。これを食べると人は幻覚を見たり催眠術にかかったような状態になってしまうそうです。俺も植物図鑑でしか見たことが無かったよ。
これって…秘密で栽培しているってことかな。だけどこれだけだとあの川に大量に垂れ流していた汚れた水は何なんだという話しになるよね。という事は、ここにはまだ秘密があると考えて間違いないよね。
取り敢えず、父さん達に報告するか。
「お父様聞こえますか?」
小さな声で魔道具に向かって話した。
「ああ、聞こえているぞ。何かあったのか?大丈夫か?」
魔道具の調子も良さそうだ。
「階段を最後まで下りた先には畑がありました。」
「畑?!地下にか?」
そりゃ驚くよね。普通は畑は太陽の光がないと育たないから。
「はい。しかも大量の催眠草が栽培されています。」
「何!催眠草だと!?間違いないのか?」
「間違いないと思います。お父様に買ってもらった植物図鑑で見たことがありますから。」
「そ、そうか…」
父さんの声が何だか嬉しそうに聞こえる。
植物図鑑は俺の5歳の時の父さんからの誕生日プレゼントだったからね。何かを思い出しているんだろうな。
「竜…危険だとは思うがそれを一つ取って来ることができるか?」
そうですよね。証拠品としてある方が良いよね。
「分かりました。採取して帰ります。」
「気を付けてな。」
「はい。また何かありましたら連絡します。」
いったん魔道具は切って催眠草を採取しに畑にはいる。
見張りとかもいないのか?地下だから安心しているのかな。
一つ採取してマジックバックに入れた。この中だと鮮度も保たれるから大丈夫だな。
俺も日本にいる頃には異世界転生の小説とかを読んでマジックバックの存在は知っていたけど実際に使うとなるとこれ程便利なカバンはないと思うよ。
一見すれば小さなカバンだけど中は広い空間になっていてこの中に入った物は鮮度が落ちないし、腐らない。便利だよね~。
俺が催眠草を採取して畑から出ようとした時遠くから人の声がしてきた。
ヤバい!隠れないと!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる