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《第2章》 西新宿のエウリュディケ
神楽坂のコーヒーショップ1
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翌日午前、自宅近くのコーヒーショップに飛豪が入ると、一足先にソファ席についていた高瀬が軽く手をあげた。
グアテマラだったか、エチオピアだったか、とにかく飛豪も本日のコーヒーを適当に買ってソファに座った。
駅の出口から歩いてきたのに気づいていたのか、同僚兼友人が開口一番に言う。
「タクシーで来るかと思った」
「昨晩、都庁前にいたから。大江戸線のほうが早い」
「そーゆーところ、堅実だよな」
「染まりたくないんだよ。いつ撤退してもいいようにさ」
「無理だと思うけど。……昨晩女の子抱いて、この時間ここにいるって大丈夫なのか? で、眼鏡っつうことは、ほぼ徹夜か」
「うるさいな」
彼がコンタクトではなくメタルフレームの眼鏡でやってきた理由に、高瀬は言及する。黙っていればいいものを口にしてしまうのが彼の性格だ。
腕時計の短針は、まだ八時台をさしていた。高瀬が訊いてくるので、部屋を出るとき彼女はまだ眠っていた、と適当に話をあわせた。
「九時にアラームかけてきたから、目がさめたところで帰ると思う」
「可哀そうじゃん、置き去りにされて」
「いや、そういうの気にするタイプじゃない」
「ふぅん。どんなタイプ? って、この前の麻布の子だろ? ふてぶてしいっていうのは聞いてたけど。でも、結果的にプレミアついてる高嶺の花だったって……道理で見たことある気がしてた」
「それは過去の話。お前だって、藤原さんから話伝わってるだろ」
「聞いたけどさ……いいの? そんな子食い物にして」
「いいも何も……向こうから言ってきたんだし。俺は対価を支払ってサービスを受け取ってるだけ。……って、とりあえず最初は仕事の話しよう」
彼が口をつぐみ、仕事用のスマートフォンを取りだすと、高瀬も声をおとした。
いくら土曜の朝、広々としたカフェとはいえ、クライアントの固有名詞を堂々とだすのは憚られる。
グアテマラだったか、エチオピアだったか、とにかく飛豪も本日のコーヒーを適当に買ってソファに座った。
駅の出口から歩いてきたのに気づいていたのか、同僚兼友人が開口一番に言う。
「タクシーで来るかと思った」
「昨晩、都庁前にいたから。大江戸線のほうが早い」
「そーゆーところ、堅実だよな」
「染まりたくないんだよ。いつ撤退してもいいようにさ」
「無理だと思うけど。……昨晩女の子抱いて、この時間ここにいるって大丈夫なのか? で、眼鏡っつうことは、ほぼ徹夜か」
「うるさいな」
彼がコンタクトではなくメタルフレームの眼鏡でやってきた理由に、高瀬は言及する。黙っていればいいものを口にしてしまうのが彼の性格だ。
腕時計の短針は、まだ八時台をさしていた。高瀬が訊いてくるので、部屋を出るとき彼女はまだ眠っていた、と適当に話をあわせた。
「九時にアラームかけてきたから、目がさめたところで帰ると思う」
「可哀そうじゃん、置き去りにされて」
「いや、そういうの気にするタイプじゃない」
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彼が口をつぐみ、仕事用のスマートフォンを取りだすと、高瀬も声をおとした。
いくら土曜の朝、広々としたカフェとはいえ、クライアントの固有名詞を堂々とだすのは憚られる。
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