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《第5章》 バラのつぼみ
鳥の羽ばたき 1☆
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クロードはエリーを後ろから抱きしめ、痛みをあたえながら、ゆっくりと身体に触れていった。
服ごしに、彼女の輪郭を確かめていく。手の甲や、手のひら、指、爪先を繊細につかって、全身に火をともしていく。
彼の指の背が、エリーの脇腹の皮膚の薄いところを撫ぜていく。胸元を、彼の爪先が刺激していく。そして腹部、腕が、彼女の体に重ねられ、彼自身が肌にぴたりと押しつけられた。すると、エリーは羞恥に赤くそまった。
目にしなくても、クロードには彼女の反応が手にとるように分かる。
うっすらと笑むと前に手をまわして胸の谷間に指先をあてた。胸骨のすきま、腹部、下腹へとゆっくりと下ろしてゆく。下へいけばいくほど、彼女の華奢な身体がなにかを堪えるように小刻みに震えていくのが分かった。
――鳥の羽ばたきを体のうちに閉じこめているようだ。
クロードはエリーを抱くたびにそう思う。
ただし彼女が閉じこめているのは鳥ではない。クロードとの快楽に溺れそうになる自分自身だったり、褪せることのないジェイへの恋心だった。
最後、指先が彼女の無防備な割れ目に達すると、クロードは迷いなく深みへと指をうずめた。
彼女の沼地を、内側からかきまわし、波立てて乱していく。すると体温がじわじわと上がり、柔らかい身体が弛んで、蕩けていく。タイミングを見計らい、彼は彼女をこちらに向かせた。
エリーは体を回転させられてクロードと視線があいそうになると、視線をそらし目を閉じた。それは、彼女に許された唯一の抵抗であり戒めだった。
――これは、ジェイではない。クロード様、わたしの夫。
エリーは心のうちで自分に言い聞かせる。彼は最愛の人ではないが、父親としても夫としても大事な人。だから、こうなっていい。
目を閉ざしたまま、エリーはクロードの体へと手を伸ばした。
彼の二の腕に手をまわし、みずからその体へと飛びこんだ。ジェイではない骨格を、ジェイではない香りを抱きしめる。すると、クロードも彼女の体に手をまわした。
二人は言葉一つないまま、折り重なった。口づけもしない。愛の言葉もない。二人とも無言で、互いの体を刺激して高めていく。
お互いを赦しあうように、二人は体をつなげた。視線をあわせず、ただ快楽のために。
いつの頃からか、彼はエリーを丁寧に扱うようになっていた。
彼女が揺さぶられ、突き上げられているときの恍惚とした顔、ぎこちなく彼の性器を舐めているときの罪悪感に満ちた表情、どこに触れられると喘ぎ、くずれるのか。
情事のとき、彼女の反応のすべてを彼は観察し、それを利用した。いま、エリーの官能は自身よりもクロードのほうが深く知っていた。
彼女の弱いところ――耳朶や背中、内奥の深み――を的確にクロードが攻め、理性を手ばなすよう促していく。
クロードはエリーの両足のあいだに自分の体を置き、往復させた。自分の下で、目をつぶった妻が胸を揺らし、濡れた吐息をあげている。その体を我が物顔で支配していくと、心の枷がきりきりと締まり、ひりつくような悦びを感じるのだった。
服ごしに、彼女の輪郭を確かめていく。手の甲や、手のひら、指、爪先を繊細につかって、全身に火をともしていく。
彼の指の背が、エリーの脇腹の皮膚の薄いところを撫ぜていく。胸元を、彼の爪先が刺激していく。そして腹部、腕が、彼女の体に重ねられ、彼自身が肌にぴたりと押しつけられた。すると、エリーは羞恥に赤くそまった。
目にしなくても、クロードには彼女の反応が手にとるように分かる。
うっすらと笑むと前に手をまわして胸の谷間に指先をあてた。胸骨のすきま、腹部、下腹へとゆっくりと下ろしてゆく。下へいけばいくほど、彼女の華奢な身体がなにかを堪えるように小刻みに震えていくのが分かった。
――鳥の羽ばたきを体のうちに閉じこめているようだ。
クロードはエリーを抱くたびにそう思う。
ただし彼女が閉じこめているのは鳥ではない。クロードとの快楽に溺れそうになる自分自身だったり、褪せることのないジェイへの恋心だった。
最後、指先が彼女の無防備な割れ目に達すると、クロードは迷いなく深みへと指をうずめた。
彼女の沼地を、内側からかきまわし、波立てて乱していく。すると体温がじわじわと上がり、柔らかい身体が弛んで、蕩けていく。タイミングを見計らい、彼は彼女をこちらに向かせた。
エリーは体を回転させられてクロードと視線があいそうになると、視線をそらし目を閉じた。それは、彼女に許された唯一の抵抗であり戒めだった。
――これは、ジェイではない。クロード様、わたしの夫。
エリーは心のうちで自分に言い聞かせる。彼は最愛の人ではないが、父親としても夫としても大事な人。だから、こうなっていい。
目を閉ざしたまま、エリーはクロードの体へと手を伸ばした。
彼の二の腕に手をまわし、みずからその体へと飛びこんだ。ジェイではない骨格を、ジェイではない香りを抱きしめる。すると、クロードも彼女の体に手をまわした。
二人は言葉一つないまま、折り重なった。口づけもしない。愛の言葉もない。二人とも無言で、互いの体を刺激して高めていく。
お互いを赦しあうように、二人は体をつなげた。視線をあわせず、ただ快楽のために。
いつの頃からか、彼はエリーを丁寧に扱うようになっていた。
彼女が揺さぶられ、突き上げられているときの恍惚とした顔、ぎこちなく彼の性器を舐めているときの罪悪感に満ちた表情、どこに触れられると喘ぎ、くずれるのか。
情事のとき、彼女の反応のすべてを彼は観察し、それを利用した。いま、エリーの官能は自身よりもクロードのほうが深く知っていた。
彼女の弱いところ――耳朶や背中、内奥の深み――を的確にクロードが攻め、理性を手ばなすよう促していく。
クロードはエリーの両足のあいだに自分の体を置き、往復させた。自分の下で、目をつぶった妻が胸を揺らし、濡れた吐息をあげている。その体を我が物顔で支配していくと、心の枷がきりきりと締まり、ひりつくような悦びを感じるのだった。
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