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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百八話 魔力測定 ①
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「カレン殿下にはまず魔力測定を受けてもらいたいと思っております」
お兄ちゃんと会話をした後、お昼のこと。
僕は辺境伯の執務室に呼ばれて今後の説明を受けていた。
「魔力測定?」
「ええ、殿下はお身体の具合が良くないので今まで受けてこられなかったようですが、普通はその年頃にはもう受けているものでございます。魔力の量や属性を測り、いつから魔術の授業を始めるべきか判断するのです」
そういえばウィルフリートお兄ちゃんは僕の年の頃にはもう魔力がないと判明していたんだよなと思い出す。
そうか、僕もそれを受けなきゃいけないのか。
もしお兄ちゃんと同じように魔力がまったくありませんとか判明したらどうしよう。
「魔力測定は疲れるものですので、今日の予定はその魔力測定だけでございます」
「はーい、分かりました」
何か学校の健康診断みたいだなと思いながら、僕は魔力測定が行われる部屋まで使用人に案内されることになった。
保健室みたいな部屋を想像して入った部屋は、研究室のような場所だった。
棚には色とりどりの薬品が詰められたカラフルなフラスコや秤が並び、机の上には丸められた羊皮紙や重厚な書物が乱雑に積まれ、部屋の隅っこには杖が数本立てかけられている。
部屋の中に宮廷魔術師のバスティアンさんとかかりつけ医のジョンさんがいるのを見て、ここはバスティアンさんの研究室なのだろうと見当をつけた。
魔力測定は疲れるって聞いたから、ジョンさんは僕に何かあった時の為にいるのかな。
魔術師の研究室というと薄暗いイメージがあったがこの部屋は日当たりがよく、物は散らかっているものの掃除はされているようで清潔感があった。
奥へと通じる扉が見えるから、もしかしたら日に当てたら駄目な薬品などは奥の部屋に仕舞っているのかもしれない。
「こんにちは、バスティアンさん! ジョンさん!」
バスティアンさんとかかりつけ医のジョンさんの名を呼んでにこりと挨拶した。
「こんにちは、今日は体調も良さそうでございますね殿下」
「魔力測定が行えそうで安心いたしました」
二人はにこりと微笑んでくれた。
なんだか優しそうな雰囲気が二人とも似通っている。
「それでは殿下、そこの床に描かれている魔法陣の上に立ってもらえますか?」
バスティアンさんが立ち上がって魔法陣の位置を示してくれる。
僕は「はい」と返事してその上に立った。
「これから殿下には魔力を放出してもらうのですが、殿下にはまだ魔力放出の方法が分からないと思います。そこで私の魔力と同調させて放出を行ってもらおうと思います。この杖の上の方を握ってもらえますか?」
魔力の放出とはまた大層なことをするようだ。
バスティアンさんが長い杖を差し出してくれたので、その上の方を握った。バスティアンさんが杖の真ん中を、僕がその上を握る形になる。
「少し苦しいかもしれませんが、すぐに終わりますからね。杖を放さないで下さいね」
少し苦しいと聞いて急に不安になった。
だが杖を放したら何が起こるか分からないので我慢した。
やがてぐっと自分の中の何かが引っ張られるような感覚がしたかと思うと、床の魔法陣が光り出し――――
お兄ちゃんと会話をした後、お昼のこと。
僕は辺境伯の執務室に呼ばれて今後の説明を受けていた。
「魔力測定?」
「ええ、殿下はお身体の具合が良くないので今まで受けてこられなかったようですが、普通はその年頃にはもう受けているものでございます。魔力の量や属性を測り、いつから魔術の授業を始めるべきか判断するのです」
そういえばウィルフリートお兄ちゃんは僕の年の頃にはもう魔力がないと判明していたんだよなと思い出す。
そうか、僕もそれを受けなきゃいけないのか。
もしお兄ちゃんと同じように魔力がまったくありませんとか判明したらどうしよう。
「魔力測定は疲れるものですので、今日の予定はその魔力測定だけでございます」
「はーい、分かりました」
何か学校の健康診断みたいだなと思いながら、僕は魔力測定が行われる部屋まで使用人に案内されることになった。
保健室みたいな部屋を想像して入った部屋は、研究室のような場所だった。
棚には色とりどりの薬品が詰められたカラフルなフラスコや秤が並び、机の上には丸められた羊皮紙や重厚な書物が乱雑に積まれ、部屋の隅っこには杖が数本立てかけられている。
部屋の中に宮廷魔術師のバスティアンさんとかかりつけ医のジョンさんがいるのを見て、ここはバスティアンさんの研究室なのだろうと見当をつけた。
魔力測定は疲れるって聞いたから、ジョンさんは僕に何かあった時の為にいるのかな。
魔術師の研究室というと薄暗いイメージがあったがこの部屋は日当たりがよく、物は散らかっているものの掃除はされているようで清潔感があった。
奥へと通じる扉が見えるから、もしかしたら日に当てたら駄目な薬品などは奥の部屋に仕舞っているのかもしれない。
「こんにちは、バスティアンさん! ジョンさん!」
バスティアンさんとかかりつけ医のジョンさんの名を呼んでにこりと挨拶した。
「こんにちは、今日は体調も良さそうでございますね殿下」
「魔力測定が行えそうで安心いたしました」
二人はにこりと微笑んでくれた。
なんだか優しそうな雰囲気が二人とも似通っている。
「それでは殿下、そこの床に描かれている魔法陣の上に立ってもらえますか?」
バスティアンさんが立ち上がって魔法陣の位置を示してくれる。
僕は「はい」と返事してその上に立った。
「これから殿下には魔力を放出してもらうのですが、殿下にはまだ魔力放出の方法が分からないと思います。そこで私の魔力と同調させて放出を行ってもらおうと思います。この杖の上の方を握ってもらえますか?」
魔力の放出とはまた大層なことをするようだ。
バスティアンさんが長い杖を差し出してくれたので、その上の方を握った。バスティアンさんが杖の真ん中を、僕がその上を握る形になる。
「少し苦しいかもしれませんが、すぐに終わりますからね。杖を放さないで下さいね」
少し苦しいと聞いて急に不安になった。
だが杖を放したら何が起こるか分からないので我慢した。
やがてぐっと自分の中の何かが引っ張られるような感覚がしたかと思うと、床の魔法陣が光り出し――――
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