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新たな出発
3話
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翌日3時…
私は日課であるソロでの攻略依頼を受けようかと思って起き上がる。
「…アリス姉?」
マリアが眠そうな目を擦って起きる。
リリアはベッドの隅で小さくなって寝ているので、ひそひそ声で話す。
「あ、起こしちゃった?これからダンジョンに鍛えに行くつもりなんだ。だから、もう少し寝てていいよ。」
マリアは眠そうに欠伸をして言う。
「マリアも行く…」
マリアはそう言うとそそくさと準備をする。
「アリス姉…準備できた。」
「よーし!ちゃちゃっと行ってきますか!」
「おー!」
リリアが寝ているので静かに話しながら、宿を出る。
外は一面銀世界で空からは輝く様な雪が降っていた。
マリアが白い息を吐きながら震えて言う。
「さ、寒い…アリス姉、寒くないの?」
マリアは真冬に相応しい厚めのモフモフなコートを着ていたが、私は対称的に軽くて薄いシャツとホットパンツの様なズボンを履いてるだけのまるで真夏の服装だった。
「この辺はまだ暖かい方だからねぇ…」
「…結構な勢いで雪降ってるけどね。」
私は元々氷河に覆われた雪国の土地で産まれたらしく、ここよりも寒いところを転々としていた時期があり、その頃には野宿も当たり前にしてたので、その分寒さに強いのかなと思う。
物心つく前には義父母家庭に住んでいたから、よくわからないけど…
「さってと…今日のダンジョンは何があるかな…」
私はいつもの様にギルドに向かう。
マリアは寒そうにしながらも私の後を追いかける。
五分ほど雪の中を歩いて、ギルドに到着する。
私がいつもの様にダンジョン情報を確認していると聞き覚えのある男性の声がする。
「おう!アリスにマリアじゃねぇか!こんな時間から何処へ行くきだい?」
「あ、グラディオスさん!おはようございます!私はこれからこちらのB級のダンジョンに向かおうと思っているところです!」
「マリアはアリス姉についてきただけ…」
「ほう?どれどれ…」
グラディオスは私の向かおうとしている先のダンジョンを見ながら言う。
「あー…こりゃ、S級モンスターの宝庫だって噂の超低階層ダンジョンじゃねえか。超低階層だから、ランクがかなり低く設定されているが…アリスはともかく、中級職の魔術師であるマリアにはかなーりキツいダンジョンになると思うが…いや、待てよ?」
グラディオスは何かを閃いたような表情をして言う。
「マリア、お前さん、剣聖に興味は無いかい?私の目で見る限りはお前さんの素質なら剣聖に適性があるんだが…」
マリアは少しだけ考える様に首を捻る。
「マリアはリリアと魔術師を極めようって、約束して2人で魔術師をやってたけど、それだとアリス姉一人で前衛を任せる事になるのか…私も前衛に出た方が良いのかな…それとも私がもっともっと強くなって魔術師のままで前衛に出れるくらい強くなれば…いや、それでは時間がかかり過ぎちゃうかも…何よりアリス姉を守れる力が欲しい…」
マリアは考えが纏まった様子で言う。
「グラディオス…マリアには他にどんな適性がある?」
グラディオスはマリアをしっかりと見ながら言う。
「そうだな…君のリリアとの約束に一番適している職なら、魔剣士が一番適正だな。魔術師の様に遠距離からの魔法攻撃も出来るし、剣士の様に剣技を利用した近接攻撃も可能だ。更には魔法を自身の得物に付与して攻撃する付与魔法の一種でもある魔法剣を使えるから、ダメージの代わりに魔力を吸い取る魔法の魔吸収を得物に付与して、剣技の千烈斬を使って、相手から大量の魔力を吸い取るなんて戦い方も可能だぞ。」
マリアは少し考える様に首を捻るが、すぐに答えは出たようだ。
「じゃあ、マリアは魔剣士になる。グラディオス、手続きをお願い。」
「あいよ。右腕を出しな…」
マリアは言われるがままに右腕を出す。
グラディオスはその右腕の中ほどを持って言う。
「我、新たなる道を授けし者…彼の者、その道を歩みし者…これより汝を魔剣士として導く者…その道を照らし、導となれ!」
グラディオスが詠唱し終わるとマリアの身体が輝き、マリアの姿が変化する。
今はマリアのモフモフのコートのせいでほとんど変化がわからないけどね。
「これが…新しいマリア…」
マリアがコートの前を開けて自分の姿を確認する。
マリアの着ていたコートの下に軽くて動きやすそうな和風な羽織に刀のような長い剣が腰に装備されていた。
グラディオスが剣を指さしながら言う。
「そいつは妖刀政宗だな。なんでも片目の龍の力がある伝説の妖刀らしいぜ。龍の力で所持者のHP上限を半分にする代わりに剣術の効果期待値を80倍にアップさせ、さらには一流の剣聖のような動きを可能にさせる能力があるみたいだ。まさに妖刀の名に相応しい奇っ怪な能力だぜ。そして、その服はその龍が人の姿の時に使っていたとされている伊達羽織だな。こいつには妖刀政宗の所有者のHP以外の能力を10倍にする能力があるぜ。」
この世界では職を変えると今までの武器種が使えなくなる代わりに特別な力を持った武具に変化する事があるんだ。
マリアの場合はモーニングスターの武器種の杖が使えなくなったけど、代わりに妖刀政宗が武器となったってところだね。
ちなみに私は何の武器も装備せずに、ただの包帯を拳に巻いているだけだったりする。
本来は拳を守る為の小手と呼ばれる武器が必要なのだが、私の場合は固有スキルの無手の極意と呼ばれる能力があって、その能力は自身が何の武器も装備してない時だけ、自身のHPと防御以外の能力値を900倍にする効果があるんだ。
さらに私には魔闘士を極めた事で拳の極意もあるから、素手での直接攻撃の威力が5倍も上がるんだ。
つまり、ただ普通に静止した状態で殴るだけでも4500倍の高威力の攻撃になるわけだ。
いくら素手が武器より攻撃力が無いとはいえ、4500倍も与える威力が大きければ、そこいらの冒険者の最大火力とは比較にならない威力になるわけだ。
さらにそこに弱点特攻や速度や魔法や技能による強化を加えると最高装備の冒険者の最大火力すら超えるような攻撃が可能となる。
つまり、チート級の攻撃力強化ができるって事。
まあ、私とギルマスしか、私の固有スキルの存在を知らないんだけどね。
私自身は耐久面が貧弱なのが悩みの種ではあるのだけれど…
元々のステータスも耐久面はかなり低かったからね。
「そんじゃ、マリアの職も変わったわけだし、5時までには帰ってこいよ。」
グラディオスはそう言うと奥の部屋へと入って行く。
私たちは受付でソロで行く予定だった攻略依頼を二人で受けて現地まで龍車で行く。
龍車で街を出て30分ほど南に飛んだ位置に目的のダンジョンはあった。
私は龍車のワイバーンによく似た見た目の運龍をダンジョンの外で待たせて、ダンジョンの入口に立つ。
「ピロシキ、ここで待っててね。」
ピロシキとは私の所有物のピロポットの事である。
ピロシキは小さく頷くとその場に伏せをする。
ちなみに余談だが、龍車に翼竜では無く、運龍を使う理由だが、単純にピロポットの方が人の指示を理解して実行する能力と記憶力が良く、S級の魔物からの攻撃にも耐えられる為、人の輸送に適していたからだ。
まあ、龍種の特徴として自分より弱い者には従わない点はあるけどね。
そのせいで、使用許可があるはA級以上の冒険者に限られている。
私は個人的に卵の時から保護していた自己所有物扱いのピロポットで移動をしているのだけれどね。
幼少期の反抗期で言う事を聞かなくなって蹴られた時にカチンと来てボッコボコのかえりうちにしたら、反抗期が一瞬で終わったのはここだけの秘密。
その一方で竜車の方は竜種のワイバーンなのだ。
竜種は躾さえちゃんと出来ていれば言う事もよく聞くので、特に許可証が必要な事例もない。
わかりやすく言うとデカいトカゲみたいな見た目の犬だね。
耐久面はA級くらいの魔物の攻撃なら、何とか耐えられる程度にはあるらしい。
私はマリアに目配せをしながら言う。
「この中は一筋縄では行かない強力なモンスターが沢山いるから、気をつけてね。」
マリアは小さく頷く。
私がダンジョンに入り始めるとマリアも後からついてくる。
少し歩くと左に曲がる通路まで来た。
私は曲がった先を警戒しながら、そっと顔を覗かせる。
「キシャ?」
「キシャシャ!」
「キシャー?キシャ!キシャ!」
赤いゴブリンみたいな人型のモンスターが談笑に励んでいた。
モンスターはアークゴブリンと呼ばれるA級に分類されるゴブリンだ。
通常のゴブリンと違い、赤い体色が特徴でゴブリンよりもかなり戦闘力が高く、通常のゴブリン同様に同種族はもちろん異種族だろうとメスを見つければ容赦なく捕まえて、拘束と監禁をして、死ぬまでゴブリンの子供を産まさせる。
度々、ゴブリンによる被害がギルドにも報告されるほどには身近な存在である。
特に私たち二人は奴らからするとメスなので、ゴブリンに捕まるのだけは死んでも回避したいところではある。
私はサッと通路に飛び出して一番手前のゴブリンを殴る。
「でやぁ!」
「キシャー?!」
ゴブリンは鮮血を撒き散らしながら、凄い速さで通路の奥へと消えて行った。
他のゴブリン達が戦闘態勢を整えようとしている隙に残りのゴブリンを殴る。
ゴブリンは壁にぶつかると鮮血を撒き散らして息絶える。
「アリス姉、危ない!」
マリアが咄嗟に飛び出して、私の上から振り下ろされる巨大な棍棒を政宗で受け流す。
「グオオオオオオオ!!!!!」
先程のゴブリンよりも明らかに強そうな巨大な赤いゴブリンが現れる。
私はやつを見ながら、マリアに言う。
「気をつけて!やつはさっきのゴブリン達の王…S級モンスターのゴブリンキングかもしれないわ!力任せの凶悪な破壊力の棍棒攻撃に加えて、強化魔法で自身を強化して、さらに威力と速さが上がるわ!棍棒攻撃は出来るだけ避けて戦うのよ!」
「了解!」
マリアはそのままゴブリンキングに突撃する。
「雷よ!魔法剣!そして…剣技!牙突!」
ギラによって政宗に雷属性を付与して、威力と速度を上げた突きの構えでゴブリンキングの腹を斬り裂く。
まるで鉄同士を打ちつけたかのようなキィーン!と言う甲高い音が響く。
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ゴブリンキングが怒りの咆哮をあげる。
ゴブリンキングの防御魔法によって、腹に傷こそつかなかったもののかなり効いたようすだった。
ゴブリンキングはそのまま強化魔法で強化した素早く重い棍棒の一撃をマリアに叩きつけようとする。
「光よ、集え!魔法剣!剣技!燕返し!」
ディアによって光属性を付与し、速度に全てを注ぎ込んで圧倒的な速さで強化された剣技で一瞬のうちにゴブリンキングを解体する。
ゴブリンキングはわけのわからない顔をしたままバラバラになって崩れ落ちる。
「ふう…思ってたより動けるみたいで良かった…」
「S級で一番弱いゴブリンキングが相手とは言え、初めてS級モンスターをソロ討伐したのは凄い実力だね。」
「ふふっ…初めてアリス姉を守れた…それと自分で思ってたより刀を使うのが身体にあってるみたい。」
マリアは満足そうに頷きながら奥へ進む。
「ふふっ…たくましくなってくれちゃったわね…」
私もマリアの後を追いかけて奥へ進んで行く。
その先に少し拓けた部屋があり…
私は日課であるソロでの攻略依頼を受けようかと思って起き上がる。
「…アリス姉?」
マリアが眠そうな目を擦って起きる。
リリアはベッドの隅で小さくなって寝ているので、ひそひそ声で話す。
「あ、起こしちゃった?これからダンジョンに鍛えに行くつもりなんだ。だから、もう少し寝てていいよ。」
マリアは眠そうに欠伸をして言う。
「マリアも行く…」
マリアはそう言うとそそくさと準備をする。
「アリス姉…準備できた。」
「よーし!ちゃちゃっと行ってきますか!」
「おー!」
リリアが寝ているので静かに話しながら、宿を出る。
外は一面銀世界で空からは輝く様な雪が降っていた。
マリアが白い息を吐きながら震えて言う。
「さ、寒い…アリス姉、寒くないの?」
マリアは真冬に相応しい厚めのモフモフなコートを着ていたが、私は対称的に軽くて薄いシャツとホットパンツの様なズボンを履いてるだけのまるで真夏の服装だった。
「この辺はまだ暖かい方だからねぇ…」
「…結構な勢いで雪降ってるけどね。」
私は元々氷河に覆われた雪国の土地で産まれたらしく、ここよりも寒いところを転々としていた時期があり、その頃には野宿も当たり前にしてたので、その分寒さに強いのかなと思う。
物心つく前には義父母家庭に住んでいたから、よくわからないけど…
「さってと…今日のダンジョンは何があるかな…」
私はいつもの様にギルドに向かう。
マリアは寒そうにしながらも私の後を追いかける。
五分ほど雪の中を歩いて、ギルドに到着する。
私がいつもの様にダンジョン情報を確認していると聞き覚えのある男性の声がする。
「おう!アリスにマリアじゃねぇか!こんな時間から何処へ行くきだい?」
「あ、グラディオスさん!おはようございます!私はこれからこちらのB級のダンジョンに向かおうと思っているところです!」
「マリアはアリス姉についてきただけ…」
「ほう?どれどれ…」
グラディオスは私の向かおうとしている先のダンジョンを見ながら言う。
「あー…こりゃ、S級モンスターの宝庫だって噂の超低階層ダンジョンじゃねえか。超低階層だから、ランクがかなり低く設定されているが…アリスはともかく、中級職の魔術師であるマリアにはかなーりキツいダンジョンになると思うが…いや、待てよ?」
グラディオスは何かを閃いたような表情をして言う。
「マリア、お前さん、剣聖に興味は無いかい?私の目で見る限りはお前さんの素質なら剣聖に適性があるんだが…」
マリアは少しだけ考える様に首を捻る。
「マリアはリリアと魔術師を極めようって、約束して2人で魔術師をやってたけど、それだとアリス姉一人で前衛を任せる事になるのか…私も前衛に出た方が良いのかな…それとも私がもっともっと強くなって魔術師のままで前衛に出れるくらい強くなれば…いや、それでは時間がかかり過ぎちゃうかも…何よりアリス姉を守れる力が欲しい…」
マリアは考えが纏まった様子で言う。
「グラディオス…マリアには他にどんな適性がある?」
グラディオスはマリアをしっかりと見ながら言う。
「そうだな…君のリリアとの約束に一番適している職なら、魔剣士が一番適正だな。魔術師の様に遠距離からの魔法攻撃も出来るし、剣士の様に剣技を利用した近接攻撃も可能だ。更には魔法を自身の得物に付与して攻撃する付与魔法の一種でもある魔法剣を使えるから、ダメージの代わりに魔力を吸い取る魔法の魔吸収を得物に付与して、剣技の千烈斬を使って、相手から大量の魔力を吸い取るなんて戦い方も可能だぞ。」
マリアは少し考える様に首を捻るが、すぐに答えは出たようだ。
「じゃあ、マリアは魔剣士になる。グラディオス、手続きをお願い。」
「あいよ。右腕を出しな…」
マリアは言われるがままに右腕を出す。
グラディオスはその右腕の中ほどを持って言う。
「我、新たなる道を授けし者…彼の者、その道を歩みし者…これより汝を魔剣士として導く者…その道を照らし、導となれ!」
グラディオスが詠唱し終わるとマリアの身体が輝き、マリアの姿が変化する。
今はマリアのモフモフのコートのせいでほとんど変化がわからないけどね。
「これが…新しいマリア…」
マリアがコートの前を開けて自分の姿を確認する。
マリアの着ていたコートの下に軽くて動きやすそうな和風な羽織に刀のような長い剣が腰に装備されていた。
グラディオスが剣を指さしながら言う。
「そいつは妖刀政宗だな。なんでも片目の龍の力がある伝説の妖刀らしいぜ。龍の力で所持者のHP上限を半分にする代わりに剣術の効果期待値を80倍にアップさせ、さらには一流の剣聖のような動きを可能にさせる能力があるみたいだ。まさに妖刀の名に相応しい奇っ怪な能力だぜ。そして、その服はその龍が人の姿の時に使っていたとされている伊達羽織だな。こいつには妖刀政宗の所有者のHP以外の能力を10倍にする能力があるぜ。」
この世界では職を変えると今までの武器種が使えなくなる代わりに特別な力を持った武具に変化する事があるんだ。
マリアの場合はモーニングスターの武器種の杖が使えなくなったけど、代わりに妖刀政宗が武器となったってところだね。
ちなみに私は何の武器も装備せずに、ただの包帯を拳に巻いているだけだったりする。
本来は拳を守る為の小手と呼ばれる武器が必要なのだが、私の場合は固有スキルの無手の極意と呼ばれる能力があって、その能力は自身が何の武器も装備してない時だけ、自身のHPと防御以外の能力値を900倍にする効果があるんだ。
さらに私には魔闘士を極めた事で拳の極意もあるから、素手での直接攻撃の威力が5倍も上がるんだ。
つまり、ただ普通に静止した状態で殴るだけでも4500倍の高威力の攻撃になるわけだ。
いくら素手が武器より攻撃力が無いとはいえ、4500倍も与える威力が大きければ、そこいらの冒険者の最大火力とは比較にならない威力になるわけだ。
さらにそこに弱点特攻や速度や魔法や技能による強化を加えると最高装備の冒険者の最大火力すら超えるような攻撃が可能となる。
つまり、チート級の攻撃力強化ができるって事。
まあ、私とギルマスしか、私の固有スキルの存在を知らないんだけどね。
私自身は耐久面が貧弱なのが悩みの種ではあるのだけれど…
元々のステータスも耐久面はかなり低かったからね。
「そんじゃ、マリアの職も変わったわけだし、5時までには帰ってこいよ。」
グラディオスはそう言うと奥の部屋へと入って行く。
私たちは受付でソロで行く予定だった攻略依頼を二人で受けて現地まで龍車で行く。
龍車で街を出て30分ほど南に飛んだ位置に目的のダンジョンはあった。
私は龍車のワイバーンによく似た見た目の運龍をダンジョンの外で待たせて、ダンジョンの入口に立つ。
「ピロシキ、ここで待っててね。」
ピロシキとは私の所有物のピロポットの事である。
ピロシキは小さく頷くとその場に伏せをする。
ちなみに余談だが、龍車に翼竜では無く、運龍を使う理由だが、単純にピロポットの方が人の指示を理解して実行する能力と記憶力が良く、S級の魔物からの攻撃にも耐えられる為、人の輸送に適していたからだ。
まあ、龍種の特徴として自分より弱い者には従わない点はあるけどね。
そのせいで、使用許可があるはA級以上の冒険者に限られている。
私は個人的に卵の時から保護していた自己所有物扱いのピロポットで移動をしているのだけれどね。
幼少期の反抗期で言う事を聞かなくなって蹴られた時にカチンと来てボッコボコのかえりうちにしたら、反抗期が一瞬で終わったのはここだけの秘密。
その一方で竜車の方は竜種のワイバーンなのだ。
竜種は躾さえちゃんと出来ていれば言う事もよく聞くので、特に許可証が必要な事例もない。
わかりやすく言うとデカいトカゲみたいな見た目の犬だね。
耐久面はA級くらいの魔物の攻撃なら、何とか耐えられる程度にはあるらしい。
私はマリアに目配せをしながら言う。
「この中は一筋縄では行かない強力なモンスターが沢山いるから、気をつけてね。」
マリアは小さく頷く。
私がダンジョンに入り始めるとマリアも後からついてくる。
少し歩くと左に曲がる通路まで来た。
私は曲がった先を警戒しながら、そっと顔を覗かせる。
「キシャ?」
「キシャシャ!」
「キシャー?キシャ!キシャ!」
赤いゴブリンみたいな人型のモンスターが談笑に励んでいた。
モンスターはアークゴブリンと呼ばれるA級に分類されるゴブリンだ。
通常のゴブリンと違い、赤い体色が特徴でゴブリンよりもかなり戦闘力が高く、通常のゴブリン同様に同種族はもちろん異種族だろうとメスを見つければ容赦なく捕まえて、拘束と監禁をして、死ぬまでゴブリンの子供を産まさせる。
度々、ゴブリンによる被害がギルドにも報告されるほどには身近な存在である。
特に私たち二人は奴らからするとメスなので、ゴブリンに捕まるのだけは死んでも回避したいところではある。
私はサッと通路に飛び出して一番手前のゴブリンを殴る。
「でやぁ!」
「キシャー?!」
ゴブリンは鮮血を撒き散らしながら、凄い速さで通路の奥へと消えて行った。
他のゴブリン達が戦闘態勢を整えようとしている隙に残りのゴブリンを殴る。
ゴブリンは壁にぶつかると鮮血を撒き散らして息絶える。
「アリス姉、危ない!」
マリアが咄嗟に飛び出して、私の上から振り下ろされる巨大な棍棒を政宗で受け流す。
「グオオオオオオオ!!!!!」
先程のゴブリンよりも明らかに強そうな巨大な赤いゴブリンが現れる。
私はやつを見ながら、マリアに言う。
「気をつけて!やつはさっきのゴブリン達の王…S級モンスターのゴブリンキングかもしれないわ!力任せの凶悪な破壊力の棍棒攻撃に加えて、強化魔法で自身を強化して、さらに威力と速さが上がるわ!棍棒攻撃は出来るだけ避けて戦うのよ!」
「了解!」
マリアはそのままゴブリンキングに突撃する。
「雷よ!魔法剣!そして…剣技!牙突!」
ギラによって政宗に雷属性を付与して、威力と速度を上げた突きの構えでゴブリンキングの腹を斬り裂く。
まるで鉄同士を打ちつけたかのようなキィーン!と言う甲高い音が響く。
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ゴブリンキングが怒りの咆哮をあげる。
ゴブリンキングの防御魔法によって、腹に傷こそつかなかったもののかなり効いたようすだった。
ゴブリンキングはそのまま強化魔法で強化した素早く重い棍棒の一撃をマリアに叩きつけようとする。
「光よ、集え!魔法剣!剣技!燕返し!」
ディアによって光属性を付与し、速度に全てを注ぎ込んで圧倒的な速さで強化された剣技で一瞬のうちにゴブリンキングを解体する。
ゴブリンキングはわけのわからない顔をしたままバラバラになって崩れ落ちる。
「ふう…思ってたより動けるみたいで良かった…」
「S級で一番弱いゴブリンキングが相手とは言え、初めてS級モンスターをソロ討伐したのは凄い実力だね。」
「ふふっ…初めてアリス姉を守れた…それと自分で思ってたより刀を使うのが身体にあってるみたい。」
マリアは満足そうに頷きながら奥へ進む。
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