魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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闘神サリア

13話

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「お前なぁ…前も言ったけど…」

「うるさいのぅ…ちょっと灰にしただけじゃろうて…」

「これの何処がちょっと灰にしただけだよ!炭か灰しかないじゃねぇか!」

目の前に広がる炭と灰の光景にいつもの様に仲良く言い合いをする少女と少年の喧騒を聞き流しながら、迎えた5日目。

暇なアタシはたまたま近くに生えていた大木を軽く殴ってみる。

(どごおおおおおおん!)

「やべ…」

力加減を間違えて山の様な大きさの大木を文字通りに塵も残らないほど、木っ端微塵にしてしまった。

付近の木々もかなり吹き飛んでいた。

少女と少年も言い合いをやめてポカーンとしていた。

少女はアタシの選んだ服を着ており、上から下まで見かけの歳相応のフリルのキャミソールとスカート姿だ。

言われなければ普通の人間の子供と大差ないくらいには見えるだろう。

「いやぁ…わりぃわりぃ!驚かすつもりは無かったんだが、力加減をミスっちまってな!」

少年は呆れた様子で言う。

「サリアさん、クレアみたいな事を言わないでくださいよ…ただでさえ、脳筋しか居ないんですから…」

クレアは堂々と胸を張って言う。

「我は強者だからな!モーラのように非力じゃないのだ!」

モーラは聞き捨てならないと言いたげにクレアを睨む。

「ほぅ?つまり、クレアは脳筋バカ過ぎて、周りを見て力を抑える事もできないとな?」

「はーっはっはっはっ!お主相手に何に気使う事があるか。まるでオリに閉じ込められた負け犬の遠吠えよのぅ!ほれ、わんわん!」

クレアがモーラを挑発する。

「テンメェ…!」

モーラがクレアに殴りかかろうとした瞬間だった。

「ギャオオオオオオオオオオオオ!」

馬鹿みたいにデカい何かの咆哮が大地を揺らす。

アタシは自身の身体的特性を利用して音を分析する。

「この声は…災害級モンスターだな。それもかなりの規模の群れみたいだぜ。ざっと一種で40体は居るな。まあ、クレアたちには2人がかりで一体倒すのがやっとだろうし、急がねぇとヤバそうだから、アタシが全部ぶっ飛ばしてやんよ!」

アタシは地を蹴り一直線にモンスターの群れに突撃する。

後ろの方から互いに悪態を付き合いながら、二人がやってくる。

そして、アタシの目の前に現れたのは巨大な悪魔の災害級モンスターのグランドデーモン、巨大な羊の災害級モンスターのナイトメアシープ、先頭には卵のようなものを抱えて走る一際小さな狐の獣人の女の子が居た。

未成熟だからか、尻尾も二本と少なく、幼体のふわふわの毛で覆われていた。

尻尾と髪は短く白っぽい色をしており、目は紅く輝いていた。

「そんなに寄って集って来なくても良いじゃんか~!」

そんな事を言いながら、女の子はアタシに気がつく様子もなく、通り過ぎて行く。

もちろん、モンスターの群れはそのままアタシに突撃してくる訳だが…

「アタシの敵じゃないねぇ!」

アタシは地を蹴って、モンスターの群れに突撃する。

「百裂拳!」

ずがががががが!と一体に一発ずつ当てて倒しながら、群れをどんどん全滅状態に追い込んでいく。

後から追いついたクレアとモーラが言う。

クレアはサッと尻尾で女の子を捕まえていた。

「いつ見ても、圧巻の一言に尽きる光景よのぅ…」

「心底不快だが、俺もクレアと同感だな。」

クレアの尻尾に捕まっている女の子がポツリとこぼす。

「あうぅ…食われちまうだ…」

それを聞いたクレアがボソッと言う。

「獣人は美味しくなかったのじゃ…」

「いや、食ったことあるんかい…」

モーラが呆れた様子で言う。

そこに血塗れのサリアが戻って来る。

「ふぃ~…ウォーミングアップにもならねぇ雑魚ばっかだったな。あれなら、クレアの火炎弾でイチコロだったかもな。」

そのサリアの姿を見て女の子が「ひぇ…」と情けない声を出す。

「サリアさん、子供の教育に良くないですよ。」

「んあ?何処がだ?」

「モーラよ、こやつがそれでわかると思うか?」

「脳筋しかいないの忘れてたわ…」

クレアもモーラと同じ様に呆れた様子だが、何が言いたいのかわからないので、とりあえずクレアの尻尾に捕まっている女の子の目の前まで行く。

「ひぇ…こ、こっち来ないで!」

女の子が目を思いっきり閉じると同時にサリアに向けて、強い風が発生する。

「おわっ?!強風エアロか!」

アタシは腰を低くして構える。

「せいっ!」

アタシはほとんど力を入れてない正拳突きの風圧で強風を無力化する。

まあ、正確にはちょっと強過ぎて、風圧で女の子が気絶してしまったのだが…

「…サリアさん、もう少し力加減を覚えてください。クレアが守護を持って無ければ、この子の身体が文字通りに吹き飛んでましたよ。」

「そ、そんな事を言われてもなぁ…正直、今のでもかなり手は抜いた方なんだが…」

「ここまで来るともはや全てがどうでも良くなってくるのぅ…」

クレアはいつの間にか女の子が持っていた卵のようなものでお手玉をしながら、どうでも良さげに言っていた。

卵のようなものと言うより、完全に卵だったけど…

「あ、それって、龍種のクロアデュールの卵だよな?」

「んあ?そうなのか?」

クレアは卵のお手玉を辞めて、サリアに渡す。

私はで卵を鑑定する。

「間違いない。正真正銘のクロアデュールの卵だ。こいつは見つけるのも持ち運ぶのも出来ないと言われているほど、珍しいものだぜ。」

それにクレアがアレだけ雑に扱ったにも関わらず、中身に損傷も見られないし、換金額も相当なものになるな。

クレアがクンクンと鼻を動かす。

「ふむ。そやつ、卵から孵る直前みたいじゃのう。こうしてる間にも卵から孵って、サリアを母親だと思ったりしてな!」

なんてクレアが冗談気味に言っているとパキパキっと卵が音を立てて割れ始める。

「おわっ?!孵り始めたぞ?!」

モーラが驚いた様子で言う。

アタシはゆっくりと地面に卵を置く。

卵の殻が割れて、中から小さなドラゴンが顔を出す。

ドラゴンはクンクンと顔を動かしながら、アタシを見る。

『…』

ドラゴンはキョロキョロと周りを見る。

『ママ、このひとたちはだぁれ?』

ドラゴンはクレアたちの方を見て首を傾げている。

「…なぁ、クレア。これって、アタシが答えた方が良いやつか?」

「そうじゃな。スリコミ?ってやつで、お主が最初に見られたからのう。」

「そうか…」

アタシはドラゴンの頭を撫でて言う。

ドラゴンは気持ち良さそうに目を閉じる。

「安心しな。こいつらはアタシの仲間だ。あー…友達って言った方がわかりやすいか?」

ドラゴンはバサッと翼を広げる。

『なかま…?ともだち?う~ん…よくわかんないけど、ともだち、おぼえた!』

ドラゴンはクレアにペコリと頭を下げる。

『ともだち!よろしく!』

クレアはイタズラっぽく微笑みながら、ドラゴンの目の前で屈んで目線を合わせる。

「我はクレアじゃ。よろしくな!」

『ともだち、クレア!おぼえた!』

ドラゴンは顔を上げてよちよちとモーラの方を向く。

『ともだち!こんにちわ!』

モーラは軽く手を上げて言う。

「俺はモーラだ。よろしく。」

『モーラ!おぼえた?』

首を傾げて不思議そうに言うドラゴンにクレアが愉快そうに笑う。

「アッハッハッハッ!モーラだけ首を傾げられてるのじゃ!」

「う、うっさい!クレアが同じ子供だから、覚えられやすかっただけだろ!」

モーラが勢いよくクレアに言う。

『モーラ、けんか、だめ!』

ドラゴンがクレアとモーラの間に立ち、モーラの方を向いて翼を広げて止めようとする。

クレアはクスクスと笑いながら、モーラに言う。

「思わぬ強敵が誕生してしまったのう?ククク…」

モーラは少しだけしょんぼりした様子だった。

「チビコや。そいつらはこれでも仲は良いんだぜ!」

サリアが楽しげに言った瞬間、ほぼ同時に2人が互いを指さして反論する。

「はぁ?誰がこんなやつと!」
「こやつはありえないのじゃ!」

2人は互いに顔を向けて言う。

「真似すんな!」

「何を言うか!モーラの方が真似したんじゃろ!」

「はぁ?なんで俺がクレアなんかの真似をしなくちゃなんねぇんだよ!」

二人の喧嘩が始まったところをドラゴンはオロオロと2人を交互に見ていた。

サリアが楽しそうにドラゴンを抱えて言う。

「な?喧嘩するほど仲がいいって事よ!」

『うん…わかった!』

ドラゴンがそう言うと2人同時にこちらを見て言う。

「わかったじゃねぇよ!」
「わかったじゃないのじゃ!」

「う、う~ん…」

そうこうしていると、クレアの尻尾に捕まっていた女の子が目を覚ます。
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