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元旦那編

妻がいなくなった時

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何故か噂が第二王子殿下にまで届いていたそうでカフェに一緒に行くことになった時には殿下には彼女が妻である事は知っていたのかもしれない。
普段とは違う感じでカフェで『リリー』に話しかけていた。
帰り際に

「うん、きっと近いうちにお邪魔させてもらうかな。」
殿下の帰り際のこのセリフにこの時は、殿下もリリーを気に入ってしまったのか?!不安になったのがさらに滑稽な事だっただろう。
家令に殿下が急に来たから客室と晩餐の準備を妻にしておくように指示してから街に来たのでそろそろ準備が出来ている頃だろうと屋敷に戻ると殿下に言うと、
「何を言っている?お前の妻は屋敷に居ないだろう?偽物妻には興味は無いぞ?」
「は?偽物とは?妻は病弱で今は別邸で療養しておりますが、この辺りの空気が合うのかだいぶ体調が良くなったと聞いていますが……」
「聞いている、ねえ……。」
「あっ……」
妻を放置しているのに気づかれてしまった。
「まぁよい、お前の偽物妻に会う気はないからな、街の宿屋を取らせているから私はそちらに泊まる。」
「っ……、はっ。宿屋までお送り致します。」
ヤバい、それなりに長い付き合いだから分かる。
殿下が怒っていると。

宿屋に送り届け急ぎ屋敷に戻る。

「ちなみにお前の名ばかりの妻は別邸ではなく敷地の端の小屋で生活していたそうだ、私の手の物が調べさせてもらったが彼女が隠しているものを読ませてもらったよ。」
「小屋?」
「貴族令嬢に小屋を与えたそうだ。」
「そ、そんな……」
「まぁ探してみろ、彼女がお前に読んでもらいたくて隠し残したものだからこちらは写し控えさせて私も読んだがお前も読んでみるといい。」
「……」
「俺がリンに言えるのはそれだけだ。」
「はい。」
送り届けた殿下は小屋て生活させられていたと言っていたので一緒に来ている護衛の騎士に我が家にある小屋について聞くと、おじぃさまの時に使わなくなった庭師小屋ではないかと言われそこに連れていってもらった。
少しほこりっぽさはあるが長年放置された小屋ではなく最近まで人が住んでいた形跡が残っているではないか。
部屋を見て回ると整理整頓されたすこしだけ広めの部屋のクローゼットにはボロボロのワンピースが2枚かかっているだけで下の引き出しは衣類は入っていなかったが、紙の束と手紙が残されていた。

手紙を読んで妻であるはずのリディアは私と結婚した翌日の朝からこちらで生活をしていた事などが書かれており、お手当て等は最低限の衣類や生活用品に使った以外はお返しします。と帳簿も残されていた。
お金は手紙のあった引き出しの下に入っておりざっと帳簿の残金との差は無さそうだった。

それらを持って本邸に急ぎ戻り同行していた騎士に家令と偽妻を捕獲するように指示をした。
この時は家令を信じていたのに裏切られたことしか頭になく、家出をした妻の存在にはそこまで気にしていなかったのだ。
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