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☆番外編3☆
honey moon 1
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その日は梅雨も明け、本格的に暑くなって来たなぁと思い始めた土曜日の昼下がりだった。
そろそろ結婚式の招待状の用意を始めようと、睦月さんとダイニングテーブルに向かいあって話しをしていると、インターフォンが鳴った。私のほうが近いからすぐ席を立ち、「はーい!」とそれに軽く返事をする。
『あぁ。俺。話しあるんだけど、いいか?』
すっかり聞き慣れた、お隣のお隣さんの声に、私は振り返って睦月さんの顔を見た。
「なんだろ?」
そう言うと睦月さんは私の元にやって来て、それに応答する。
「今出るから待ってて」
そう言うと睦月さんは「ちょっと行ってくるね」とリビングをあとにした。
長門さんがうちに来ること自体は珍しくない。仕事の相談をし合う姿は今までそれなりに見て来た。でも、土曜日のこんな時間に来るのは珍しいかも知れない。仕事の話は平日だけとルールを決めているようで、普段はだいたい平日の、お互い家で作業する日を狙って来ているのだ。
家の中でお話しするかな?と私はテーブルの上を一旦片付け始めていると、廊下に通じる扉が開いた。
「さっちゃん」
そう呼ばれて振り返ると、睦月さんがリビングに入ってくるところだった。そして、その後ろに続くのは長門さんだ。
「こんにちは。長門さん」
「悪いな、こんな時間に」
「いえ。私、邪魔だったら違う部屋に……」
テーブルにあったものを纏めながらそう言うと、睦月さんが戸惑った表情で口を開く。
「それがさ、さっちゃんに話があるんだって」
「私に?」
長門さんが私に直接なんだろう?と、少し身構えながら私はそう言った。
ダイニングテーブルの、私の正面に座る長門さんは、なんだか決まり悪そうな顔をしている。何の話か全く心あたりがなくて、私もちょっと収まりが悪い。
「はい、どうぞ」
冷蔵庫に常備しているアイスティーを睦月さんがいれてくれて、私と長門さんの前に置くと、睦月さんは私の隣に座る。
「まだ話し始めてなかったの?俺に言い辛いんなら席外すけど?」
睦月さんがそう言うと、長門さんは「いや、お前にも関係あるから」と申し訳なさそうに返した。それから、手に持っていた畳んだ紙を広げると、テーブルに置き差し出して来た。
「これ、読んでくれ。本人から渡してくれって頼まれた」
手紙……?
私はそれを受け取ると、書かれている文章に目を落とした。
「えっ!これ⁈」
読み終わって声を上げながら、私は長門さんを見る。
「俺は……受ける。お前はどうする?」
そう尋ねられた。
そのとき私は即答できず、「あ、の……。え……と」と言い澱んでしまった。それを見て長門さんは苦笑いして、「まぁ、そうなるわな」と口にする。
「何?俺も聞いていい話?」
睦月さんが不思議そうに私達に尋ね、私はそちらを向くと「これ……」とさっきの紙を差し出した。
長門さんに渡されたその紙。メールを印刷したものだったのだけど、その差出人にまず驚き、そしてさらに内容に驚いた。けれど、それには一つ問題があったのだ。
しばらく睦月さんがそれに視線を送っているのを私は黙って見守る。睦月さんは、いったいどんな反応をするのだろう?と、少し構えてしまう。
読み終えたのか、睦月さんは顔を上げると、途端にパァッと明るい顔を見せた。
「凄い!ハリウッド女優からのオファー⁈」
そう、なのだ。
メールの差出人は、今はハリウッドで活躍している日本人女優、ミッシェルさん。
去年帰国した際に、ミッシェルさんは長門さんに撮影を依頼していて、私はそのヘアメイクを担当させてもらったのだ。そしてその時、『これからはみかって呼んでね?本名なの』と言ってくれて、私はみかさんと呼んでいた。
その、みかさんからのオファー。今度ニューヨークで行う撮影のヘアメイクを担当してくれないか、と言う内容だ。撮影するのはみかさんのお父様。そして、長門さんにそれに付いてもらうことになったと書いてある。だから、連絡先がわからなかった私に、長門さんを通じてオファーがやってきた、と言う次第だ。
「みかさんが私を買ってくださるのは嬉しいけど……」
私がそこで言葉を止めると、睦月さんはまた不思議そうに私を見る。
「さっちゃんが受けたくないなら受けなくてもいいけど……。たぶん違うよね?」
私が『受けない』と即答しなかったってこともあるだろうけど、私の気持ちなど睦月さんにはお見通しだ。私は黙ったまま、私は小さく頷いた。
「じゃあ、受けるんだね?楽しみだ!」
まるで自分のことのように睦月さんは喜んでくれている。でも、私が引っかかった場所に気づいてないだろうかと私は口を開いた。
「けど、睦月さん。その時期は……」
「え?あぁ。面白いくらい被ったよねぇ」
そう言って睦月さんは楽しそうに笑って見せる。
おそらく長門さんでさえ、気にしていたんだと思う、その撮影の行なわれる時期。
それは、私達が新婚旅行に行こうとしていた日程と思いっきり被ってしまっていたのだ。
そろそろ結婚式の招待状の用意を始めようと、睦月さんとダイニングテーブルに向かいあって話しをしていると、インターフォンが鳴った。私のほうが近いからすぐ席を立ち、「はーい!」とそれに軽く返事をする。
『あぁ。俺。話しあるんだけど、いいか?』
すっかり聞き慣れた、お隣のお隣さんの声に、私は振り返って睦月さんの顔を見た。
「なんだろ?」
そう言うと睦月さんは私の元にやって来て、それに応答する。
「今出るから待ってて」
そう言うと睦月さんは「ちょっと行ってくるね」とリビングをあとにした。
長門さんがうちに来ること自体は珍しくない。仕事の相談をし合う姿は今までそれなりに見て来た。でも、土曜日のこんな時間に来るのは珍しいかも知れない。仕事の話は平日だけとルールを決めているようで、普段はだいたい平日の、お互い家で作業する日を狙って来ているのだ。
家の中でお話しするかな?と私はテーブルの上を一旦片付け始めていると、廊下に通じる扉が開いた。
「さっちゃん」
そう呼ばれて振り返ると、睦月さんがリビングに入ってくるところだった。そして、その後ろに続くのは長門さんだ。
「こんにちは。長門さん」
「悪いな、こんな時間に」
「いえ。私、邪魔だったら違う部屋に……」
テーブルにあったものを纏めながらそう言うと、睦月さんが戸惑った表情で口を開く。
「それがさ、さっちゃんに話があるんだって」
「私に?」
長門さんが私に直接なんだろう?と、少し身構えながら私はそう言った。
ダイニングテーブルの、私の正面に座る長門さんは、なんだか決まり悪そうな顔をしている。何の話か全く心あたりがなくて、私もちょっと収まりが悪い。
「はい、どうぞ」
冷蔵庫に常備しているアイスティーを睦月さんがいれてくれて、私と長門さんの前に置くと、睦月さんは私の隣に座る。
「まだ話し始めてなかったの?俺に言い辛いんなら席外すけど?」
睦月さんがそう言うと、長門さんは「いや、お前にも関係あるから」と申し訳なさそうに返した。それから、手に持っていた畳んだ紙を広げると、テーブルに置き差し出して来た。
「これ、読んでくれ。本人から渡してくれって頼まれた」
手紙……?
私はそれを受け取ると、書かれている文章に目を落とした。
「えっ!これ⁈」
読み終わって声を上げながら、私は長門さんを見る。
「俺は……受ける。お前はどうする?」
そう尋ねられた。
そのとき私は即答できず、「あ、の……。え……と」と言い澱んでしまった。それを見て長門さんは苦笑いして、「まぁ、そうなるわな」と口にする。
「何?俺も聞いていい話?」
睦月さんが不思議そうに私達に尋ね、私はそちらを向くと「これ……」とさっきの紙を差し出した。
長門さんに渡されたその紙。メールを印刷したものだったのだけど、その差出人にまず驚き、そしてさらに内容に驚いた。けれど、それには一つ問題があったのだ。
しばらく睦月さんがそれに視線を送っているのを私は黙って見守る。睦月さんは、いったいどんな反応をするのだろう?と、少し構えてしまう。
読み終えたのか、睦月さんは顔を上げると、途端にパァッと明るい顔を見せた。
「凄い!ハリウッド女優からのオファー⁈」
そう、なのだ。
メールの差出人は、今はハリウッドで活躍している日本人女優、ミッシェルさん。
去年帰国した際に、ミッシェルさんは長門さんに撮影を依頼していて、私はそのヘアメイクを担当させてもらったのだ。そしてその時、『これからはみかって呼んでね?本名なの』と言ってくれて、私はみかさんと呼んでいた。
その、みかさんからのオファー。今度ニューヨークで行う撮影のヘアメイクを担当してくれないか、と言う内容だ。撮影するのはみかさんのお父様。そして、長門さんにそれに付いてもらうことになったと書いてある。だから、連絡先がわからなかった私に、長門さんを通じてオファーがやってきた、と言う次第だ。
「みかさんが私を買ってくださるのは嬉しいけど……」
私がそこで言葉を止めると、睦月さんはまた不思議そうに私を見る。
「さっちゃんが受けたくないなら受けなくてもいいけど……。たぶん違うよね?」
私が『受けない』と即答しなかったってこともあるだろうけど、私の気持ちなど睦月さんにはお見通しだ。私は黙ったまま、私は小さく頷いた。
「じゃあ、受けるんだね?楽しみだ!」
まるで自分のことのように睦月さんは喜んでくれている。でも、私が引っかかった場所に気づいてないだろうかと私は口を開いた。
「けど、睦月さん。その時期は……」
「え?あぁ。面白いくらい被ったよねぇ」
そう言って睦月さんは楽しそうに笑って見せる。
おそらく長門さんでさえ、気にしていたんだと思う、その撮影の行なわれる時期。
それは、私達が新婚旅行に行こうとしていた日程と思いっきり被ってしまっていたのだ。
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