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第6章
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カイゼルへと抱きついたまま、ユアンはそこから離れようとしない。
こんなに強く、真っ直ぐに想いを寄せられたのは初めてのことで、カイゼルはどうしていいか、わからない。
「…………後悔しないか?」
ユアンは何度も頷く。
「…………ここに、残るか?」
カイゼルは、必死にしがみついてくるその小さな身体を、引き離すことができない。
「…………ずっと、ここいたい。カイゼル様のいるところに、いたい。」
見上げる瞳の、そこに宿るものが自分へと向けられるものなら、
それを、自分だけのものにしてしまいたい。
カイゼルは生まれて初めて、「欲しい」と思った。
これが、「欲しい」。
「わたしのものに、なるか?」
ユアンの翡翠色の瞳に熱が孕む。
赤く染まるその頬へと手を添えると、ユアンは甘えるように、その手の平へと頬を擦り寄せた。
そのまま、こくりと頷く。
カイゼルは、その小さな口を奪い取るように口付けをした。
ユアンは抵抗することなく受け入れると、自らもそれを求めカイゼルの口付けに応えた。
これは、もう自分のものだと、カイゼルは思う。
自分はもう、カイゼルのものだと、ユアンは思う。
離れたくない、と。
「侯爵家へは、明日連絡する。兄王にも。それで、いいか?」
カイゼルの腕の中にすっぽりとおさまったまま、ユアンは頷く。
「今日は、もう部屋へ戻れ。さすがに、これ以上は、わたしも耐えられない。」
ユアンは、不思議そうにカイゼルを見上げた。
「一緒にいたい。」
「だめだ。今日は、部屋に戻れ。」
「ここに、いたい。」
「………ユアン、この間とは状況が違うのだ。」
「さみしい。」
ユアンは、カイゼルが自分に欲情しているなど、思いもしていなかった。
カイゼルの気持ちが、よく分からない。
明日になれば、カイゼルの気が変わっているかもしれない。
ユアンの強い気持ちに絆されてしまっただけかもしれない。
「ユアン………お前は、、、」
ここから離れようとしないユアンを抱えると、カイゼルは後ろの寝台へと横たえた。
「…カイゼル、さま?」
「ここで、寝ていろ。」
長椅子へと戻り、カイゼルはまた静かに酒を煽り出した。
「これなら、さみしくないだろう。」
寝台の上からは、カイゼルの後ろ姿が見える。
「……一緒に、寝ないのですか?」
側から見れば、まるでカイゼルを誘っているかのように見えるだろうが、
ユアンには全くそんな気はない。
「お前は………あまり無自覚にそのような事を言うな。もう少しこうしてから寝る。さきに寝ていろ。」
あの寝台の上だ。ユアンは思い出すだけで、身体が熱くなる。
また発情してる?
でも、ちゃんと意識はある。
発情してなくても、身体が熱いのはなんでだろう。
今はカイゼルが側にいる。
部屋は静かだ。
ぱちぱちと、火の粉が弾ける音はまるで子守唄のようだ。
なかなか眠れずに、ちらちらとカイゼルの後ろ姿を見やりながら、そのうちに、うとうととすると、そのままユアンは眠りについた。
「………また、ちらちらと盗み見していたのか?」
カイゼルはユアンの視線に気がついていた。
ふっと、口元に笑みが浮かぶ。
自分の寝台の上では、なんの警戒心もない様子でユアンがすうすうと寝息をたてている。
その脇に潜りこむと、寝返りを打って抱きつく。
「幼いのか、小悪魔なのか。」
明日からまた、忙しく、騒がしくなるだろう。
それも、いいかもしれない。
ユアンを妻として迎え入れる。
カイゼルはそう決心した。
こんなに強く、真っ直ぐに想いを寄せられたのは初めてのことで、カイゼルはどうしていいか、わからない。
「…………後悔しないか?」
ユアンは何度も頷く。
「…………ここに、残るか?」
カイゼルは、必死にしがみついてくるその小さな身体を、引き離すことができない。
「…………ずっと、ここいたい。カイゼル様のいるところに、いたい。」
見上げる瞳の、そこに宿るものが自分へと向けられるものなら、
それを、自分だけのものにしてしまいたい。
カイゼルは生まれて初めて、「欲しい」と思った。
これが、「欲しい」。
「わたしのものに、なるか?」
ユアンの翡翠色の瞳に熱が孕む。
赤く染まるその頬へと手を添えると、ユアンは甘えるように、その手の平へと頬を擦り寄せた。
そのまま、こくりと頷く。
カイゼルは、その小さな口を奪い取るように口付けをした。
ユアンは抵抗することなく受け入れると、自らもそれを求めカイゼルの口付けに応えた。
これは、もう自分のものだと、カイゼルは思う。
自分はもう、カイゼルのものだと、ユアンは思う。
離れたくない、と。
「侯爵家へは、明日連絡する。兄王にも。それで、いいか?」
カイゼルの腕の中にすっぽりとおさまったまま、ユアンは頷く。
「今日は、もう部屋へ戻れ。さすがに、これ以上は、わたしも耐えられない。」
ユアンは、不思議そうにカイゼルを見上げた。
「一緒にいたい。」
「だめだ。今日は、部屋に戻れ。」
「ここに、いたい。」
「………ユアン、この間とは状況が違うのだ。」
「さみしい。」
ユアンは、カイゼルが自分に欲情しているなど、思いもしていなかった。
カイゼルの気持ちが、よく分からない。
明日になれば、カイゼルの気が変わっているかもしれない。
ユアンの強い気持ちに絆されてしまっただけかもしれない。
「ユアン………お前は、、、」
ここから離れようとしないユアンを抱えると、カイゼルは後ろの寝台へと横たえた。
「…カイゼル、さま?」
「ここで、寝ていろ。」
長椅子へと戻り、カイゼルはまた静かに酒を煽り出した。
「これなら、さみしくないだろう。」
寝台の上からは、カイゼルの後ろ姿が見える。
「……一緒に、寝ないのですか?」
側から見れば、まるでカイゼルを誘っているかのように見えるだろうが、
ユアンには全くそんな気はない。
「お前は………あまり無自覚にそのような事を言うな。もう少しこうしてから寝る。さきに寝ていろ。」
あの寝台の上だ。ユアンは思い出すだけで、身体が熱くなる。
また発情してる?
でも、ちゃんと意識はある。
発情してなくても、身体が熱いのはなんでだろう。
今はカイゼルが側にいる。
部屋は静かだ。
ぱちぱちと、火の粉が弾ける音はまるで子守唄のようだ。
なかなか眠れずに、ちらちらとカイゼルの後ろ姿を見やりながら、そのうちに、うとうととすると、そのままユアンは眠りについた。
「………また、ちらちらと盗み見していたのか?」
カイゼルはユアンの視線に気がついていた。
ふっと、口元に笑みが浮かぶ。
自分の寝台の上では、なんの警戒心もない様子でユアンがすうすうと寝息をたてている。
その脇に潜りこむと、寝返りを打って抱きつく。
「幼いのか、小悪魔なのか。」
明日からまた、忙しく、騒がしくなるだろう。
それも、いいかもしれない。
ユアンを妻として迎え入れる。
カイゼルはそう決心した。
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