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第7章
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王への謁見が無事に済むと、緊張の糸が緩んだのかリオは寝込んでしまった。
リオはここまで本当によくやっていた。
公爵も夫人も、誰もリオを休ませたいと言うラグアルの言葉に反対する者はいない。
「リオ、無理をさせてすまない。ゆっくり休むといい。」
リオは、青白い顔をしたまま寝台の上で眠っている。
「リオ、少し出かけて来るよ。すぐに戻るからね。」
リオは、眠ったままだ。
ラグアルは、リオが働いていたと言う花屋へ足を運んだ。
ラグアルと出会うまでリオがどのように過ごしていたのか、その過去については、公爵が全て調べ上げている。
その内容はラグアルにも報告されていたが、ラグアルはシルビオという男の事が気に掛かっていた。
報告では2人の間には何もないとあったが、ある日突然リオが教会を去り、その男の所へ向かったという、その1点に引っかかるものがあった。
ラグアルは自分で直接確認しておきたいと、ずっと考えていた。
花屋へ到着すると、日に焼けた背の高い男と、小柄でふんわりとした雰囲気の漂う女がラグアルを出迎えた。
緊張する男を女が上手く促す。案外しっかりとした女だった。
「それで、その、リオ、様、はお元気でしょうか?」
その様子からは、本気でリオを案ずる様子が感じられる。
「ああ、とても元気だよ。」
「そうですか。本当によかったです。まさか、運命の番が公爵家の方だったなんて。」
なあ、と隣りの女に同意を促すその姿は、女に心底惚れている、そんな様子だ。
勘違いだったのだろうか。
リオが教会を去る時、何かあったのかと、この男が関わっていたのではないかと疑っていたが、どうやら邪推だったようだ。
もし何かあったと判断すれば、ラグアルはこの男を排除するつもりでいた。
ユアンを囲み込んでいた時と同じように。
「リオ、リオ様は、その、ずっと弟のようなもので、ですから、わたしのようなものがこんなことを言うのはおこがましいのですが、リオを、お願いします。」
深々と頭を下げる男に、ラグアルはこの男は大丈夫だと、判断した。
「ああ、大丈夫だよ。そのうちリオを寄越してもいいだろうか?その際は、できれば貸し切りにしてほしい。1日の売り上げ分は、こちらが全て支払いをする。
少し、気分転換をさせてやりたい。」
「は、はい。わたしもお会いしたいです。」
いいだろう?と隣の女に確認をとると、女も、ふんわりと受け入れた。
「そう言えば、リオはここの2階で暮らしていたそうだが、その部屋を見せてもらうことは可能だろうか?」
「あっ、その、申し訳ございません。今は別の者に貸しておりまして…。」
「ああ、そうか。残念だが、仕方ない。」
リオがどのような暮らしをしていたのか、少しでも垣間見れればと思っていたが、他人の部屋を見るつもりはない。
日程については、今後連絡を取り合う約束を交わし、ラグアルは花屋を後にした。
リオは、おそらく大分疲弊していた。
大好きな花や草木にも、長い間触れていない。
陛下への謁見は上手くできたのだろうか。
あの方なら、きっと、もっと上手くできていただろう。
リオは、いつからか、たった一度しか会ったことのないユアンと自分とを比較してしまうようになっていた。
何をどう頑張っても、自分はあの方のようには、きっとできていない。
できる気がしない。
「リオ、起きていたのかい?」
どれくらい眠ってしまっていたのか、慌てて起きあがろうとすると、ラグアルがやんわりと、それを制止した。
「いいんだよ。しばらく、ゆっくり休むといい。」
「でも、まだ覚えなきゃいけないことが、たくさんあるから…」
「少し休もう。リオはよくやっていたから、少しぐらい大丈夫だ。」
「でも…」
リオは不安だ。あの方のように、ラグアルに相応しい存在となるためには、もっともっと、学ばねばならない事がたくさんある。
時間はないのだ。
「リオ、少し休んで落ち着いたら、あの花屋へ行っておいで。」
「……………え?」
「ずっとここに閉じ込めてしまっていたからね。了承は得てきたよ。シルビオ君と久しぶりに会って話しをしておいで。」
「でも、そんな、いいんですか?」
「ああ、わたしがいると積もる話しもできないだろう。その日だけは、他の者をつけさせるよ。」
シルビオに会える。大好きな花に触れられる。
ずっと張り詰めていたリオの顔が綻ぶ。
ラグアルの本心で言えば、リオを外に出すのも、他の者にあわせるのも、好ましくない。
だが、たった1日だ。
リオのためにも、そこは耐えようと思う。
「ラグアル様、ありがとうございます。その日が、とても楽しみです!」
その日はきっと、久しぶりに楽しい1日になる。
リオの心は浮き足だっていた。
リオはここまで本当によくやっていた。
公爵も夫人も、誰もリオを休ませたいと言うラグアルの言葉に反対する者はいない。
「リオ、無理をさせてすまない。ゆっくり休むといい。」
リオは、青白い顔をしたまま寝台の上で眠っている。
「リオ、少し出かけて来るよ。すぐに戻るからね。」
リオは、眠ったままだ。
ラグアルは、リオが働いていたと言う花屋へ足を運んだ。
ラグアルと出会うまでリオがどのように過ごしていたのか、その過去については、公爵が全て調べ上げている。
その内容はラグアルにも報告されていたが、ラグアルはシルビオという男の事が気に掛かっていた。
報告では2人の間には何もないとあったが、ある日突然リオが教会を去り、その男の所へ向かったという、その1点に引っかかるものがあった。
ラグアルは自分で直接確認しておきたいと、ずっと考えていた。
花屋へ到着すると、日に焼けた背の高い男と、小柄でふんわりとした雰囲気の漂う女がラグアルを出迎えた。
緊張する男を女が上手く促す。案外しっかりとした女だった。
「それで、その、リオ、様、はお元気でしょうか?」
その様子からは、本気でリオを案ずる様子が感じられる。
「ああ、とても元気だよ。」
「そうですか。本当によかったです。まさか、運命の番が公爵家の方だったなんて。」
なあ、と隣りの女に同意を促すその姿は、女に心底惚れている、そんな様子だ。
勘違いだったのだろうか。
リオが教会を去る時、何かあったのかと、この男が関わっていたのではないかと疑っていたが、どうやら邪推だったようだ。
もし何かあったと判断すれば、ラグアルはこの男を排除するつもりでいた。
ユアンを囲み込んでいた時と同じように。
「リオ、リオ様は、その、ずっと弟のようなもので、ですから、わたしのようなものがこんなことを言うのはおこがましいのですが、リオを、お願いします。」
深々と頭を下げる男に、ラグアルはこの男は大丈夫だと、判断した。
「ああ、大丈夫だよ。そのうちリオを寄越してもいいだろうか?その際は、できれば貸し切りにしてほしい。1日の売り上げ分は、こちらが全て支払いをする。
少し、気分転換をさせてやりたい。」
「は、はい。わたしもお会いしたいです。」
いいだろう?と隣の女に確認をとると、女も、ふんわりと受け入れた。
「そう言えば、リオはここの2階で暮らしていたそうだが、その部屋を見せてもらうことは可能だろうか?」
「あっ、その、申し訳ございません。今は別の者に貸しておりまして…。」
「ああ、そうか。残念だが、仕方ない。」
リオがどのような暮らしをしていたのか、少しでも垣間見れればと思っていたが、他人の部屋を見るつもりはない。
日程については、今後連絡を取り合う約束を交わし、ラグアルは花屋を後にした。
リオは、おそらく大分疲弊していた。
大好きな花や草木にも、長い間触れていない。
陛下への謁見は上手くできたのだろうか。
あの方なら、きっと、もっと上手くできていただろう。
リオは、いつからか、たった一度しか会ったことのないユアンと自分とを比較してしまうようになっていた。
何をどう頑張っても、自分はあの方のようには、きっとできていない。
できる気がしない。
「リオ、起きていたのかい?」
どれくらい眠ってしまっていたのか、慌てて起きあがろうとすると、ラグアルがやんわりと、それを制止した。
「いいんだよ。しばらく、ゆっくり休むといい。」
「でも、まだ覚えなきゃいけないことが、たくさんあるから…」
「少し休もう。リオはよくやっていたから、少しぐらい大丈夫だ。」
「でも…」
リオは不安だ。あの方のように、ラグアルに相応しい存在となるためには、もっともっと、学ばねばならない事がたくさんある。
時間はないのだ。
「リオ、少し休んで落ち着いたら、あの花屋へ行っておいで。」
「……………え?」
「ずっとここに閉じ込めてしまっていたからね。了承は得てきたよ。シルビオ君と久しぶりに会って話しをしておいで。」
「でも、そんな、いいんですか?」
「ああ、わたしがいると積もる話しもできないだろう。その日だけは、他の者をつけさせるよ。」
シルビオに会える。大好きな花に触れられる。
ずっと張り詰めていたリオの顔が綻ぶ。
ラグアルの本心で言えば、リオを外に出すのも、他の者にあわせるのも、好ましくない。
だが、たった1日だ。
リオのためにも、そこは耐えようと思う。
「ラグアル様、ありがとうございます。その日が、とても楽しみです!」
その日はきっと、久しぶりに楽しい1日になる。
リオの心は浮き足だっていた。
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