運命と運命の人

なこ

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第7章

3

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何もすることがなく、リオは部屋で1人、暇を持て余していた。

体調は回復したものの、ラグアルからはまだ休んでいるようにと言われている。

ごろごろと寝転びながら、早くが来ないかと、考えるのはそのことばかりだ。

そろそろお茶の時間だ。

お茶の淹れ方や、その種類など、リオは少しずつ学んでいた。

………ラグアル様に、お出ししてみようか。

驚くかもしれない。喜んでくれるかな。



たくさんの茶葉や、カップが並んだその部屋の中では、使用人2人が準備をしている真っ最中だった。

少し開いた扉の向こうに、その様子が窺える。

「……私ほんとはね、ユアン様にお仕えするの楽しみにしてたの。」

「ああ、私もよ。ほんと、見ているだけで絵になる2人だったわよねえ。」

リオの胸がドクンと高鳴る。

「ラグアル様がお気に入りのこの茶葉も、ユアン様がご用意したものでしょう。」

「そうそう。それに、ラグアル様はユアン様が淹れたお茶じゃないと、美味しいって言ってくれなかったじゃない。」

「ユアン様、ほんとうにお上手だったものねえ。あの手つきを見ているだけで、うっとりしちゃうもの。」

「あっ!」

リオはびくりと震えると、急いでその場を立ち去った。

「なに!どうしたの?急にびっくりするじゃない。」

「ユアン様がご用意してた茶葉、もう少しでなくなりそう。予備もなくなっちゃったわ。どうしよう。」

「奥さまに相談しましょう。」

「そうね。でもさ、私、リオ様のことも応援してるの。」

「あんなに、心配してたのに?」

「ラグアル様に運命の番が現れたんだから、最初は喜んだわよ。でも、あの頃のリオ様を見てたら、ほんとにやっていけるのかなって。」

「確かに、そうよね。」

「でも、あんなに可愛らしくなって、毎日すごく一生懸命な姿を見てると、応援したくなるじゃない。」

「私もそう思うわ。2人にはお幸せになって欲しい。」

「運命の番だもの。きっとお幸せになるわ。」

「………ユアン様も、幸せになって欲しいわね。」

「ええ。今ごろ、どうしていらっしゃるのかしら………。」



ドクンドクンと高なる胸を押さえながら、リオは気づくとラグアルが仕事をする部屋の前まで来ていた。

胸が苦しい。

ラグアルに会えば、きっと落ち着く。

大丈夫。大丈夫。

だって、俺は、ラグアル様の運命の番だ。

部屋の中からは、ラグアルの声が微かに聞こえてくる。

「‥‥‥‥‥‥‥ああ、それは、ユアンに…」


ドクン。


リオは部屋へと引き返し、寝台の上に蹲った。


苦しい。苦しい。苦しい。


……きっと、さっきのは聞き間違いだ。

ラグアル様は、俺を選んでくれた。

だって、運命の番だ。

じゃあ、なんで運命の番じゃないのに、はラグアル様に求められていたんだろう。

早く、シルビオに会いたい。

シルビオと2人、毎日花に囲まれ、笑い合って過ごしていたあの頃が、きっと1番楽しかった。

今まで、こんなに苦しい思いをしたことはない。
 
早くその日が来て欲しい。早く。早く。



リオの体調が落ち着きをみせ、ラグアルも安堵して仕事に取り組んでいた。

それほどあの男に会いたいのか、あの花屋に行きたいのか、ラグアルから言い出したことではあるが、リオの見たこともないような喜ぶ姿に、ラグアルは少しだけ苛ついていた。

ああ、そうだ、こんな時はいつも、ユアンがそっと茶を淹れてくれた。


……ラグアル様、こちらをどうぞ。少しお休みくださいませ。

にっこりと微笑んで渡されるそれは、いつもラグアルの心を落ち着かせてくれた。

茶そのものより、ユアンの姿に癒されていた。


「ラグアル様、こちらは、いかがいたしましょう。」

渡された書類をみて、ラグアルは無意識に言葉を紡いだ。

「……ああ、それは、ユアンにやってもらおう。ユアンは?」

書類を手渡した従者が固まる。

ラグアルは自分の言ったことに驚きを隠せない。

「………ああ、いい、それは、わたしがしよう。」

従者はすぐに席を外した。

「…わたしは、一体、何を言っているんだ…」

ラグアルはそのまま暫くの間、呆然とその場から動くことができなかった。











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