運命と運命の人

なこ

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第7章

5

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店は貸し切りにと言われていたので、従者に咎められるかもしれない。

その時はその時ね、とシルビオの妻は店を開いた。

お休みですか?と、訪ねてきた2人を迎え入れようとしても、従者は咎めて来ない。

まあ、この2人なら、しょうがないわよねえ、と思う。

1人は薄桃色のくりくりとした瞳が愛らしく、なぜか黒の騎士服を纏っている。

もう1人は………妖精ね。

見上げる翡翠の瞳に、吸い込まれてしまいそうだわ。

従者たちが目を見開き、固まってしまうのもしょうがない。

咎められることもないし、リオに害を与えるような子たちではないだろうと、彼女はそのまま2人を店の中へと迎え入れた。



シルビオは、リオの背中越しから、2人の人物が店に入ってくる様子を見ていた。

何やら、きゃきゃと、楽しそうだ。

たくさんの花に囲まれ、嬉しそうに微笑み合う2人を見て、シルビオは思った。

とうとう、この店には、妖精がきてしまった………



リオだけが、呆然とそこに立ちすくんでいる。


あの時の憔悴した様子とは違う。

乳白色の質のいい上着は膝下まで長く、黒と金の繊細な刺繍が所々に施され、ユアンが動くたび、ひらひらと裾が揺れ、美しい。

何より、それを身に纏う本人が、美しい。

見目の美しさもさることながら、少しの動きさえも楚々とし、見る者の目を惹きつけて離さない。

ふふふと、微笑むその姿に、あの時の言葉が耳をよぎる。



「……ああ、それは、に…」



聞き間違いなんかじゃない。

ラグアル様は、確かに、と、そう言ったじゃないか。



シルビオと妻が、その異変に気がつく。



「リオ?」「リオさん?」



その声に、ユアンが振り向く。



その場に佇むリオを、ユアンは不思議そうに見つめている。

「ユアン様、知り合い?」

ユアンは、首を傾げ、少し考え込む様子で、リオを見つめている。



ドクン。


ドクン。


ドクン。


「……‥…………あっ。」


だめだ。何をしても、だめなんだ。


この方に、俺が、敵うわけ、ないじゃ、ないか………………


リオは、扉に向かって走り出した。



だめだ。だめだ。だめなんだ………



______どんっ、とリオへと衝撃が伝わる。



「おいっ、大丈夫か?」

その衝撃に目を瞑り、倒れそうになるリオを逞しい腕が抱き留める。

目を開いて見上げたリオは、息を呑んだ。



あの時、王宮で見た、あの………!

なぜ、ここに?なぜ…‥…?

リオを見つめるその漆黒の瞳に、あの時と同じ、威嚇するような何かを感じ、リオは震えた。



「なぜ、ここにお前がいるんだ。まさか、あの男も……」

リオは震えて、声も出ない。


は、は、はっ、はっ、はっ、は、、


息が、苦しい。


「おい、大丈夫か?しっかりしろ!」

威嚇するような何かがなくなり、リオはその腕の中で、はふ、はふと、動くこともできない。

「く、くるし、、、は、はっ、」

「落ち着け。息を吸って、ゆっくり吐け。ゆっくりだ。」

「はっ、は、はっ、くるし」

「大丈夫だ。息を吸って、ゆっくり、そう、ゆっくり、吐くんだ。」

ふう、ふう、と呼吸を整える間、リオは夢中でその腕にしがみついた。

周囲は驚きのあまり声を出すこともできず、ただその状況を見守ることしかできない。

「はっ、は、は……ふぅーーーふぅーーーーーー」

「ああ、それでいい。」

「………ふーーーはっ、あ、ふぅーーーー」

どれくらいの間そうしていたのか、しがみつくリオの手がゆっくりと緩んでいく。

それでもまだ、震えはとまらない。

「少し、落ち着いたか?」

こくり、こくりと、リオが頷く。



その状況を呆然と見ていた従者たちが、慌てて2人の元へとやってきた。

「も、申し訳ございません!リオ様が、このような!」

「どうか、お赦しを。申し訳ございません!」

男に向かい、2人は、平身低頭で必死に謝り続ける。

「かまわん。気にするな。公爵家の者だろう。早く連れて帰った方がいい。」

従者は深々と何度も礼をすると、リオを抱え店を去って行った。



店の中からは、叫び声が聞こえる。



「いやっ、いやだ!とらないで!とらないでっ!」


………ユアン、さま?


ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


リオは震えながら耳を塞ぐと、何に対してなのか、ずっと、ずっと、心の中で謝り続けていた。

























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