運命と運命の人

なこ

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第7章

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王宮を歩く2人に、周囲の人々は目を見張った。

正装に身を包む王弟は猛々しく、正に王族の風格を醸し出している。対照的に、その少し後ろを歩く人物の楚々とした美しさは、より一層際立つ。

なぜ、あの2人が………………

誰しもがそう思った。

王宮で働く貴族たち、騎士、使用人、誰しもが。

なぜ、ユアン様が………………

カイゼルの歩みはいつもよりゆったりとしたものだ。

肩越しから気遣うような視線をユアンへと向けると、ユアンもそれに気付いて、少し微笑む。

控えることすら忘れてしまった人々の様子など気にする素振りもみせず、2人は王の間へと消えていった。

幻でも見ていたのだろうか、やはり誰しもがそう思った。




王も王配も、2人の婚姻を祝福し、書簡にあったように、異を唱えることはなかった。

「一つ、いいか。」

王の言葉にカイゼルが反応する。

「何か、ございますか?」

「婚姻は認める。だが、しかし、まだ待て。」

「待て、とは?」

それまで穏やかだった王の間に、ひりつくような緊張が走る。

ユアンは隣にいるカイゼルを不安気に見上げている。

「このような美しい者の花嫁姿を見たいではないか。暖かい時期に婚姻の儀を取り行えばよい。これからは、寒くなる一方だからな。」

「………早く娶れと、そう言ったことをお忘れで?」

王はふっと笑うと、カイゼルを見据えた。

「それでは問うが、なぜお前はそのように急ぐのだ?」

「………………………………。」

見据える王の目を、カイゼルは鋭い瞳でとらえたまま、何も言うことができない。

「そなたも、良いか?」

ユアンは王に逆らうことなどできない。

「……………は、い。かしこまりました。」

「何もお前たちを引き離そうとしている訳ではない。すでに共に暮らしているではないか。ただ、少し待てと、そう言っているだけだ。婚約期間だと思えばいいではないか。」

カイゼルもユアンも何も言う事ができず、王の言葉にただ平伏するだけだった。




その後、カイゼルはいつものように王の私室へと呼び出された。

王を目前にして、カイゼルの機嫌はすこぶる悪い。

「どういうことでしょうか。すぐ娶ると、そうお伝えしていた筈ですが?」

「なぜ急ぐと、先程も言ったではないか。」

「それは………………。」

「それほど、あの子が欲しいか?」

「……………………‥…………。」

「欲しいものを手に入れて、その後はどうする?お前はそれで満足か?あの子も同じように満足すると、そう思うか?」

カイゼルは何も答えることができない。

「わたしはな、お前を唯一の家族だと思い、見守ってきたつもりだ。
 お前もそろそろいいはずだ。だから婚約期間をおけと、そう言っている。」

カイゼルは王が何を言わんとしているのか、理解できない。

「何を、と……」

「それに気が付かなければ、お前はあの子を幸せにしてやることはできん。」

王は、一体何を言っているのか。

「わたしはな、お前にも幸せになって欲しいのだ。カイゼル、いいな。何と思われてもよい。これは王命だ。」

王の言葉は絶対だ。

カイゼルは、ただそれに従わざるを得ない。



王都から帰れば、すぐにカイゼルの妻になれると思い込んでいたユアンは、王からの言葉に動揺していた。

自分ではカイゼルの妻に相応しくないと思われてしまったのだろうか。

このままカイゼルが戻って来なかったらどうしよう。

1人控え室で待ち続けるユアンに、例えようもない不安が襲いかかる。

どれくらいの時間そうしていたのか、扉を叩く音と共に、カイゼルがユアンの元へと戻って来た。

「…カイゼルさまっ!」

ユアンはすぐにカイゼルの元へと走り寄った。

カイゼルの表情は優れない。

「ユアン、お前は…………。」

わたしといては、幸せになることができないのか?

カイゼルは、王の言うことが分からない。

しかし、王は分かれと言う。分からなければ、ユアンは幸せにはなれないと。

不思議そうに見上げるユアンを、カイゼルは欲しいのだ。

それの何がいけないのか。

「………王が、お前にも話しがあると、お前を呼んでいる。」

「わたし、1人で、ですか?」

「ああ、大丈夫か?」

「………………………………はい。」

不安気なユアンをカイゼルはきつく抱きしめる。

「大丈夫だ。何も心配しなくていい。」

自分に言い聞かせるように、カイゼルは呟く。

「……………では、行って参ります。」

カイゼルの姿に後ろ髪を引かれる思いで、ユアンは控え室を出た。

そして、何が起こっているのか全く分からない不安に襲われながら、王が待つという、その部屋へと1人足を踏み出した。



















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