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第10章
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ラグアルは数人の従者を連れ、辺境へと急いだ。
リオ、無事でいてくれ。
お願いだから、無事で…
シルビオから話されたことが、さらにラグアルの不安を掻き立てる。
エドという男の話しだ。
もしリオが一緒にいるとしたら……
リオがいたときのままだと言う部屋の様子を聞き、ラグアルもぞっとしたのだ。
たった1日リオがいないだけで、ラグアルの心の中は、ぽっかりとした空洞のように心許ない。リオがいることを当たり前に思い過ぎていた。
リオがいなければ、この空洞を埋めることはできない。
リオの過去を思うと、子のことも安易に喜び過ぎたのかもしれない。
すまない、リオ。
どうか、無事でいてくれ。
ユアンの元へ無事に着いてくれさえすれば、ユアンはきっと悪いようにはしないはずだ。
リオ、今どこにいる?
リオ、一体何を考えているんだ?
最近のリオ、お前はまるで……
ユアンに、なろうとしていた。
どうしたら、リオだけだと分かってくれるのだろう。
お前はそれ程までに、追い詰められていたのか。
お前を、追い詰めたのは、わたしか…
リオ、お前さえ無事でいてくれれば、もうそれでいいんだ…
リオ、リオ、リオ………
ユアンは今日も仕事をしながら、そわそわと外を気にしている。
昨日真っ白に辺境を覆った雪が、今日は所々艶々と固まり、てかてかと光っている。
「ユアン、今日は無理だぞ。こんな状態のときに外に出たら、すぐに滑って転んでしまう。」
「滑る…?滑るとは、どんな感じですか?」
転んだことのないユアンが、滑ったことがないのも当然だろう。
ユアンは興味深々だ。
「はあ、仕方ないな。いっ時だけだ。わたしも行く。これが片付いたらな。」
「わあ、ありがとうございます。準備してきてもいいですか?」
「ああ、帽子もな。」
「はいっ。」
いそいそと準備に向かうユアンを見て、カイゼルは微笑んだ。
「わあ、つやつやですね。」
凍った雪はつやつやとして、とても固い。
「転ばないように気をつけろ。特に、バルコニーの下あたりは、日陰になっていて滑りやすい。」
「はい。あっ」
すとんと滑ると、ユアンは尻餅をついた。
「ほらな。だから言っただろう。」
「ふふふ。滑りました。」
嬉しそうなユアンに、カイゼルは呆れ顔だ。
「ほら、立てるか?」
尻餅をついたままのユアンへと、手を差し伸べる。
「少し、お尻が痛い…かも?」
俯きながらぼそっと呟くユアンのうなじは、降り積もった雪のように真っ白だ。
伸びてきた薄金色の髪の合間から白いうなじが、見え隠れしている。
カイゼルはユアンを立ち上がらせながら、吸い寄せられるように、そのうなじへと口を寄せた。
「えっ…カイゼル、さま?」
驚くユアンを他所に、そのまま軽く甘噛みする。
「!」
初めてのその感触に、ユアンはびくっと身体を震わせた。
「…つい、な。お前のうなじは、綺麗だ。」
ユアンは真っ赤になって、震えている。
「このうなじに噛み跡を残すのは、気が引けるな…。」
「……そんなこと、あの、いつでも、ぼくは、大丈夫ですから…。」
「噛んだら、大変なことになるぞ。」
「大変な……こと?」
見上げるユアンに、カイゼルは意味深に、にやりと笑ってみせた。
なんとなく、その意味を理解し、ユアンはさらに顔を赤くした。
部屋に戻ろうとする二人に、遠くから邸へと向かう一行が見える。
恐ろしい速さで、こちらに向かっている。
「今日は誰も、訪れる予定はない筈だが…。」
カイゼルは険しい顔でその一行に目をやる。
ユアンは不安そうに、カイゼルに寄り添う。
次第に門へと近づいてくるその姿に、ユアンは思わず呟いた。
「……ラグアル、様?」
「なぜあの男がここに?ユアン、部屋へ戻れ。」
「でも……。」
「あの男にお前を会わす訳にはいかない。」
「……カイゼル様…」
「ユアン、すぐに部屋に戻れ。わたしが戻るまで、部屋から出るな。頼むから、部屋にいてくれ。」
カイゼルの顔は、今まで見たことのないような厳しい表情だ。
「…はい。わかりました。」
何が起ころうとしているのか。
なぜラグアルがここへやってきたのか。
後ろ髪を引かれる思いで、ユアンは一人部屋へと戻って行った。
リオ、無事でいてくれ。
お願いだから、無事で…
シルビオから話されたことが、さらにラグアルの不安を掻き立てる。
エドという男の話しだ。
もしリオが一緒にいるとしたら……
リオがいたときのままだと言う部屋の様子を聞き、ラグアルもぞっとしたのだ。
たった1日リオがいないだけで、ラグアルの心の中は、ぽっかりとした空洞のように心許ない。リオがいることを当たり前に思い過ぎていた。
リオがいなければ、この空洞を埋めることはできない。
リオの過去を思うと、子のことも安易に喜び過ぎたのかもしれない。
すまない、リオ。
どうか、無事でいてくれ。
ユアンの元へ無事に着いてくれさえすれば、ユアンはきっと悪いようにはしないはずだ。
リオ、今どこにいる?
リオ、一体何を考えているんだ?
最近のリオ、お前はまるで……
ユアンに、なろうとしていた。
どうしたら、リオだけだと分かってくれるのだろう。
お前はそれ程までに、追い詰められていたのか。
お前を、追い詰めたのは、わたしか…
リオ、お前さえ無事でいてくれれば、もうそれでいいんだ…
リオ、リオ、リオ………
ユアンは今日も仕事をしながら、そわそわと外を気にしている。
昨日真っ白に辺境を覆った雪が、今日は所々艶々と固まり、てかてかと光っている。
「ユアン、今日は無理だぞ。こんな状態のときに外に出たら、すぐに滑って転んでしまう。」
「滑る…?滑るとは、どんな感じですか?」
転んだことのないユアンが、滑ったことがないのも当然だろう。
ユアンは興味深々だ。
「はあ、仕方ないな。いっ時だけだ。わたしも行く。これが片付いたらな。」
「わあ、ありがとうございます。準備してきてもいいですか?」
「ああ、帽子もな。」
「はいっ。」
いそいそと準備に向かうユアンを見て、カイゼルは微笑んだ。
「わあ、つやつやですね。」
凍った雪はつやつやとして、とても固い。
「転ばないように気をつけろ。特に、バルコニーの下あたりは、日陰になっていて滑りやすい。」
「はい。あっ」
すとんと滑ると、ユアンは尻餅をついた。
「ほらな。だから言っただろう。」
「ふふふ。滑りました。」
嬉しそうなユアンに、カイゼルは呆れ顔だ。
「ほら、立てるか?」
尻餅をついたままのユアンへと、手を差し伸べる。
「少し、お尻が痛い…かも?」
俯きながらぼそっと呟くユアンのうなじは、降り積もった雪のように真っ白だ。
伸びてきた薄金色の髪の合間から白いうなじが、見え隠れしている。
カイゼルはユアンを立ち上がらせながら、吸い寄せられるように、そのうなじへと口を寄せた。
「えっ…カイゼル、さま?」
驚くユアンを他所に、そのまま軽く甘噛みする。
「!」
初めてのその感触に、ユアンはびくっと身体を震わせた。
「…つい、な。お前のうなじは、綺麗だ。」
ユアンは真っ赤になって、震えている。
「このうなじに噛み跡を残すのは、気が引けるな…。」
「……そんなこと、あの、いつでも、ぼくは、大丈夫ですから…。」
「噛んだら、大変なことになるぞ。」
「大変な……こと?」
見上げるユアンに、カイゼルは意味深に、にやりと笑ってみせた。
なんとなく、その意味を理解し、ユアンはさらに顔を赤くした。
部屋に戻ろうとする二人に、遠くから邸へと向かう一行が見える。
恐ろしい速さで、こちらに向かっている。
「今日は誰も、訪れる予定はない筈だが…。」
カイゼルは険しい顔でその一行に目をやる。
ユアンは不安そうに、カイゼルに寄り添う。
次第に門へと近づいてくるその姿に、ユアンは思わず呟いた。
「……ラグアル、様?」
「なぜあの男がここに?ユアン、部屋へ戻れ。」
「でも……。」
「あの男にお前を会わす訳にはいかない。」
「……カイゼル様…」
「ユアン、すぐに部屋に戻れ。わたしが戻るまで、部屋から出るな。頼むから、部屋にいてくれ。」
カイゼルの顔は、今まで見たことのないような厳しい表情だ。
「…はい。わかりました。」
何が起ころうとしているのか。
なぜラグアルがここへやってきたのか。
後ろ髪を引かれる思いで、ユアンは一人部屋へと戻って行った。
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