運命と運命の人

なこ

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第10章

8

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ラグアルは数人の従者を連れ、辺境へと急いだ。

リオ、無事でいてくれ。

お願いだから、無事で…

シルビオから話されたことが、さらにラグアルの不安を掻き立てる。

エドという男の話しだ。

もしリオが一緒にいるとしたら……

リオがいたときのままだと言う部屋の様子を聞き、ラグアルもぞっとしたのだ。

たった1日リオがいないだけで、ラグアルの心の中は、ぽっかりとした空洞のように心許ない。リオがいることを当たり前に思い過ぎていた。

リオがいなければ、この空洞を埋めることはできない。

リオの過去を思うと、子のことも安易に喜び過ぎたのかもしれない。

すまない、リオ。

どうか、無事でいてくれ。

ユアンの元へ無事に着いてくれさえすれば、ユアンはきっと悪いようにはしないはずだ。

リオ、今どこにいる?

リオ、一体何を考えているんだ?

最近のリオ、お前はまるで……

ユアンに、なろうとしていた。

どうしたら、リオだけだと分かってくれるのだろう。

お前はそれ程までに、追い詰められていたのか。

お前を、追い詰めたのは、わたしか…

リオ、お前さえ無事でいてくれれば、もうそれでいいんだ…

リオ、リオ、リオ………





ユアンは今日も仕事をしながら、そわそわと外を気にしている。

昨日真っ白に辺境を覆った雪が、今日は所々艶々と固まり、てかてかと光っている。

「ユアン、今日は無理だぞ。こんな状態のときに外に出たら、すぐに滑って転んでしまう。」

「滑る…?滑るとは、どんな感じですか?」

転んだことのないユアンが、滑ったことがないのも当然だろう。

ユアンは興味深々だ。

「はあ、仕方ないな。いっ時だけだ。わたしも行く。これが片付いたらな。」

「わあ、ありがとうございます。準備してきてもいいですか?」

「ああ、帽子もな。」

「はいっ。」

いそいそと準備に向かうユアンを見て、カイゼルは微笑んだ。

「わあ、つやつやですね。」

凍った雪はつやつやとして、とても固い。

「転ばないように気をつけろ。特に、バルコニーの下あたりは、日陰になっていて滑りやすい。」

「はい。あっ」

すとんと滑ると、ユアンは尻餅をついた。

「ほらな。だから言っただろう。」

「ふふふ。滑りました。」

嬉しそうなユアンに、カイゼルは呆れ顔だ。

「ほら、立てるか?」

尻餅をついたままのユアンへと、手を差し伸べる。

「少し、お尻が痛い…かも?」

俯きながらぼそっと呟くユアンのうなじは、降り積もった雪のように真っ白だ。

伸びてきた薄金色の髪の合間から白いうなじが、見え隠れしている。

カイゼルはユアンを立ち上がらせながら、吸い寄せられるように、そのうなじへと口を寄せた。

「えっ…カイゼル、さま?」

驚くユアンを他所に、そのまま軽く甘噛みする。

「!」

初めてのその感触に、ユアンはびくっと身体を震わせた。

「…つい、な。お前のうなじは、綺麗だ。」

ユアンは真っ赤になって、震えている。

「このうなじに噛み跡を残すのは、気が引けるな…。」

「……そんなこと、あの、いつでも、ぼくは、大丈夫ですから…。」

「噛んだら、大変なことになるぞ。」

「大変な……こと?」

見上げるユアンに、カイゼルは意味深に、にやりと笑ってみせた。

なんとなく、その意味を理解し、ユアンはさらに顔を赤くした。

部屋に戻ろうとする二人に、遠くから邸へと向かう一行が見える。

恐ろしい速さで、こちらに向かっている。

「今日は誰も、訪れる予定はない筈だが…。」

カイゼルは険しい顔でその一行に目をやる。

ユアンは不安そうに、カイゼルに寄り添う。

次第に門へと近づいてくるその姿に、ユアンは思わず呟いた。

「……ラグアル、様?」

「なぜあの男がここに?ユアン、部屋へ戻れ。」

「でも……。」

「あの男にお前を会わす訳にはいかない。」

「……カイゼル様…」

「ユアン、すぐに部屋に戻れ。わたしが戻るまで、部屋から出るな。頼むから、部屋にいてくれ。」

カイゼルの顔は、今まで見たことのないような厳しい表情だ。

「…はい。わかりました。」

何が起ころうとしているのか。

なぜラグアルがここへやってきたのか。

後ろ髪を引かれる思いで、ユアンは一人部屋へと戻って行った。





















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