前世は婚約者を奪った悪役令嬢でした

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それに対して彼女は答えた。「それはですね、あなたが気絶してしまったからです。それで、仕方なくここまで運んできたんですよ」そう言うと私の手を取り握り締めてきたのでドキッとしたが同時に安心感を覚えたのも事実だった。何故なら、彼女が手を握ってくれている限りは絶対に大丈夫だという確信があったからだ。
そんなことを考えているうちにいつの間にか黙り込んでしまっていたようで心配した様子で声をかけられたことで我に返った私は慌てて謝ると話題を変えることにした。「そういえば、他のみんなはどうしているんでしょうか？」
その問いに彼女は答えた。「皆さんなら無事ですよ。今頃、宿で休んでいるかと思いますけど、会いに行きますか？」
その提案に対して私は少し迷った後で首を横に振った後で言った。「いえ、やめておきます。今は一人でいたい気分なので……」それを聞いた彼女は頷くと立ち上がると部屋を出て行こうとしたが途中で立ち止まると振り返って言った。「わかりました。では、何かあったら呼んでくださいね？」
それに対して私はお礼を述べると彼女を見送ることにした。扉が閉まる音を聞きながら私は考えていた。
（さて、これからどうしようかな……とりあえず、今日はこのままゆっくり休むことにしようかな……）
そう思いながら目を閉じた後で眠りについたのだった……
翌日、目が覚めると窓の外はすっかり暗くなっていたが、部屋の中はまだ明かりが灯されていなかったため薄暗くなっていた。そんな中で起き上がると大きく伸びをしてから立ち上がった後で部屋を出ることにした。廊下に出ると人の気配はなく静まり返っていたが、奥の方からは何やら話し声が聞こえてくるような気がしたので行ってみることにした。近づいていくにつれてその声は大きくなりやがて一つの部屋から聞こえていることがわかったので覗いてみるとそこには勇者様とマリアさんが居たので声をかけることにした。「こんばんは、お二人共こんなところで何をされているのですか？」
その声に気付いた二人はこちらを見ると驚いた表情を浮かべた後で言った。「ああ、君か！久しぶりだね、元気にしてたかい？」「ええ、おかげさまで楽しく過ごさせていただいておりますわ」二人の言葉に笑顔で答えていると続けて質問されたのでそれに答えた後で気になっていたことを聞いてみた。「ところで、こんな夜更けに二人で何をしていらしたのですか？」
それに対して彼らは顔を見合わせると照れ臭そうにしながらも教えてくれた。その内容を聞いているうちに私も恥ずかしくなってしまったが同時に嬉しさが込み上げてきて自然と笑みがこぼれてしまった。そんな私を不思議そうに見ていた彼らだったが、しばらくすると帰る時間になったらしく別れを告げることになった。その際に見送りに来た私にマリアさんが近づいてきて耳元で囁いた。「また今度、可愛がってあげますからね♡」その言葉にゾクゾクしたものを感じながらも平静を装って返事をすると手を振って見送った後で部屋に戻っていった。それからしばらくは幸せな気分に浸っていたのだが、ふと我に返ると寂しさに襲われたため急いでベッドに入ると頭から布団を被って丸くなった後で眠りにつくことにした。明日はきっといいことがあるに違いないと思いながら目を閉じると程なくして眠りに落ちていった……