上 下
26 / 34

26

しおりを挟む
そんなことがあってからも特に変わったことはなく普段通りの日常が続いていたある日のこと、事件は起こった。その日、私は日直だったので放課後になってから教室に残っていたのだがその時に忘れ物をしたことを思い出して取りに戻ったのだがその途中であるものを目撃してしまったのだ。それは私の机の中を漁っている彼の姿だった。何をしているのだろうと思って見ていると中から何かを取り出してポケットに仕舞うのが見えた。それを見て確信した私は気づかれないように背後から近づくと声をかけた。「何をしてるんですか?」その声に驚いた様子で振り返った彼は私の顔を見るなり狼狽した様子を見せたのでますます怪しいと感じた私は彼を問い詰めることにした。
「今、私の机の中から何を取り出したんですか?」
そう尋ねると彼は視線を泳がせていたので更に詰め寄ると観念したのか渋々といった様子でポケットから取り出した物を差し出してきた。それは手紙のようだったが宛名の部分には私の名前が書かれていた。それを見た瞬間に嫌な予感がしたので恐る恐る中身を確認すると案の定ラブレターのようなものだった。しかも差出人は隣のクラスの女子生徒で何度か話したことのある相手であったため余計にショックが大きくなってしまった。呆然としていると彼が話しかけてきた。「ごめん、実は君のことが好きでどうしても気持ちを抑えられなかったんだ」
申し訳なさそうに頭を下げる姿を見ているうちに段々と怒りが込み上げてきた私はつい声を荒げてしまった。「最低ですね!人の物を盗んでおいて何が気持ちが抑えられないですか!」そう怒鳴りつけるとその場から走り去った。泣きながら家路についた私はそのまま部屋に引きこもってしまったため夕食にも姿を見せなかったため心配した両親が様子を見に来た時には泣き疲れて眠っていたのだった。
翌日、登校してきた私に声をかけてきた者がいた。それは例の彼女だったが無視を決め込むことにした。すると腕を掴まれてしまったので振り払うと睨みつけた。だが怯むことなく話しかけてきたので仕方なく話を聞くことにした。「昨日、何があったの?」
そう聞かれて一瞬躊躇ったが隠す必要もないと判断して全てを話すことにしたのだ。話を聞いた彼女は難しい顔をしていたがやがて意を決したように顔を上げるとこう言ってきた。
「だったらいっそのこと付き合っちゃえば良いんじゃない?」
あまりにも突拍子のない提案だったため呆気に取られてしまったがすぐに正気に戻ると反論しようとしたところで遮られてしまった。「でも他に好きな人がいるわけじゃないんでしょ?だったら試しに付き合ってみてもいいんじゃない?」
確かにその通りなのだがそう簡単に割り切れるものでもないだろうと考えていたら再び声をかけられた。「大丈夫だって、きっと上手くいくよ」
そう言って励まされたことで少しだけ気が楽になったような気がしたので覚悟を決めることにした。

***
それから数日後、私たちは付き合うことになった。とは言っても以前と変わらず学校では他人として接していたし、登下校の時も一緒に帰ることはなかった。ただ、一度だけ休日に出かけたことがあったがそれ以外は何もなかった。それでも最初のうちは楽しかったように思う。一緒に映画を見たりカフェ巡りをしたりして楽しい時間を過ごすことができたからだ。だがそれも長くは続かなかった。というのも私自身が飽きっぽい性格だったからだ。最初はドキドキしながら過ごしていたのだが次第に慣れてしまったことで新鮮味を感じなくなってしまったことでつまらなくなってしまったのである。そしてとうとう我慢できなくなった私は別れを切り出すことにした。いつものように待ち合わせをした場所で待っていると彼がやってきたので意を決して話しかけた。「あの、お話があるんですけどいいですか?」そう言うと不思議そうな顔をしていたので思い切って告白することに決めた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:1,633

裂罅

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:28

‪白狼の虜囚―愛檻の神隠し―

BL / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:276

副団長は次期公爵~幼き婚約者との10年

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:465

闇鍋(小話集)

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:226

私が猫又族のお姫様!?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:189

処理中です...