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EP3 復讐の黄金比4 秘されたモノ
ちょっと気まずい朝
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「くぁ……ぁふ」
朝七時。
夏輝は早めに来るだろうという事でこの時間にはちゃんと目覚ましをセットして起きた俺。偉い。
リビングに出るとぴんぴん元気な俺とは対照的にアレウとロセはとにかく眠そうに目を擦っていた。
「お前ら元気ないなあ」
「だってぇ、朝だもの……。早起きの吸血鬼と淫魔ってどう思う?」
そうは言いつつもロセは朝食を慣れた手つきで用意してくれる。
温かい淹れたての紅茶とパン。
スコーンってやつだっけ?八潮のカフェにもあったやつ。
用意されたたっぷりのジャムとバターをつけて食べる。
(うま……何これうま)
俺は昨日の夜の事も忘れて尻尾を振りながら次々に口の中に放り込み、咀嚼する。
口の中が結構パサパサするからミルクティーがよくあうのだ。
「うーん、キャラ違う……って感じ」
「でしょ?」
言われてみれば確かになわけで。
早寝早起きが基本の吸血鬼と淫魔は流石にらしくはない。
俺の言葉にアレウはまた一つ大あくびをした。
ところで玄関のチャイムが鳴る。
「夏輝……!」
なった瞬間俺の尻尾と耳が立ち、椅子から転げ落ちるように立ち上がった。
そのまま玄関に向かってダッシュする。
「ちゃんと誰が来てるか確認してからドアを開けろよ少年~」
眠たそうなぼんやりとしたアレウの声に適当に相槌を打つ。
インターホンに映像が映り、夏輝であることがはっきりとわかる。
(やばい、緊張する……夏輝相手なのにっ)
どくんどくんと心臓が高鳴る。
昨日あんなことがあったからだ。
勿論その……アレウたちの交尾を見たからじゃない。
時間をおこうって話をしたばかりだからだ。
(今日こそはちゃんと素直になるんだ……!)
頬をぱちんと叩いてからドアを開く。
「おはようラテア」
「おう、おはよう夏輝」
夏輝の顔は昨日よりもずっと元気そうだ。
どこか吹っ切れたような顔をしていた。
そんな夏輝に俺は努めて普段通りの挨拶を返す。
「……」
「……」
互いにじぃっと目を見つめる。
少しの沈黙。ぱた、ぱた、と小刻みに膨らんだ尾っぽが揺れる。
素直に、素直にと自分自身に言い聞かせる。
「き、昨日は……不機嫌そうにあたって、悪かった。ごめん」
「俺こそ。もうちょっと地頭がよかったらいいんだけど」
目を一度伏せ、それから再び夏輝と目が合う。
夏輝の顔には昨日まであった罪悪感だとかは消え失せていた。
代わりになんていうか、決意に満ちた顔っていうのかな。そんな感じ。
まだまだ言葉が続けられそうなので、俺は黙って続きを待つ。
「ラテアの為にも、今後の為にも俺はちゃんと勉強する。でも、瑞雪さんの言ってた通り全日朝から夜までずっと勉強をし続ける必要はないと思うから。だから、日曜日!今週の日曜日、一緒にその出かけない?」
真っすぐ見つめてくる夏輝。
「も、勿論!お、俺も夏輝と一緒に遊びに行きたい。でも、俺、狙われてて」
そう、傭兵に襲われて。
夏輝も危険に巻き込んでしまう。
「うん、だから人の多い場所には行けないし、警戒も解けないけど。俺なら大丈夫だから」
しばしの沈黙。
今更考えても無駄なことはわかってる。
巻き込みまくって今更突き放すのはちゃんちゃらおかしいんだ。
あまりにも不誠実だし、俺自身は夏輝に助けられて、そして一緒にいろいろできて嬉しいって思ってるんだ。
「……う、わかった。うん、俺も一緒に夏輝と居たい」
こくりと俺は首を縦に振った。
素直に、素直に。
俺の口は気を抜けば可愛くないことばかり言いやがる。
念仏のように心の中で唱える。
「もし何かあったら連絡くれればすぐに助けに行ってやるし、まあ心配するなよ。今回は未来ある若人達のために一肌脱ぐのが大人ってモンさ。なあ、ロセ?」
「うんうん。八潮さんにはお世話になってるし、これくらいならお安い御用だよ♪こういう時は大人を頼るべきだからさ、君たちはまだ子供なんだから」
夏輝をアシストするように二人が言葉を口にする。
夏輝も、俺も多くの大人達から目をかけられていた。
彼らの言う通り、素直に従うべきなのだろう。
俺も夏輝も頷いた。
「日曜日の朝家に帰るよ」
「うん、わかった。アレウさん、ロセさん、それまでラテアの事よろしくお願いします!」
深々と頭を下げる夏輝。
そんな夏輝に対し、アレウとロセは軽く手をあげて答えた。
夏輝はその後慌しく家を後にし、俺はロセの仕事についていくこととなった。
朝七時。
夏輝は早めに来るだろうという事でこの時間にはちゃんと目覚ましをセットして起きた俺。偉い。
リビングに出るとぴんぴん元気な俺とは対照的にアレウとロセはとにかく眠そうに目を擦っていた。
「お前ら元気ないなあ」
「だってぇ、朝だもの……。早起きの吸血鬼と淫魔ってどう思う?」
そうは言いつつもロセは朝食を慣れた手つきで用意してくれる。
温かい淹れたての紅茶とパン。
スコーンってやつだっけ?八潮のカフェにもあったやつ。
用意されたたっぷりのジャムとバターをつけて食べる。
(うま……何これうま)
俺は昨日の夜の事も忘れて尻尾を振りながら次々に口の中に放り込み、咀嚼する。
口の中が結構パサパサするからミルクティーがよくあうのだ。
「うーん、キャラ違う……って感じ」
「でしょ?」
言われてみれば確かになわけで。
早寝早起きが基本の吸血鬼と淫魔は流石にらしくはない。
俺の言葉にアレウはまた一つ大あくびをした。
ところで玄関のチャイムが鳴る。
「夏輝……!」
なった瞬間俺の尻尾と耳が立ち、椅子から転げ落ちるように立ち上がった。
そのまま玄関に向かってダッシュする。
「ちゃんと誰が来てるか確認してからドアを開けろよ少年~」
眠たそうなぼんやりとしたアレウの声に適当に相槌を打つ。
インターホンに映像が映り、夏輝であることがはっきりとわかる。
(やばい、緊張する……夏輝相手なのにっ)
どくんどくんと心臓が高鳴る。
昨日あんなことがあったからだ。
勿論その……アレウたちの交尾を見たからじゃない。
時間をおこうって話をしたばかりだからだ。
(今日こそはちゃんと素直になるんだ……!)
頬をぱちんと叩いてからドアを開く。
「おはようラテア」
「おう、おはよう夏輝」
夏輝の顔は昨日よりもずっと元気そうだ。
どこか吹っ切れたような顔をしていた。
そんな夏輝に俺は努めて普段通りの挨拶を返す。
「……」
「……」
互いにじぃっと目を見つめる。
少しの沈黙。ぱた、ぱた、と小刻みに膨らんだ尾っぽが揺れる。
素直に、素直にと自分自身に言い聞かせる。
「き、昨日は……不機嫌そうにあたって、悪かった。ごめん」
「俺こそ。もうちょっと地頭がよかったらいいんだけど」
目を一度伏せ、それから再び夏輝と目が合う。
夏輝の顔には昨日まであった罪悪感だとかは消え失せていた。
代わりになんていうか、決意に満ちた顔っていうのかな。そんな感じ。
まだまだ言葉が続けられそうなので、俺は黙って続きを待つ。
「ラテアの為にも、今後の為にも俺はちゃんと勉強する。でも、瑞雪さんの言ってた通り全日朝から夜までずっと勉強をし続ける必要はないと思うから。だから、日曜日!今週の日曜日、一緒にその出かけない?」
真っすぐ見つめてくる夏輝。
「も、勿論!お、俺も夏輝と一緒に遊びに行きたい。でも、俺、狙われてて」
そう、傭兵に襲われて。
夏輝も危険に巻き込んでしまう。
「うん、だから人の多い場所には行けないし、警戒も解けないけど。俺なら大丈夫だから」
しばしの沈黙。
今更考えても無駄なことはわかってる。
巻き込みまくって今更突き放すのはちゃんちゃらおかしいんだ。
あまりにも不誠実だし、俺自身は夏輝に助けられて、そして一緒にいろいろできて嬉しいって思ってるんだ。
「……う、わかった。うん、俺も一緒に夏輝と居たい」
こくりと俺は首を縦に振った。
素直に、素直に。
俺の口は気を抜けば可愛くないことばかり言いやがる。
念仏のように心の中で唱える。
「もし何かあったら連絡くれればすぐに助けに行ってやるし、まあ心配するなよ。今回は未来ある若人達のために一肌脱ぐのが大人ってモンさ。なあ、ロセ?」
「うんうん。八潮さんにはお世話になってるし、これくらいならお安い御用だよ♪こういう時は大人を頼るべきだからさ、君たちはまだ子供なんだから」
夏輝をアシストするように二人が言葉を口にする。
夏輝も、俺も多くの大人達から目をかけられていた。
彼らの言う通り、素直に従うべきなのだろう。
俺も夏輝も頷いた。
「日曜日の朝家に帰るよ」
「うん、わかった。アレウさん、ロセさん、それまでラテアの事よろしくお願いします!」
深々と頭を下げる夏輝。
そんな夏輝に対し、アレウとロセは軽く手をあげて答えた。
夏輝はその後慌しく家を後にし、俺はロセの仕事についていくこととなった。
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