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改めてパラパラとめくるものの、特に変わった気づきは得られなかった。文字は裏表紙のタイトルだけ。
「──ん?」
ふと、その下に名前を書くであろう枠があり、消された形跡が見受けられる。目を凝らしても全く解読不能だが、前の所有者が消したのだろう。つまり、この日記は放棄されたものと推測される。では、なぜ私に手渡されたのか?どんな意図があったの?
善意か悪意か、もし善意なら、私を応援するための意図があるのかもしれない。悪意ならば、この日記を私に所有させて罠に嵌めようとする策略だろう。残念ながら私を応援する存在はいないと思う。考えるとしたら悪意の方が妥当だ。盗まれたと主張し、騒ぎを起こしたいたいのだろう。しかし、わざわざ部屋に忍び込んでまでそんなことをする?職場で離席している間に鞄に入れておけば十分だったはず──
短時間で結論は得られなかった。しかし、簡単に手放すことはできない。真相を明らかにしたいのだ。この日記は今や私の所有物。
そうだ!名前を書いてしまおう。罠だろうが自分のだって言い張ってやる。誰かがプレゼントしてくれたんだって。
そう覚悟を決めて、さらっと鉛筆で『高野真由美』と記入した。すると──
「は?えっ!?」と思わず声が上がった。空白だったページに文字が浮かんできたのだ。昨日と今日の日記が印字されている。私は恐怖に身震いし、背筋が凍りつくような感覚が走った。書かれた文字を追いながら、畏怖の念が心を支配する。
8月21日(月)
橘美咲と購買部の山田係長がデートのため有休を取得しました。美咲が強引に誘ったようですが、山田は専務に気を遣っているだけです。
一方、山本節子は美咲の不在時にさらに我儘になり、仕事をパープー女子に押し付けました。しかし、ミスを犯したため残業でフォローする羽目に。イライラしていた節子はスズランの花びらをちぎって退社しました。
森田課長は提出ファイルの中身を確認せず、ただ印鑑を押して私の机に投げて退社しました。
なんなん、コレ!?
私は冷静な態度を装いながら、立ち上がったパソコンにログインし、メールボックスを開いた。仕事をしてるように見せかけつつも、頭の中はさまざまな思考が渦巻いている。
しかし、花びらをちぎる手法は山田節子の特徴だと瞬時に理解した。また、剪定鋏を使って切り落とすパターンもあり、これはおそらく橘美咲の仕業だろう。ファイルを投げるのはいつものことなので驚かない。いや、そんな過ぎ去ったことはどうでもよい。信じられないことだが、この日記は過去、そして未来のできごとが書かれているのだ。ちなみに今日は──
8月22日(火)
橘美咲はご機嫌な一日を送ります。デートの成果を感じたものと思われますが勘違いです。付き合わされた山田係長はお気の毒ですが、目くそ鼻くそです。そんな彼女から2件の仕事を丸投げされました。大した内容ではありません。
一方、山本節子は機嫌が直らず、午後のオンライン会議で意図的に私を招待から外してしまいます。それが原因で課長から叱責を受けました。また、10時15分に皆を誘って自販機前で私の悪口で盛り上がっていました。
森田課長は私が人事部に送ったモラハラ画像に関して担当課長と面談しましたが、何ごともなかったかのように戻りました。そして、提出ファイルを机に投げて退社しました。
な、なるほど。あり得る。事実ならこれはとっても便利なシロモノだ。だってストレスの原因が事前にわかることで、対処法も見つけやすくなるわ。もしや神様からの贈り物かもしれない。そうだ、そうよ。この日記は誰にも渡さないわ。
マイ、ダイアリーよ!
「──ん?」
ふと、その下に名前を書くであろう枠があり、消された形跡が見受けられる。目を凝らしても全く解読不能だが、前の所有者が消したのだろう。つまり、この日記は放棄されたものと推測される。では、なぜ私に手渡されたのか?どんな意図があったの?
善意か悪意か、もし善意なら、私を応援するための意図があるのかもしれない。悪意ならば、この日記を私に所有させて罠に嵌めようとする策略だろう。残念ながら私を応援する存在はいないと思う。考えるとしたら悪意の方が妥当だ。盗まれたと主張し、騒ぎを起こしたいたいのだろう。しかし、わざわざ部屋に忍び込んでまでそんなことをする?職場で離席している間に鞄に入れておけば十分だったはず──
短時間で結論は得られなかった。しかし、簡単に手放すことはできない。真相を明らかにしたいのだ。この日記は今や私の所有物。
そうだ!名前を書いてしまおう。罠だろうが自分のだって言い張ってやる。誰かがプレゼントしてくれたんだって。
そう覚悟を決めて、さらっと鉛筆で『高野真由美』と記入した。すると──
「は?えっ!?」と思わず声が上がった。空白だったページに文字が浮かんできたのだ。昨日と今日の日記が印字されている。私は恐怖に身震いし、背筋が凍りつくような感覚が走った。書かれた文字を追いながら、畏怖の念が心を支配する。
8月21日(月)
橘美咲と購買部の山田係長がデートのため有休を取得しました。美咲が強引に誘ったようですが、山田は専務に気を遣っているだけです。
一方、山本節子は美咲の不在時にさらに我儘になり、仕事をパープー女子に押し付けました。しかし、ミスを犯したため残業でフォローする羽目に。イライラしていた節子はスズランの花びらをちぎって退社しました。
森田課長は提出ファイルの中身を確認せず、ただ印鑑を押して私の机に投げて退社しました。
なんなん、コレ!?
私は冷静な態度を装いながら、立ち上がったパソコンにログインし、メールボックスを開いた。仕事をしてるように見せかけつつも、頭の中はさまざまな思考が渦巻いている。
しかし、花びらをちぎる手法は山田節子の特徴だと瞬時に理解した。また、剪定鋏を使って切り落とすパターンもあり、これはおそらく橘美咲の仕業だろう。ファイルを投げるのはいつものことなので驚かない。いや、そんな過ぎ去ったことはどうでもよい。信じられないことだが、この日記は過去、そして未来のできごとが書かれているのだ。ちなみに今日は──
8月22日(火)
橘美咲はご機嫌な一日を送ります。デートの成果を感じたものと思われますが勘違いです。付き合わされた山田係長はお気の毒ですが、目くそ鼻くそです。そんな彼女から2件の仕事を丸投げされました。大した内容ではありません。
一方、山本節子は機嫌が直らず、午後のオンライン会議で意図的に私を招待から外してしまいます。それが原因で課長から叱責を受けました。また、10時15分に皆を誘って自販機前で私の悪口で盛り上がっていました。
森田課長は私が人事部に送ったモラハラ画像に関して担当課長と面談しましたが、何ごともなかったかのように戻りました。そして、提出ファイルを机に投げて退社しました。
な、なるほど。あり得る。事実ならこれはとっても便利なシロモノだ。だってストレスの原因が事前にわかることで、対処法も見つけやすくなるわ。もしや神様からの贈り物かもしれない。そうだ、そうよ。この日記は誰にも渡さないわ。
マイ、ダイアリーよ!
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