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第五章 幸せの刻限
36 愛の巣【1】♥
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みゆきと貴明が帰った先は、忍宮組ではなかった。
貴明が個人的な軍の知り合いづてで借りた、美しく整った借家である。
さして大きくない平屋であるが、わずかに実花のつく庭木も植えられている。特に玄関先の梅は形がよく、早い春を告げる花がぽつ、ぽつと開いていた。中に入れば欄間や床の間の細工が細やかで美しく、襖には華やかな花々があしらわれ、隅々まで建てた者の思い入れが感じられる家だった。
『なんてきれいなお家なんでしょう……。女性のために建てられたのかもしれませんね』
無邪気に言ったみゆきに、貴明は微笑みながら答えた。
『そうだね。おそらくはお妾さん用の家だろう』
『お、お妾。そ、そうですね……!』
諸々な人間事情に疎いわけでもないのに、そう聞いたみゆきはすっかりうろたえてしまった。
いざ自分たちがそこに住む、となると、家全体が艶めかしいようにも見えてきたためだ。
貴明はそんなみゆきを面白そうに眺めて、優しく家の中に導いてくれた。
そうして二人がこの家に住んで、七日ほどが経つ。
大切な、大切な、七日であった。
粋な洗い出しの土間からこの家の玄関に上がるには、結構な段差がある。
上がり框はみゆきの膝よりも上あたりだ。
普段は靴脱ぎ石を踏んで上がるのだが、今日はそこまで至っていない。
玄関の引き戸を閉めた途端にふたりの唇が重なってしまい、そのままもつれこむように抱き合ってしまったからだ。
二人に残されているのは、あとはほんの半月ほど。
そう思うこともあって、二人はどうしても離れがたく互いを求めてしまう。
気付けばみゆきは上がり框に両肘をついて、かすかに震える下半身を貴明に差し出す姿勢になってしまっていた。
「――すこし、冷えるよ」
貴明の押し殺した声も、熱い。
力強い片腕がみゆきの上半身を抱きかかえたまま、もう片手が袴を落とす。
続いて短く着付けた街着をたくしあげられると、白い尻がひやりと外気に触れた。
すでに熱を帯びたみゆきの体は、寒さより淡い心地よさすら感じてしまう。
(私、こんな……こんなことをしているのに、何も、嫌じゃない……)
恥ずかしいのは確かだ。
確かだけれど、逃げようなんて夢にも思わない。
むしろ強引にこうして暴かれていくのが嬉しくて、たまらなくて、期待で息が熱くなる。
おかしくなってしまった。すっかりつくりかえられてしまった。
はやく、はやくと急かす心をどうにかねじ伏せ、心の隅に残った慎ましい部分でもって、みゆきはうなされたように謝罪する。
「ごめんなさい……ごめんなさい、たかあき、さん……」
「どうして謝るんだい? あなたはとてもきれいで、かわいい」
聞いているだけで蕩けてしまいそうな声で、貴明がみゆきを甘やかす。
手袋の端を噛んで脱ぎ捨てると、貴明のきれいな指がみゆきの秘所に触れた。
「んっ」
指が、秘裂の上をまったく力を入れずになぞっていく。
ただそれだけなのに、貴明の指にうるおいが移っていくのがわかってしまう。
それほどに、みゆきが濡れているのだ。
「ここも、いかにも貞淑な美しい形に見えて、触れるとみずみずしく潤っていて」
貴明は甘やかに囁きかけたかと思うと、人差し指と親指で、みゆきの慎ましやかな秘所を目一杯開いてしまった。
「ひっ……」
くちゅ、と音を立てて開かれる感触に、みゆきは思わず震える。
突然の行為であっても、痛みはない。
それだけ、みゆきのそこは潤って、柔らかくしつけられている。
ただ、こんなにも明るい場所、戸板一枚で外と隔てられただけの場所で、もっとも大事なところをあらわにされるのは、恐怖と羞恥の入り交じった刺激になった。
(鍵……玄関の鍵は、きちんとねじこんだかしら……)
今さらそんなことが気になるが、気にすれば気にするほど、花開いた秘所は潤っていく。
触れてもいないのにすっかりとぬれそぼり、今にも露を滴らせそうな秘花を見下ろし、貴明は愛しげに微笑んで言う。
「すっかり従順な花になったね。それにしても、少し潤いすぎのような気もするけれど……いつからこうなったんだい? 授業中にでも、昨晩のことを思い出した?」
「あ……ごめん、なさい……」
言い当てられてしまうと、みゆきの中がぎゅうっと締まる。
締まれば締まるほどにまだ何も入っていないことがむなしくて、そんなことを感じる自分が恥ずかしくて、みゆきは思わず目を閉じてしまった。
「私、おかしくなってしまいました……ふまじめで、ふしだらで……」
恥じ入って声に出すと、思わず涙がにじみそうになる。
そんなみゆきの頭を、大きな手が、一度、二度、撫でてくれた。
「おかしくはないよ。あなたがおかしいのだとしたら、俺はもっとおかしい」
貴明の穏やかな声と共に頭を撫でられる。その感触は昔からなじんだものだ。
貴明はいつだって、みゆきが泣くとこうやって慰めてくれた。
(懐かしくて、優しい)
みゆきがほっとして、体がゆるむ。
直後、開かれた秘所になめらかな感触が触れた。
「えっ……あっ!!」
まさか、と振り返る前に、ものすごい質量に体を割られる感覚があり、息が詰まる。
「っ……! っ、ぁ、ぁ……!!」
入ってくる。
まだなんの準備もされず、開かれただけの秘所に、貴明自身が割りこんでくる。
みゆきの腹が慌てて形を変え、必死になって貴明を呑もうとうねり、抱きこむ感覚。
頭もまだ現実についていけず、ぱちぱち、ぱちぱちと何度も白い火花が散った。
「大丈夫。大丈夫だよ。少しキツいが……ちゃんと入るし、食い絞めている」
貴明の声には熱い吐息が交じり、大きな手はまだみゆきの頭を撫でている。
慣れた感触と、まだ慣れきっていない暴虐の落差で、脳が酔ったようになってしまう。
(たかあきさ……ん、たかあき、さん)
頭の中でも、もう貴明の名を呼ぶことしかできない。
端整な容姿と似合わず、と言おうか、貴明自身はかなりの長さと、女の腹の中を削る形を持っている。
潤いのおかげで前戯なしでもぎりぎり呑みこめてはいるが、押し入ってくる感触はいつもよりもさらに生々しく伝わってきた。
(中、中、を、もっと……)
体の中の敏感な場所を全部擦って、貴明は最奥に達する前に侵入を止めた。
貴明が個人的な軍の知り合いづてで借りた、美しく整った借家である。
さして大きくない平屋であるが、わずかに実花のつく庭木も植えられている。特に玄関先の梅は形がよく、早い春を告げる花がぽつ、ぽつと開いていた。中に入れば欄間や床の間の細工が細やかで美しく、襖には華やかな花々があしらわれ、隅々まで建てた者の思い入れが感じられる家だった。
『なんてきれいなお家なんでしょう……。女性のために建てられたのかもしれませんね』
無邪気に言ったみゆきに、貴明は微笑みながら答えた。
『そうだね。おそらくはお妾さん用の家だろう』
『お、お妾。そ、そうですね……!』
諸々な人間事情に疎いわけでもないのに、そう聞いたみゆきはすっかりうろたえてしまった。
いざ自分たちがそこに住む、となると、家全体が艶めかしいようにも見えてきたためだ。
貴明はそんなみゆきを面白そうに眺めて、優しく家の中に導いてくれた。
そうして二人がこの家に住んで、七日ほどが経つ。
大切な、大切な、七日であった。
粋な洗い出しの土間からこの家の玄関に上がるには、結構な段差がある。
上がり框はみゆきの膝よりも上あたりだ。
普段は靴脱ぎ石を踏んで上がるのだが、今日はそこまで至っていない。
玄関の引き戸を閉めた途端にふたりの唇が重なってしまい、そのままもつれこむように抱き合ってしまったからだ。
二人に残されているのは、あとはほんの半月ほど。
そう思うこともあって、二人はどうしても離れがたく互いを求めてしまう。
気付けばみゆきは上がり框に両肘をついて、かすかに震える下半身を貴明に差し出す姿勢になってしまっていた。
「――すこし、冷えるよ」
貴明の押し殺した声も、熱い。
力強い片腕がみゆきの上半身を抱きかかえたまま、もう片手が袴を落とす。
続いて短く着付けた街着をたくしあげられると、白い尻がひやりと外気に触れた。
すでに熱を帯びたみゆきの体は、寒さより淡い心地よさすら感じてしまう。
(私、こんな……こんなことをしているのに、何も、嫌じゃない……)
恥ずかしいのは確かだ。
確かだけれど、逃げようなんて夢にも思わない。
むしろ強引にこうして暴かれていくのが嬉しくて、たまらなくて、期待で息が熱くなる。
おかしくなってしまった。すっかりつくりかえられてしまった。
はやく、はやくと急かす心をどうにかねじ伏せ、心の隅に残った慎ましい部分でもって、みゆきはうなされたように謝罪する。
「ごめんなさい……ごめんなさい、たかあき、さん……」
「どうして謝るんだい? あなたはとてもきれいで、かわいい」
聞いているだけで蕩けてしまいそうな声で、貴明がみゆきを甘やかす。
手袋の端を噛んで脱ぎ捨てると、貴明のきれいな指がみゆきの秘所に触れた。
「んっ」
指が、秘裂の上をまったく力を入れずになぞっていく。
ただそれだけなのに、貴明の指にうるおいが移っていくのがわかってしまう。
それほどに、みゆきが濡れているのだ。
「ここも、いかにも貞淑な美しい形に見えて、触れるとみずみずしく潤っていて」
貴明は甘やかに囁きかけたかと思うと、人差し指と親指で、みゆきの慎ましやかな秘所を目一杯開いてしまった。
「ひっ……」
くちゅ、と音を立てて開かれる感触に、みゆきは思わず震える。
突然の行為であっても、痛みはない。
それだけ、みゆきのそこは潤って、柔らかくしつけられている。
ただ、こんなにも明るい場所、戸板一枚で外と隔てられただけの場所で、もっとも大事なところをあらわにされるのは、恐怖と羞恥の入り交じった刺激になった。
(鍵……玄関の鍵は、きちんとねじこんだかしら……)
今さらそんなことが気になるが、気にすれば気にするほど、花開いた秘所は潤っていく。
触れてもいないのにすっかりとぬれそぼり、今にも露を滴らせそうな秘花を見下ろし、貴明は愛しげに微笑んで言う。
「すっかり従順な花になったね。それにしても、少し潤いすぎのような気もするけれど……いつからこうなったんだい? 授業中にでも、昨晩のことを思い出した?」
「あ……ごめん、なさい……」
言い当てられてしまうと、みゆきの中がぎゅうっと締まる。
締まれば締まるほどにまだ何も入っていないことがむなしくて、そんなことを感じる自分が恥ずかしくて、みゆきは思わず目を閉じてしまった。
「私、おかしくなってしまいました……ふまじめで、ふしだらで……」
恥じ入って声に出すと、思わず涙がにじみそうになる。
そんなみゆきの頭を、大きな手が、一度、二度、撫でてくれた。
「おかしくはないよ。あなたがおかしいのだとしたら、俺はもっとおかしい」
貴明の穏やかな声と共に頭を撫でられる。その感触は昔からなじんだものだ。
貴明はいつだって、みゆきが泣くとこうやって慰めてくれた。
(懐かしくて、優しい)
みゆきがほっとして、体がゆるむ。
直後、開かれた秘所になめらかな感触が触れた。
「えっ……あっ!!」
まさか、と振り返る前に、ものすごい質量に体を割られる感覚があり、息が詰まる。
「っ……! っ、ぁ、ぁ……!!」
入ってくる。
まだなんの準備もされず、開かれただけの秘所に、貴明自身が割りこんでくる。
みゆきの腹が慌てて形を変え、必死になって貴明を呑もうとうねり、抱きこむ感覚。
頭もまだ現実についていけず、ぱちぱち、ぱちぱちと何度も白い火花が散った。
「大丈夫。大丈夫だよ。少しキツいが……ちゃんと入るし、食い絞めている」
貴明の声には熱い吐息が交じり、大きな手はまだみゆきの頭を撫でている。
慣れた感触と、まだ慣れきっていない暴虐の落差で、脳が酔ったようになってしまう。
(たかあきさ……ん、たかあき、さん)
頭の中でも、もう貴明の名を呼ぶことしかできない。
端整な容姿と似合わず、と言おうか、貴明自身はかなりの長さと、女の腹の中を削る形を持っている。
潤いのおかげで前戯なしでもぎりぎり呑みこめてはいるが、押し入ってくる感触はいつもよりもさらに生々しく伝わってきた。
(中、中、を、もっと……)
体の中の敏感な場所を全部擦って、貴明は最奥に達する前に侵入を止めた。
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