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愛の交錯※
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「なっ」
再び足の裏が床についた場所は、洗面所の鏡の前だ。両方の手で頬を挟まれ、無理矢理確認させられる。
真っ赤だ。首筋まで赤く染めた顔が、億面なく鏡に映し出されている。目は潤み、唇は半開きで、熱に浮かされた姿そのものだ。自分はこのような顔をライナードに見せていたのか。
血液が異様な速さで全身を駆け巡る。
目は口ほどに物を言う。まさしく言葉通りだ。
「お、おい」
ライナードが声を上擦らせた。
このような面を晒して、今更、羞恥も何もあったもんじゃない。
レイノリアは半ばヤケクソで、膝立ちになるとライナードのズボンのベルトを緩め、ファスナーを下ろした。下着に隠されていた部分を探り当てると、おもむろに先端を咥えた。
「その気にさせた、あなたが悪いのよ」
「でも、お前。あんなことがあったばかりだし。今日はゆっくり」
「したい。今すぐ」
わざと直接的な言い方をして、ライナードを煽ってみた。
懸命に理性を保とうとしているようだが、本能は正直だ。含んだ口内の質量が一気に増して、飲み損ねた唾液が糸を引く。顎が外れそうで、堪らず一旦退くと立ち上がった。
入れ替わるように、ライナードが屈む。
見上げるばかりだったのに、見下ろす優越感。三十センチ上の大男のつむじを見る日が来ようとは、思いも寄らなかった。意外に睫毛の長いことを、今日初めて知る。
レイノリアがうっとりと新しい発見に浸っているうちに、レイノリア以上の器用さでライナードは彼女のズボンのファスナーを下ろし、太腿の間に舌を潜り込ませた。
びくっと爪先から頭のてっぺんにかけて、震えが駆け抜ける。
「なっ! 」
ようやく事態に気付いたレイノリアは、耳まで赤くして、金魚のようにぱくぱくと口を開けたり閉じたりを繰り返す。
悪戯が成功した子供そのもので、ライナードは不敵に口の端を曲げた。
「覚悟しとけよ」
撤回する。子供ではない。無邪気さが皆無だ。
「ちょ、ちょっと。ライナード様」
あっという間の形勢逆転に焦るレイノリア。
明らかに興奮する自身のものを舌先で撫でたり、あるいはさらに奥深くを割ったり、または一息に吸い上げたりと、延々と続けるライナードに、おろおろするばかりで引き剥がすことが出来ない。
経験値はレイノリアより高くあるがゆえわかるのか、ピンポイントでいいところを突いてくる。気持ち良過ぎて、つい体を捩ってしまって、悪足掻きすら出来ない。
「ちょっ……駄目……ですって。こ、こんなところで……」
「今すぐしたいって言っただろ」
「だからって。私はベッドで」
「仕掛けたのはお前だ」
大人のずるさで、ライナードは責任をレイノリアに転嫁する。
確かに仕掛けたのは自分だが、敢えて乗ったのはライナードだ。同罪だ。しかし、レイノリアには毒を吐く余裕など、すでになかった。
果物の皮を剥くようにあっさりと服を脱がされ、同じく全裸のライナードによって、浴室に連れ込まれた。
宿屋の手狭な浴室は、体格の良い男がいると窮屈だ。レイノリアは壁に手をついてぴったりと胸を張り付かせる。背中に覆い被さる、引き締まったライナードの胸の固さ。邪魔な布地を取り払い、直に触れるとまた違った感覚だ。心拍数が跳ね上がる。
頭上から、温めの吐息が降り注いだ。
「んん……ああ……」
思わずレイノリアは鼻から息を漏らしてしまった。
ぬるついたライナードの太い中指に探られ、押し拡げられていた。レイノリアが肌を弾く水滴に気を取られている隙に、石鹸で指の滑りをよくさせていたのだ。抜け目がない。
「ちょっと……ラ、ライナード様……ああ……」
抗議の声は、侵入した指が作るいやらしい音に掻き消される。
押しては引き、引いては一段と奥へ入る。ゆっくりと、しかし確実に、固かった場所が拓かれていく。最初からライナードを迎え入れるために存在していたかのごとく、蕩け、吸いつき始めていた。
「も……やめ……」
「まだ、これからだぞ」
「ちょ……待っ……」
「待てない」
容赦なくレイノリアの言葉を切り捨て、先程よりも指の動きが速くなった。完全に追い込まれ逃げ場を失くし、レイノリアはひたすら喘がされるばかりだ。
「ああ……ああ……んん」
苦しくて、痛くて、気持ち悪い。それなのに、癖になる。指一本では物足りない。レイノリアの心を読んだように、指が二本に増やされる。粘膜を掻き乱し、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てた。か細く吐く息のリズムが乱れる。三本の指が内部を引っ掻き、くの字に曲がった。もっと奥へと進めてほしい。まだ足りない。どんどん貪欲になっていく。
「挿れるぞ」
鼓膜が切れ切れの掠れ声を拾う。
歯を食い縛り、何かとてつもないものに耐えているかのように、ライナードは苦悶に呻いた。彼は、レイノリアの体がほぐれるのを、ひたすら辛抱していたのだ。
「は……早く……」
彼を苦しみから解放してやりたい。
レイノリアは瞼をぎゅっと閉じた。
熱の塊がいきなり侵入する。
「あっ……くう……」
まだ早かったかも知れない。先端が潜り、レイノリアは痛みに筋肉を固くする。
「力、抜け」
「む、無理……」
「好きだ」
かっとレイノリアの全身の血が湧きたった。
この段階に来てその言葉は反則だ。
「ああ! 」
驚愕で力を抜いたその一瞬を逃さず、ライナードはレイノリアに押し当てていた自身で一気に深淵を貫いた。
時間を掛けて蕩け切っていたその場所は、異物の侵入を歓迎する。貫く熱の塊をもっと深く感じたいと脳味噌が指令を出し、レイノリアの体は素直に従った。粘膜が蠕動し、奥へ奥へと誘う。
「ライナード様……ライナード様……」
力強く突き上げられ、擦られ、無意識にレイノリアは愛しい名前を呼んだ。
耳元では、ライナードが変わらず荒く息を吐きながら、獣のように唸っている。
首筋にライナードの汗がぽたぽたと落ちた。男臭い匂いが、神経を麻痺させる。
「……ああ……」
限界が来ていた。ブレーキが利かない。
「ライナード様……も、もう……」
「もう……イキたいのか……」
「は、はい……ああ……」
顎を仰け反らせ、快楽に飛んでしまいそうな意識に必死にしがみつく。涙で目が霞んで何も見えない。何も聞こえない。感じるのは、最奥に滞る熱さだけ。
「レ、レイノリア……」
「ああ! ライナード様! ライナード様! 」
より激しい抽挿がレイノリアを苛む。精神の崩壊は目の前だ。
狂ったようにガクガクと体を揺すられ、レイノリアは倒れまいと必死に壁にしがみついた。そうしなければ、波にもっていかれる。握った拳の甲にライナードの手が重なる。戦慄が走る。
「んんあああああ! 」
レイノリアは声を張り上げた。
繋がった部分が熱く爆ぜたことを実感する。
再び足の裏が床についた場所は、洗面所の鏡の前だ。両方の手で頬を挟まれ、無理矢理確認させられる。
真っ赤だ。首筋まで赤く染めた顔が、億面なく鏡に映し出されている。目は潤み、唇は半開きで、熱に浮かされた姿そのものだ。自分はこのような顔をライナードに見せていたのか。
血液が異様な速さで全身を駆け巡る。
目は口ほどに物を言う。まさしく言葉通りだ。
「お、おい」
ライナードが声を上擦らせた。
このような面を晒して、今更、羞恥も何もあったもんじゃない。
レイノリアは半ばヤケクソで、膝立ちになるとライナードのズボンのベルトを緩め、ファスナーを下ろした。下着に隠されていた部分を探り当てると、おもむろに先端を咥えた。
「その気にさせた、あなたが悪いのよ」
「でも、お前。あんなことがあったばかりだし。今日はゆっくり」
「したい。今すぐ」
わざと直接的な言い方をして、ライナードを煽ってみた。
懸命に理性を保とうとしているようだが、本能は正直だ。含んだ口内の質量が一気に増して、飲み損ねた唾液が糸を引く。顎が外れそうで、堪らず一旦退くと立ち上がった。
入れ替わるように、ライナードが屈む。
見上げるばかりだったのに、見下ろす優越感。三十センチ上の大男のつむじを見る日が来ようとは、思いも寄らなかった。意外に睫毛の長いことを、今日初めて知る。
レイノリアがうっとりと新しい発見に浸っているうちに、レイノリア以上の器用さでライナードは彼女のズボンのファスナーを下ろし、太腿の間に舌を潜り込ませた。
びくっと爪先から頭のてっぺんにかけて、震えが駆け抜ける。
「なっ! 」
ようやく事態に気付いたレイノリアは、耳まで赤くして、金魚のようにぱくぱくと口を開けたり閉じたりを繰り返す。
悪戯が成功した子供そのもので、ライナードは不敵に口の端を曲げた。
「覚悟しとけよ」
撤回する。子供ではない。無邪気さが皆無だ。
「ちょ、ちょっと。ライナード様」
あっという間の形勢逆転に焦るレイノリア。
明らかに興奮する自身のものを舌先で撫でたり、あるいはさらに奥深くを割ったり、または一息に吸い上げたりと、延々と続けるライナードに、おろおろするばかりで引き剥がすことが出来ない。
経験値はレイノリアより高くあるがゆえわかるのか、ピンポイントでいいところを突いてくる。気持ち良過ぎて、つい体を捩ってしまって、悪足掻きすら出来ない。
「ちょっ……駄目……ですって。こ、こんなところで……」
「今すぐしたいって言っただろ」
「だからって。私はベッドで」
「仕掛けたのはお前だ」
大人のずるさで、ライナードは責任をレイノリアに転嫁する。
確かに仕掛けたのは自分だが、敢えて乗ったのはライナードだ。同罪だ。しかし、レイノリアには毒を吐く余裕など、すでになかった。
果物の皮を剥くようにあっさりと服を脱がされ、同じく全裸のライナードによって、浴室に連れ込まれた。
宿屋の手狭な浴室は、体格の良い男がいると窮屈だ。レイノリアは壁に手をついてぴったりと胸を張り付かせる。背中に覆い被さる、引き締まったライナードの胸の固さ。邪魔な布地を取り払い、直に触れるとまた違った感覚だ。心拍数が跳ね上がる。
頭上から、温めの吐息が降り注いだ。
「んん……ああ……」
思わずレイノリアは鼻から息を漏らしてしまった。
ぬるついたライナードの太い中指に探られ、押し拡げられていた。レイノリアが肌を弾く水滴に気を取られている隙に、石鹸で指の滑りをよくさせていたのだ。抜け目がない。
「ちょっと……ラ、ライナード様……ああ……」
抗議の声は、侵入した指が作るいやらしい音に掻き消される。
押しては引き、引いては一段と奥へ入る。ゆっくりと、しかし確実に、固かった場所が拓かれていく。最初からライナードを迎え入れるために存在していたかのごとく、蕩け、吸いつき始めていた。
「も……やめ……」
「まだ、これからだぞ」
「ちょ……待っ……」
「待てない」
容赦なくレイノリアの言葉を切り捨て、先程よりも指の動きが速くなった。完全に追い込まれ逃げ場を失くし、レイノリアはひたすら喘がされるばかりだ。
「ああ……ああ……んん」
苦しくて、痛くて、気持ち悪い。それなのに、癖になる。指一本では物足りない。レイノリアの心を読んだように、指が二本に増やされる。粘膜を掻き乱し、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てた。か細く吐く息のリズムが乱れる。三本の指が内部を引っ掻き、くの字に曲がった。もっと奥へと進めてほしい。まだ足りない。どんどん貪欲になっていく。
「挿れるぞ」
鼓膜が切れ切れの掠れ声を拾う。
歯を食い縛り、何かとてつもないものに耐えているかのように、ライナードは苦悶に呻いた。彼は、レイノリアの体がほぐれるのを、ひたすら辛抱していたのだ。
「は……早く……」
彼を苦しみから解放してやりたい。
レイノリアは瞼をぎゅっと閉じた。
熱の塊がいきなり侵入する。
「あっ……くう……」
まだ早かったかも知れない。先端が潜り、レイノリアは痛みに筋肉を固くする。
「力、抜け」
「む、無理……」
「好きだ」
かっとレイノリアの全身の血が湧きたった。
この段階に来てその言葉は反則だ。
「ああ! 」
驚愕で力を抜いたその一瞬を逃さず、ライナードはレイノリアに押し当てていた自身で一気に深淵を貫いた。
時間を掛けて蕩け切っていたその場所は、異物の侵入を歓迎する。貫く熱の塊をもっと深く感じたいと脳味噌が指令を出し、レイノリアの体は素直に従った。粘膜が蠕動し、奥へ奥へと誘う。
「ライナード様……ライナード様……」
力強く突き上げられ、擦られ、無意識にレイノリアは愛しい名前を呼んだ。
耳元では、ライナードが変わらず荒く息を吐きながら、獣のように唸っている。
首筋にライナードの汗がぽたぽたと落ちた。男臭い匂いが、神経を麻痺させる。
「……ああ……」
限界が来ていた。ブレーキが利かない。
「ライナード様……も、もう……」
「もう……イキたいのか……」
「は、はい……ああ……」
顎を仰け反らせ、快楽に飛んでしまいそうな意識に必死にしがみつく。涙で目が霞んで何も見えない。何も聞こえない。感じるのは、最奥に滞る熱さだけ。
「レ、レイノリア……」
「ああ! ライナード様! ライナード様! 」
より激しい抽挿がレイノリアを苛む。精神の崩壊は目の前だ。
狂ったようにガクガクと体を揺すられ、レイノリアは倒れまいと必死に壁にしがみついた。そうしなければ、波にもっていかれる。握った拳の甲にライナードの手が重なる。戦慄が走る。
「んんあああああ! 」
レイノリアは声を張り上げた。
繋がった部分が熱く爆ぜたことを実感する。
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