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第7章 パッと咲いた笑顔の便り
(7-6)
しおりを挟む「久しぶり、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」
「ずいぶんベッピンさんになったもんだねぇ」
「もう、お祖母ちゃんたら」
美的で大人な女性だと思ったけど、二人の前だとほんの少し幼さが感じられた。あどけない表情をしている。
「今日はどうしたんだい」
「あのね、私だけ早めに引っ越して来ちゃったの」
「そうなのかい。それならそうと連絡をしてくれればよかったのに」
「そうなんだけど、驚かせたくてね」
庄平も節子もいい顔をしている。なんだかいいなこの感じ。実家に帰ったら自分もこんな風にあたかかく出迎えてくれるだろうか。そうだといいけど。
梨花は両親の顔を思い浮かべてフッと笑った。
すみれと節子たちの様子を見ていると、両親に申し訳ない気持ちが膨らんでいった。
実家に帰ったほうがいいと思いながらも、まだ帰っていない。なんて親不孝者なのだろう。
そうだ。もしかしたら実家に帰るときは、颯と一緒に結婚の挨拶に行くときなのかもしれない。梨花は勝手な妄想に苦笑いを浮かべた。
「すみれ、今日はここに泊まっていくかい。まだ、ひとりなんだろう」
「ええ、彼はまだ福岡だからね。そうしようかな」
「よし、それじゃ今日はご馳走作らなきゃな」
庄平が腕まくりして意気込んでいる。そういえば、節子は料理をしないのだろうか。怪我はもう治っているはずだ。
もしかしたら節子の怪我関係なく、最初から庄平が料理当番なのかもしれない。
「すみれ。ひとり早く引っ越して来ちまって、寂しくないのかい。会いたいだろう」
「まあね。でも、あと二ヶ月くらいの辛抱だし、今はネットで顔を見ながら話せるから平気なの」
「へぇ、そうなのかい。顔を見て話せるのかい。知らなかったよ。梨花さんは知っていたかい」
「あっ、はい」
梨花は突然話を振られてちょっとドキッとしてしまった。
「そんな世の中なんだねぇ。それはそうと仕事はどうするんだい。専業主婦になるのかい」
「それは、まだ決めていない。努さんはパートに出てもいいって言ってくれるけど、努さんのお母さんは家にいてほしいみたい。それにアパートを借りる必要はないだろうって。一緒に住めばいいじゃないかって」
なんとなく、すみれの表情が暗くなった気がした。大丈夫なのだろうか。
すみれの話を聞いていくと旦那になる人の家は、工務店をやっているらしい。努は福岡に親戚がいてそこへ修行をしに行っていたとか。結婚を機に帰って来てあとを継ぐってところだろうか。そうなると、確かにすみれは旦那の家に入るのが筋なのかもしれない。
うーん、そうとも言えないのだろうか。
結婚前からバチバチと嫁と姑の争いが始まっていたら大変だ。まずい状況じゃなきゃいいけど。
どうするのだろう。
ツバキも何か感じ取ったのか、すみれの足もとで身体を擦り付けて顔をみつめていた。
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