猫縁日和

景綱

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第7章 パッと咲いた笑顔の便り

(7-8)

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 梨花はアパートに帰り夕飯の支度をしていた。

 今日は、節子たちとの夕飯は遠慮してきた。
 今頃、三人で楽しく過ごしていることだろう。あっ、三人と一匹か。
 久しぶりにすみれと会ったのだから、邪魔しちゃ悪いだろう。なんて、本当のところは颯が来ることになっている。ここは愛情込めて手料理を振舞わなくては。

 突然LINEがきたときは、びっくりした。

『颯の胃袋をしっかり掴んで、結婚にまっしぐらよ』

 梨花はそう意気込み握り拳を作った。
 颯は和食が好きだ。和食に限らず、洋食でも中華でもなんでもこいって状態にしてあるから問題ない。

 ここ数ヶ月、庄平からしっかり料理を教わって腕も上がっている。
 今日の献立は、きんぴらごぼうと赤魚の竜田揚げとほうれん草のお浸し、豆腐となめこの味噌汁。

 只今奮闘中。

 ごはんは、もち麦入りにした。
 大丈夫、忘れ物はない。

 梨花は時計を確認して、そろそろ来る頃だと料理を仕上げていく。

 颯にすみれの話もしてみよう。どんな反応をするだろうか。
 颯だったらきっと……。梨花が妄想モードになりかけたとき、ドアベルが鳴った。

「颯さん、いらっしゃい」
「お邪魔します。んっ、いい匂い」

 颯の言葉に照れながら「料理頑張っちゃいました」と呟いた。
 颯は頬を緩ませて「楽しみだな」とできあがったばかりの料理を覗き込んでいた。

 味見もきちんとしたしバッチリなはず。颯の好みの味になっていると思うけど、違ったらどうしよう。
 確か薄味が好みだった。だからって、しっかりと旨みのある料理になっているはず。味が薄いだけじゃ美味しくないもの。

 大丈夫、庄平直伝の味だから。

 玄関に立ったままの颯の手を取り上がってもらうと、上着を脱いでもらいハンガーにかける。その流れのまま部屋のソファーにどうぞと指し示す。
 颯が座ったところで「お仕事、お疲れ様」の言葉で労った。

「ありがとう」

 微笑む颯と目が合い、顔が熱くなる。
 もう幸せ。なんだか新婚さんみたい。妄想スイッチがオンになりそうになるのをどうにか引き留め、息を吐く。
 梨花は、気持ちを落ち着かせようと結衣の話に切り替えた。

「結衣さんは元気にしている」
「ああ、元気だよ」

 そう言いつつ颯はちょっと笑った。

「どうしたの」
「結衣のやつ、こないだ道に迷ったらしくてさ。いつものことだけど、ツバキがいたら迷わないのになんて言っていてさ」
「そうなの。ツバキが聞いたら喜ぶわね」
「そうだな」

 なんだか、なんでもない会話に心地よさを感じる。颯の雰囲気がそう思わせるのかもしれない。

「あっ、そうそう冷めないうちに夕飯にしましょう」

 梨花はテーブルに、愛情込めた料理を出していく。
 颯の口に合うだろうか。心臓がバクバクだ。

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