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初めてのキス
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それから一ヶ月ほどが過ぎた。
私もここの生活にも随分慣れ、街を歩く人の中にも顔見知りになったり、ニコラさんを通じて新しく友人もできた。
自宅に引きこもっていた時とは違う。
毎日が刺激的で、笑っていない時がない。ニコラさんはいつだって突拍子もなく、予測不能な行動や表情を見せてくれる。
「今度、森へ行こう。きっと木の実が沢山とれる」
「それは素敵ですわ。木の実を拾いに行くなんて子供の頃ぶりです」
「良かった。もしかすると森へは良いイメージがないかもしれないと思っていたから」
ニコラさんの顔が綻ぶ。
私よりも私を気遣ってくれていると分かって嬉しかった。確かに森へ捨てられけど、それだけで苦手になったりしない。
「あの森は好きです。ニコラさんと出会えた場所ですもの」
気を使って言ったのではなく、これは本心だ。あの森に捨てられなければ、私達は出会えなかった。だから今となっては、感謝している。
あの森に、私を捨ててくれたことを。
「ぅぅうう……アリシアをすっごく抱きしめたい!!」
「だっ!! そんなハッキリ申されれば、なんとお答えすれば良いのか分かりません」
「じゃあ、手だけ繋いでもいい?」
「勿論ですわ」
スッと手を差し出した。
ニコラさんのスキンシップにも、ほんの少しだけ慣れてきたから、手を繋ぐくらいなら大丈夫だろうと。
でもニコラさんは繋いだ手をグッと引っぱり、私を懐に収めたのだ。
「えぇぇ……」
温かくて逞しい胸に頬を埋めてしまった。
そのままニコラさんは私が逃げられないように、ギュッと包み込んで離さなかった。
「やっぱり、どうしてもこうしかった。アリシアが嬉しいことを言ってくれたから」
「そんな………いつもニコラさんが私を喜ばせてくれるから」
「だから?」
「……私も、たまには素直に……ならないとって、思いまして」
「じゃあ、このまま顔見ないで良いから言って。僕を好きになった?」
そんなの、きっと初めから……私に、微笑みかけてくれたあの瞬間から……、私はきっと……。
「す……すき……です」
「アリシア!!」
ニコラさんの腕にさらに力が入る。
抱きしめられると、ニコラさんの体格の良さが際立って余計にドキドキしてしまう。
フッと額に柔らかいものが触れた。
ニコラさんが口付けたのだ。
「アリシア、何度君に好きだと伝えても足りないくらい、君が好きだよ」
もう一度額に口付ける。
「発情期が早くくればいいのに」
ニコラさんはこの一ヶ月、スキンシップは多かったものの、キス一つして来なかった。私を怖がらせないために、少しずつ慣れていこうと言ってくれていた。
でもこのままで良いのか、私は悩んでいた。その……つまりは……、健全な成人男性が女性と二人きりで過ごしていて……。そういうことを全くせずに過ごせるものなのかと……。
私も経験がないとはいえ、一応は大人だ。そういうことに興味がないわけではない。
(未知の世界ではあるけれど)
もしニコラさんが、私のせいで我慢しているなら、それは私の責任だ。
「あ、あの……ニコラさん……」
「アリシア?」
ニコラさんを見上げて瞼を閉じた。
この人になら、何をされても良いと思える。
「それって……もう! 君はズルいな」
言い終わらないタイミングでもう唇は重なっていた。
柔らかい唇が軽く吸い付いて離れる。
(これが……キス……)
全身がじんわりとわなないた。
世の中にこんな悦びが存在していたのか。
薄らと目を開けようとしたところで、再びニコラさんの顔が重なる。
自分の全てをニコラさんに委ね、降り注がれるキスの嵐を受け止めた。
自分からニコラさんを抱きしめているのにも気付かず、私達は唇を重ねる行為に夢中になっていた。
私もここの生活にも随分慣れ、街を歩く人の中にも顔見知りになったり、ニコラさんを通じて新しく友人もできた。
自宅に引きこもっていた時とは違う。
毎日が刺激的で、笑っていない時がない。ニコラさんはいつだって突拍子もなく、予測不能な行動や表情を見せてくれる。
「今度、森へ行こう。きっと木の実が沢山とれる」
「それは素敵ですわ。木の実を拾いに行くなんて子供の頃ぶりです」
「良かった。もしかすると森へは良いイメージがないかもしれないと思っていたから」
ニコラさんの顔が綻ぶ。
私よりも私を気遣ってくれていると分かって嬉しかった。確かに森へ捨てられけど、それだけで苦手になったりしない。
「あの森は好きです。ニコラさんと出会えた場所ですもの」
気を使って言ったのではなく、これは本心だ。あの森に捨てられなければ、私達は出会えなかった。だから今となっては、感謝している。
あの森に、私を捨ててくれたことを。
「ぅぅうう……アリシアをすっごく抱きしめたい!!」
「だっ!! そんなハッキリ申されれば、なんとお答えすれば良いのか分かりません」
「じゃあ、手だけ繋いでもいい?」
「勿論ですわ」
スッと手を差し出した。
ニコラさんのスキンシップにも、ほんの少しだけ慣れてきたから、手を繋ぐくらいなら大丈夫だろうと。
でもニコラさんは繋いだ手をグッと引っぱり、私を懐に収めたのだ。
「えぇぇ……」
温かくて逞しい胸に頬を埋めてしまった。
そのままニコラさんは私が逃げられないように、ギュッと包み込んで離さなかった。
「やっぱり、どうしてもこうしかった。アリシアが嬉しいことを言ってくれたから」
「そんな………いつもニコラさんが私を喜ばせてくれるから」
「だから?」
「……私も、たまには素直に……ならないとって、思いまして」
「じゃあ、このまま顔見ないで良いから言って。僕を好きになった?」
そんなの、きっと初めから……私に、微笑みかけてくれたあの瞬間から……、私はきっと……。
「す……すき……です」
「アリシア!!」
ニコラさんの腕にさらに力が入る。
抱きしめられると、ニコラさんの体格の良さが際立って余計にドキドキしてしまう。
フッと額に柔らかいものが触れた。
ニコラさんが口付けたのだ。
「アリシア、何度君に好きだと伝えても足りないくらい、君が好きだよ」
もう一度額に口付ける。
「発情期が早くくればいいのに」
ニコラさんはこの一ヶ月、スキンシップは多かったものの、キス一つして来なかった。私を怖がらせないために、少しずつ慣れていこうと言ってくれていた。
でもこのままで良いのか、私は悩んでいた。その……つまりは……、健全な成人男性が女性と二人きりで過ごしていて……。そういうことを全くせずに過ごせるものなのかと……。
私も経験がないとはいえ、一応は大人だ。そういうことに興味がないわけではない。
(未知の世界ではあるけれど)
もしニコラさんが、私のせいで我慢しているなら、それは私の責任だ。
「あ、あの……ニコラさん……」
「アリシア?」
ニコラさんを見上げて瞼を閉じた。
この人になら、何をされても良いと思える。
「それって……もう! 君はズルいな」
言い終わらないタイミングでもう唇は重なっていた。
柔らかい唇が軽く吸い付いて離れる。
(これが……キス……)
全身がじんわりとわなないた。
世の中にこんな悦びが存在していたのか。
薄らと目を開けようとしたところで、再びニコラさんの顔が重なる。
自分の全てをニコラさんに委ね、降り注がれるキスの嵐を受け止めた。
自分からニコラさんを抱きしめているのにも気付かず、私達は唇を重ねる行為に夢中になっていた。
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