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番の証

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 頸にニコラさんの歯型が刻まれた。
 その後、絶頂と共に意識を失った私は昼過ぎまで眠っていた。
 今にして思えば、朝から数時間に渡り抱き合っていたなんて、羞恥でしかない。

 しかもニコラさんは、全裸のまま眠ってしまった私の体を綺麗に拭き、新しい夜着を着せ、シーツも交換して寝かせてくれていた。

 抱き合っている間はお互いに気持ちが昂っているものの、正気になってから介抱されていたところは想像もしたくない。

「起きた? アリシア」
「私……眠ってしまったのですね」
「ごめんね。初めてなのに、あんなに激しくしちゃつ……」

 心なしか耳がしょんぼりと垂れているように感じる。
 肩を落とし落ち込んでいるような、反省しているようなニコラさんをかわいいと思った。

 ベッドの隣にしゃがみ込んでいるニコラさんに腕を伸ばす。
 それに応えて、ベッドに入って腕枕をしてくれた。

「私、やっぱり全然怖くありませんでした。ニコラさんがずっと気にかけてくれていたから」
「僕も、幸せな時間だったよ。頸、触ってみて?」

 そっと自分の頸に手を添えると、そこには確かにニコラさんの歯型の痕があった。

「……嬉しい」
 感極まって頬に涙が一筋流れた。

 モルア家にいた時、森に捨てられた時、まさか自分にこんな未来が待ち受けているなんて、思ってもみなかった。
 ニコラさんが来てくれなかったら、私はあの森で息絶える運命だったのだ。

 いや、そうではないと思いたい。
 ニコラさんに出会うために、あの森に捨てられたのだと。

「アリシア、お腹すいてない?」
「そう言われれば、急にお腹が空いてきました。でも、動くには体が重くて……」
 どうもまだ疲れが取れていないのか、体がダル重くて起き上がれない。
 ニコラさんはまた「ごめん」と謝り、食事を運んできてくれた。

 自分でも甘えていると分かっている。
 でもニコラさんの優しさに浸っていたい。

 結局、食事も食べさせてもらった。

 ニコラさんはよく私に「甘えてね」と言うけれど、それがどこまでのことなのかが、まだ分からないでいる。
 でも、お世話をするのは好きそうだ。
 終始笑顔でスプーンを私の口元に運ぶ。

「アリシア、スープが口元についちゃった」
 そう言うと、ナプキンで拭こうとした私の手を抑え、舌でペロッと舐めた。
「わっ、わざと……ですか?」
「えへへ、バレた?」

 この笑顔を見せられれば、私がつい笑ってしまうことをニコラさんは自覚している。
 だから、誤魔化したい時はいつだってこの顔で笑うのだ。

「今日はのんびり過ごそう」
「そうしたいです」
 再び、ニコラさんの懐に忍び込む。
 包み込まれた安心感で、私は再び眠りについた。

 ニコラさんが優しく髪を撫でてくれている。
 日の光が、二人を讃えるように差し込んだ。
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