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第七話 邂逅と予兆
第七話 二
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静けさの中に自分たちの足音と息づかい、互いの存在を感じながら、あかりたちは無言で歩を進める。間もなく最初の巡回地点である乾の結界前に到着した。
風景こそどこにでもある林の一角だが、気を研ぎ澄ませていると結界を察知できる。あかりが結界をつぶさに観察している間、結月は周辺に気の異常がないかを丁寧に確認していた。
「周辺に異常はなかった。あかりの方は?」
「結界もちゃんと維持されてたよ」
「次の結界、行こう」
二人は兌の結界に向かって歩き始めた。
道中、陰の国の手の者に出会うことはなく、拍子抜けするくらいにあっさりと結界巡回は順調に進んだ。
兌の次は坤の結界を確認し、最後の巡回場所である離の結界へ向かっている途中に異変が起きた。
行こうとしていた離の結界の方から妖と多くの人の気配が感じられる。あかりと結月は顔を見合わせると木の陰に隠れた。
最初に聞こえたのはかなりの速さで走っていると思しき足音だった。あかりたちは木の陰からこっそりと音の主を盗み見た。
(狐の妖?)
目の前を一瞬で駆け抜けていったのは黒い狐の妖だった。必死な様子から誰かから逃げているのではないかと予測できる。案の定、その後から黒い服装の三人の人間が追ってきていた。
(追手は陰の国の者……⁉)
見間違いようのない黒い袴から追手の正体を察したあかりは、すぐそばにいる結月を振り仰いだ。
(放っておけないよ! あの狐の妖を助けたい)
結月はとっさに、今にも飛び出しそうなあかりの手首をつかんで首を振った。そして目線で表を見るように促す。仕方なくあかりが結月に従って再度表の通りに視線を戻すと、どういうわけか走り去った三人組とは別の四人組がさらに後を追っていた。彼らもまた黒袴姿で陰の国の者であることがうかがい知れる。
(どういうこと? 応援を送った? それとも仲間割れでもしたっていうの?)
不可解な状況にあかりは首をひねったが、考えても何もわからない。ただひとつわかることがあるとしたら、それは陰の国の者に追われている狐の妖を助け出したいということだけだった。
式神使いの集団である彼らに妖が捕まったとしたらその行く末は容易に想像できてしまう。実際にあかりも似たような目に遭っているので他人事とは思えず背筋が凍えるようだった。
風景こそどこにでもある林の一角だが、気を研ぎ澄ませていると結界を察知できる。あかりが結界をつぶさに観察している間、結月は周辺に気の異常がないかを丁寧に確認していた。
「周辺に異常はなかった。あかりの方は?」
「結界もちゃんと維持されてたよ」
「次の結界、行こう」
二人は兌の結界に向かって歩き始めた。
道中、陰の国の手の者に出会うことはなく、拍子抜けするくらいにあっさりと結界巡回は順調に進んだ。
兌の次は坤の結界を確認し、最後の巡回場所である離の結界へ向かっている途中に異変が起きた。
行こうとしていた離の結界の方から妖と多くの人の気配が感じられる。あかりと結月は顔を見合わせると木の陰に隠れた。
最初に聞こえたのはかなりの速さで走っていると思しき足音だった。あかりたちは木の陰からこっそりと音の主を盗み見た。
(狐の妖?)
目の前を一瞬で駆け抜けていったのは黒い狐の妖だった。必死な様子から誰かから逃げているのではないかと予測できる。案の定、その後から黒い服装の三人の人間が追ってきていた。
(追手は陰の国の者……⁉)
見間違いようのない黒い袴から追手の正体を察したあかりは、すぐそばにいる結月を振り仰いだ。
(放っておけないよ! あの狐の妖を助けたい)
結月はとっさに、今にも飛び出しそうなあかりの手首をつかんで首を振った。そして目線で表を見るように促す。仕方なくあかりが結月に従って再度表の通りに視線を戻すと、どういうわけか走り去った三人組とは別の四人組がさらに後を追っていた。彼らもまた黒袴姿で陰の国の者であることがうかがい知れる。
(どういうこと? 応援を送った? それとも仲間割れでもしたっていうの?)
不可解な状況にあかりは首をひねったが、考えても何もわからない。ただひとつわかることがあるとしたら、それは陰の国の者に追われている狐の妖を助け出したいということだけだった。
式神使いの集団である彼らに妖が捕まったとしたらその行く末は容易に想像できてしまう。実際にあかりも似たような目に遭っているので他人事とは思えず背筋が凍えるようだった。
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