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〈16〉毒を食うなら皿まで食うしかないじゃないか

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「キモッ!僕に近寄るなよ!」

    と、ものすごく嫌そうな顔をして速攻離れていってしまったエリオット。顔色は真っ青だったし私の事をものすごく睨みながら走り去るし……本当になんなのよ?!

    もう、この世界に来てからのストレスゲージが最上限を越えて今にも爆発しそうである。






    実はちょっとだけ、ほんの一瞬でもエリオットと仲良くなれるかも?なんて思っていたのだが、そんな事を考えていた自分が情けない。どう見ても嫌われているのは間違いないだろう。あれは全拒否感がハンパなかった。

    これが元々のヒロインならばめちゃくちゃ悲しんで落ち込んでしまうところだろうが……。




    だが!私はヒロインであってヒロインでなし!

    あんなムカつく態度に我慢してられるかぁぁぁ!!









***






「……あの。私よ、エレナ。エリオットに話があるのよ」

    扉を開け、私の顔を見た途端に「げっ!」と不快感を全面に押し出してくるエリオットの姿に内心ニヤリと笑ってやる。

    ふっ、安易に扉を開けるとは愚か者め!もし私が暗殺者ならあなたの命はすでにないのよ!

    ……いや、別に暗殺しに来たわけではない。なんか変なテンションになってしまった。

「……何の用だよ。僕に近寄るなって言っただろ?!」

    エリオットはまるで汚物でも見るかのように眉をしかめて手をシッシッと前後させてくる。だがそんな事でめげる私ではない。あまりにムカついて一回しばいてやろうかとも思ったがそこは(精神が)大人な私が歩み寄ってやろうと思ったのだ。

    あれから考えたのだが、エリオットは以前「家督争いに興味がない」と言っていた。そして亡き侯爵の遺言で全ての権限を持つ私に取り入ろうとするでも無く、だからと言って残りのふたりのように私を攻撃しようともしてこない。そしてヒロインの感謝の言葉になど揺るがされないほどに私を嫌っている……。

    その結論は、“この世界はきっとエリオットヤンデレルートではない!”と言うことである!なぜならこのゲームに置いて三兄弟は自分が次期侯爵になるためにヒロインを邪魔にしたりドM奴隷にしたり廃人にしたりするはずだからだ!

    これは賭けである。大きな一発勝負。

    私はエリオットルートの詳しい情報は知らないし、もしかしたら今の状況がイベントの可能性はあるが……だが私の直感が「こいつなんか違う」と訴えているのだ。たぶん、ジェンキンスの聖女事件は何かのイベントだったのだろう。ジェンキンスに惹かれていたヒロインがふたりの密会現場を目撃して必死にジェンキンス好みのドMになろうとするとか……そんな想像をしてゾッとした。もしもあの時、あのままエリオットが現れなければジェンキンスルートだった場合にどうなっていたのかはもう恐ろしくて想像もできない。いくら私が否定してもゲームの強制力が働いてらどうなるかわからないじゃないか。

    今のこの世界がエリオットルートでないと信じて、ではルーファスとジェンキンスのルートのどちらなのかを調べたい。
    だから……。

「ひとつ、提案があって来たの……。

    ねぇ、エリオット。私と手を組まない?」

「はぁ?!」


    私は、エリオットを共犯者にしようと考えたのである。

 
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