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〈18〉謝罪はするが、諦められるはずがない
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とにかくエリオットを懐柔し、同盟を結ぼう!とエリオットの部屋へやってきた私だったが……。
「やめてぇ!僕はヤンデレ化するのもヒロインみたいな阿婆擦れに色んな事されるのも絶対嫌なんだからぁ!!」
自身の体を抱きしめながらそう叫び、震えているエリオットに驚いてしまった。
「い、今……なんて……」
いつも生意気そうに悪態をつき私を敵視していたエリオットが、まるで猛獣の前で絶体絶命になった小動物のように怯えているではないか。
いや、なによりも今なんて言った?
……え?“ヤンデレ”?、“ヒロイン“?なんか阿婆擦れとかも聞こえたけれど確かに本来のヒロインならば人によってはそう見えなくもない。いや、私は身も心もティンカーベルだと訴えたいがそれはひとまず置いといて!
それよりも、そんなワードを知っていて叫ぶということはこの世界があの乙女ゲームの世界だと知っているということ……?!
知っているの?マジで?
それってつまり、もしかしたらもしかするって事でいいのよね……?!
ずっと自分だけがなぜこんなことになっているのだろうかと、不安に思っていた。それでも生き延びる為になんとかしなくちゃと自分を奮い立たせていたが……まさかの転生者がいたなんてーーーー!
「あなた、もしかしてもしかするの?!」
私はエリオットの両肩を掴んでいる手に思わず力を込めた。怯えた目をしたエリオットの顔色がどんどん悪くなっているのにも気付かず、もう勢いが止まらない。
「は?なにが……」
エリオットが目をキョロキョロと泳がせながら逃げようとするが、逃がすわけにはいかないのだ!
「あなたも転生者なのかって聞いてるのよ!」
「………………」ぱたり。
「あ!エリオット!?」
私が核心に触れた途端、なぜかエリオットは白眼を剥いて気絶してしまったのだった。
え?なんで気絶??さっきのは転生者カミングアウトだったんじゃないの?
「……あっ」
倒れてしまったエリオットをじっくり見てたらやっと顔色が悪いことに気付き、なんとか持ち上げてベッドへと運んだ。思ったよりも軽いその体に弱々しさを感じて、なんだか申し訳なくなってしまった。
……エリオットが本当に転生者だとして、私にそれがバレたからショックで気絶したのかもしれない。エリオットがいつから転生に気付いて生きてきたのかはわからないが、たぶん私よりずっと劣悪な環境にいたのではないか。と。しかも自分が攻略対象者だとわかっていたのならば尚更か。……私の事をヒロインとして認識していて敵視していたとなれば、自分のルートの結末を知っていてそれを不満に思っているのかもしれない。
それでも私は、同じ境遇の人間に出会えて嬉しく思っている。それに、さっきのエリオットの叫びがなんだか可愛らしく……。ん?
なんか、エリオットの雰囲気がいつもと違ったよね?
自身の肩を抱きしめて怯える姿はいつもの悪態をつくふてぶてしい姿とは全く違った。もっと初々しいというか、このゲームの内容に嫌悪感を抱いているような……。
このゲームは乙女ゲームと謳いながらかなりの18禁だ。はっきり言って未成年にとってはエグい内容である。だからこそ18禁なのだが、未成年がこっそりプレイしたからって罰せられるわけではないのだ。
……もしかして、もしかしたらだけど……エリオットの中の人って……未成年?たまたまこの乙女ゲームをプレイしちゃってトラウマ植え付けられちゃった?
私はエリオットルートは詳しく知らないが、暴走したエリオットがヤンデレ発動してエグい事になるらしい。とだけはわかっているが……。そうだ。あの女主任は確かに「攻略対象者も全て不幸になる」と言っていたではないか。
「……もしかして、サンプルじゃなくて正規品をプレイしたの?」
あの女主任は確か浮気した婚約者と揉めていた。そして浮気相手の女に対する怨念をこのゲームに込めたのだ。その私怨はほとんどがヒロインに向けられてはいるが、そのヒロインと結ばれる攻略対象者が浮気した元婚約者に重ねられている可能性は高い。
つまり、最終的にヒロインも攻略対象者も全員が最終的に不幸になるゲームなのである。……蜘蛛の糸ほどの隠しルートを覗いてだ。
「……エリオット」
私は未だ気を失ったままのエリオットの頭を撫でながら「ごめんね」と謝った。
エリオットからしたら私に転生者である事がバレるのは嫌だったのだろうとは思ったが、同じ転生者が見つかって私は本当に嬉しいのだ。思ってた以上にホッとしている自分がいることに驚いたが、それがエリオットを苦しめたのだと思うと申し訳なく思う。
でも……。
ポロッと、涙をが溢れる。
私だって、本当は不安でいっぱいだった。誰かに相談したかったし、不安をぶちまけたかった。
でもそれが出来ないとわかっていたから不安を押込めて我慢してきたけれど、眼の前に同じ境遇の人間がいるとわかった途端に我慢してきた気持ちが抑えきれなくなってしまったのだ。
「ごめんね」
もう一度謝り、エリオットの額の汗をそっと拭う。
もし本当にエリオットが転生者であって、それが私にバレたことをショックに思っているのなら……せめてエリオットを全力で守ろうと誓った。
いくらでも謝ろう。それでも……絶対離さないけれどね。それくらいには切羽詰まっているのだから。
「やめてぇ!僕はヤンデレ化するのもヒロインみたいな阿婆擦れに色んな事されるのも絶対嫌なんだからぁ!!」
自身の体を抱きしめながらそう叫び、震えているエリオットに驚いてしまった。
「い、今……なんて……」
いつも生意気そうに悪態をつき私を敵視していたエリオットが、まるで猛獣の前で絶体絶命になった小動物のように怯えているではないか。
いや、なによりも今なんて言った?
……え?“ヤンデレ”?、“ヒロイン“?なんか阿婆擦れとかも聞こえたけれど確かに本来のヒロインならば人によってはそう見えなくもない。いや、私は身も心もティンカーベルだと訴えたいがそれはひとまず置いといて!
それよりも、そんなワードを知っていて叫ぶということはこの世界があの乙女ゲームの世界だと知っているということ……?!
知っているの?マジで?
それってつまり、もしかしたらもしかするって事でいいのよね……?!
ずっと自分だけがなぜこんなことになっているのだろうかと、不安に思っていた。それでも生き延びる為になんとかしなくちゃと自分を奮い立たせていたが……まさかの転生者がいたなんてーーーー!
「あなた、もしかしてもしかするの?!」
私はエリオットの両肩を掴んでいる手に思わず力を込めた。怯えた目をしたエリオットの顔色がどんどん悪くなっているのにも気付かず、もう勢いが止まらない。
「は?なにが……」
エリオットが目をキョロキョロと泳がせながら逃げようとするが、逃がすわけにはいかないのだ!
「あなたも転生者なのかって聞いてるのよ!」
「………………」ぱたり。
「あ!エリオット!?」
私が核心に触れた途端、なぜかエリオットは白眼を剥いて気絶してしまったのだった。
え?なんで気絶??さっきのは転生者カミングアウトだったんじゃないの?
「……あっ」
倒れてしまったエリオットをじっくり見てたらやっと顔色が悪いことに気付き、なんとか持ち上げてベッドへと運んだ。思ったよりも軽いその体に弱々しさを感じて、なんだか申し訳なくなってしまった。
……エリオットが本当に転生者だとして、私にそれがバレたからショックで気絶したのかもしれない。エリオットがいつから転生に気付いて生きてきたのかはわからないが、たぶん私よりずっと劣悪な環境にいたのではないか。と。しかも自分が攻略対象者だとわかっていたのならば尚更か。……私の事をヒロインとして認識していて敵視していたとなれば、自分のルートの結末を知っていてそれを不満に思っているのかもしれない。
それでも私は、同じ境遇の人間に出会えて嬉しく思っている。それに、さっきのエリオットの叫びがなんだか可愛らしく……。ん?
なんか、エリオットの雰囲気がいつもと違ったよね?
自身の肩を抱きしめて怯える姿はいつもの悪態をつくふてぶてしい姿とは全く違った。もっと初々しいというか、このゲームの内容に嫌悪感を抱いているような……。
このゲームは乙女ゲームと謳いながらかなりの18禁だ。はっきり言って未成年にとってはエグい内容である。だからこそ18禁なのだが、未成年がこっそりプレイしたからって罰せられるわけではないのだ。
……もしかして、もしかしたらだけど……エリオットの中の人って……未成年?たまたまこの乙女ゲームをプレイしちゃってトラウマ植え付けられちゃった?
私はエリオットルートは詳しく知らないが、暴走したエリオットがヤンデレ発動してエグい事になるらしい。とだけはわかっているが……。そうだ。あの女主任は確かに「攻略対象者も全て不幸になる」と言っていたではないか。
「……もしかして、サンプルじゃなくて正規品をプレイしたの?」
あの女主任は確か浮気した婚約者と揉めていた。そして浮気相手の女に対する怨念をこのゲームに込めたのだ。その私怨はほとんどがヒロインに向けられてはいるが、そのヒロインと結ばれる攻略対象者が浮気した元婚約者に重ねられている可能性は高い。
つまり、最終的にヒロインも攻略対象者も全員が最終的に不幸になるゲームなのである。……蜘蛛の糸ほどの隠しルートを覗いてだ。
「……エリオット」
私は未だ気を失ったままのエリオットの頭を撫でながら「ごめんね」と謝った。
エリオットからしたら私に転生者である事がバレるのは嫌だったのだろうとは思ったが、同じ転生者が見つかって私は本当に嬉しいのだ。思ってた以上にホッとしている自分がいることに驚いたが、それがエリオットを苦しめたのだと思うと申し訳なく思う。
でも……。
ポロッと、涙をが溢れる。
私だって、本当は不安でいっぱいだった。誰かに相談したかったし、不安をぶちまけたかった。
でもそれが出来ないとわかっていたから不安を押込めて我慢してきたけれど、眼の前に同じ境遇の人間がいるとわかった途端に我慢してきた気持ちが抑えきれなくなってしまったのだ。
「ごめんね」
もう一度謝り、エリオットの額の汗をそっと拭う。
もし本当にエリオットが転生者であって、それが私にバレたことをショックに思っているのなら……せめてエリオットを全力で守ろうと誓った。
いくらでも謝ろう。それでも……絶対離さないけれどね。それくらいには切羽詰まっているのだから。
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