やがて恋に変わるもの。

若菜

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8: Desire ※ 〜欲望の発露〜

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 ***

 翌朝、早めに出勤したがもう部屋は片付けられており、換気のためか窓が開いていて、彼はもう仕事中だった。

「おはようございます、ヴィクトルさ……ヴィクトル。早いですね」
「……君も早いね、おはよう、パウラ」

 名前を呼ぶのは恥ずかしかったけど、目を細めて嬉しそうに笑ってくれたので、ほっとする。正直、昨日あんな事があったので……どんな顔をしようか迷っていたのだ。

「夜明け頃に来て片付けておいた。昨日は本当にその……すまなかった。」
「いえ、あれは事故ですから……今日の作業は昨日の続きからで大丈夫ですか?」
「うん、まずデータを一旦まとめてください。」

 さらりと業務に移り、少し進めた辺りでカール様が来た。

「おはようございます。あれ、パウラ早いですね!」
「おはようございます。昨日、データ整理が上手くいかなかったので早めに来ちゃいました。」
「仕事熱心ですね」
「そう見えてたら作戦成功です」
「ええ?」

 人が増えると更に空気が和む。

「お茶を淹れますが、飲みますか?」
「はい、いただきます」
「ヴィクトル様もいかがですか?」
「……もらいます」

 目線を合わせると、少し不満気?なんだろう。

「パウラもヴィクトル様の名前呼び、慣れました?」

 カール様の言葉に、びくっと肩が上がる。

「あ、はい!頑張ってます」
「頑張らずに呼べるようになってほしいですね」

 と、その言葉にカール様が微妙な表情になる。

「なんだ?」
「いえ?仲良いなーと思いまして」
「そうだな」
「……ヴィクトル様が否定しない、だと……?」

 なんだか2人で騒ぎ出したので、お茶を淹れながら眺めていた。綺麗な赤いお茶をカップへ注ぎ、それぞれのデスクへと置く。

「こちらに置きますね」
「ああ、ありがとう」

 また目が合えば、今度は視線が優しい。さっきのは見間違いかな?私もカップを手に自席へ戻り、ぱらりと書類をめくる。それぞれが今日の仕事に考えを回らせた。と、カール様が試薬を並べながら。

「あれ?ヴィクトル様、あのフラスコの紫の薬、どこに置きました?」

 ひゅ、と喉が鳴る。

「ん?あぁ……あれは昨日、うっかり他の試薬と一緒に流してしまったんだ」
「えっ!ヴィクトル様が?!珍しい事しましたね……あれ揮発性高いですよね。大丈夫でしたか?」

 今度は、うっ、と息が詰まる。

「ああ、大丈夫だ。しかしすまない、補充を忘れていた。新しいものを試薬室から出してくる。」
「劇薬ですので、責任者の引き取りになりますね。よろしくお願いします」

 そう言って彼が出ていくのを見送り、ほっ、と小さくため息をつく。入れ替わりにイルダ様も来て、そのままバタバタと仕事に集中していった。
 実験が進むと、今度はカール様とイルダ様に別室の機材を使わなくてはならない作業が出てきてしまう。

「では、あちらで作業してそのまま昼休憩も入るので……こちらには15時くらいに戻ります」
「わかった、気をつけて作業してきてくれ」

 そう言って二人が出ていく。試薬でのポーションの変化を確認しつつ記録していると、いつの間にかすぐ後ろでヴィクトルが見ていた。

「これ、もう次のこの試薬を加えてもいいでしょうか」
「前の時間は、これ?……うん、いいだろう」

 突然、肩に彼の顎が乗せられる。そのまま抱き抱えられる様になってしまい、硬直する。ヴィクトルは何気なく、いつも通りの態度で、……距離がゼロだ。

「……あの、ヴィクトル?」
「うん?」
「もう少し、その、離れて……いただけると」
「どうして?」
「ど、どうしてって、ヴィクトル」
「うん」

 すり、と首筋に頬擦りされピクっと肩が跳ねる。近寄ったその息が、昨夜の様に仄かに熱を帯びている。パウラはそっと持っていた器具を机に戻した。

「……ごめん、まだ……昨日の薬の効果、かもしれない」

 ピタリと身体がくっついてしまえば、昨日あんなに触れた彼のそこが固く熱くなっているのが分かる。向き合おうとして身体を捻り、その剛直を腰で擦り上げてしまった。

「あっ、パウラ……」
「あ、あの、今のは偶然!」
「すまない、治らない……ちょっと、来て」

 するりと腰に手を回してエスコートするように彼女を仮眠室へと連れ込み、ぱたん、とドアを閉じた。驚いて彼を見上げる。

「ヴィクトル、また……お手伝いを?」
「パウラ……もう、それでは足りないんだ」

 ぎゅうと抱きしめられ、彼の顔が近づく。確かに薬の効果の様で、さっきより息も荒く顔も赤くなっている。

「口付けを、しても?」
「……はい」

 小さく頷くと、唇が触れる。最初はそっと、しかし確認するようにちろりと舌先で唇を舐めると、性急にそれが彼女の小さな唇を割り入ってきた。
 歯列をなぞってから舌先を絡め、小さな舌を撫でる様に啜れば、パウラの中にも快感の芽が宿る。

「ん、あふ……」
「はぁ……ああ、すまない、抑えが効かない……それに避妊具の補充を、忘れていたな」
「どう、すれば」
「……君の、ここを貸して」

 ここ、と言いながら触れるのは先ほどから揉まれている柔らかい尻で。

「えっ」
「あ、そうじゃない、いや、そうだけど……。その、ここで私のこれを挟んで欲しい。」

 そう呟きながら既に手は白衣とスカートをたくし上げている。上がる吐息によほど辛いのだろう、と、ついその提案を受け入れてしまった。カール様とイルダ様が戻る前に、この熱をなんとかしなくてはならない。

「パウラ、ここに手をついて」
「は、はい」

 ベッド脇の壁にある鏡に手をつかされる。鏡に映るのは下半身を露出させられた自分と、背後で自身を取り出しているヴィクトル様。痴態、としか言いようのない光景なのに、なぜか下腹が疼いた。

「足は閉じていて……そう、そのまま」
「あっ」

 しっかり閉じた腿の間に熱い杭が差し込まれる。それは下着越しにゆっくりとパウラの襞をなぞり始める。

「ああ、これは……気持ちがいい」
「ん……大丈夫、ですか……?」
「うん……君も気持ちよくなって欲しい」
「えと、あの私は」
「こちらも、少し触れさせて……」
「きゃっ」

 腰を支えていた両手が上に上がり、白衣の前を開き、シャツも寛げてしまうと、胸当てをずり上げる。ふるりと白い胸が鏡の前に現れた。

「ああ、君は……ここもこんなに綺麗なのか」
「だ、め……ヴィクトル。こんな」

 うっとりするような口調で耳元で告げられ、目の前の光景に羞恥心でいっぱいになる。彼はゆっくりと胸に手を添えて持ち上げ、もう一度ふるっと揺すると、まだ柔らかな蕾を指で擦り始める。足の間の剛直もゆるゆると蠢き、それに合わせるように腰が揺れてしまう。

「君も気持ちいい、のか」
「は、はい……あ、んん……」
「ああ……これでは下着が汚れてしまうな、やはり……」
「あっ、だめ、やん!」

 一度はさんだ杭を下げ、するりと片手がパウラの下着を取り去ろうと手を差し込まれた。

「こ、これはこのまま!」
「でも、汚れたら今日このあと……履いてられないぞ」
「あの、でも……」

 どうしよう。と逡巡する間に、下着の中に入り込んだ指が秘所をなぞり始めてしまう。

「やっ、直接触ったら……!」

 グチュグチュと水音が響き、感じていたことがバレてしまった。

「こんなに、感じていたのか……」
「やぁ、だめぇ……」
「まだ、ダメ?」

 耳元で囁きながら胸と秘所を弄られ、お腹の底が疼く。
 蕾は摘まれてすっかり固くなり、下着の中は撫でられるたびにとぷりと蜜を溢れさせる。彼が指でそれを掬い取り、その上にある小さく震える真珠にちゅるっと塗り付け、ぐちゅりと指の腹で押し上げた、その瞬間。

「ん、……あぁあっ!」
「ああ……イったね」

 目の前がチカチカして、鏡の中の女が身体を捩った。

「やぁ……っ」
「もう、立ってられない?……ベッドに行こうか」

 崩れ落ちそうな身体を支えられ、白衣を脱がされた。そのまま、すぐ横のベッドへと横たえられる。

「ヴィクトル、さまは……大丈夫ですか?」
「うん、私も限界だな……ほんとにこれ、取らない?」

 そういって下着を少し引っ張られるが、避妊具がない今は、どうしてもその最後の砦を取り去りたくはなかった。

「はい、そのままで……」
「……わかった。ではもう一度、ここを借りるよ」

 そう言うと、今度は足を纏めて持ち上げられてしまう。

「やっ、あの」
「ああ、いい眺めだな。ここに……僕のを」

 熱に浮かされる様に呟きながら、ヴィクトルがまた剛直をパウラの秘所へとあてがうと、押し付ける様にその上を上下に擦り始めた。腿の間に挟まれたそれは、ささやかにふくらんだ真珠も擦ってしまう。

「あっ、あん、はぁっ、ヴィクトル、さま」
「ああ……気持ちがいい、パウラ……っ」
「んん、あぁ……」
「もう、イきそう、だ」

 息が荒くなり、抽送も早められる。上に乗られてまるで本当に『している』ような体勢と、そこから与えられる刺激にくらくらと目が眩む。いく度目かにパウラも達した時、同時にヴィクトルも精を放った。

「はぁ……君の……下着が」
「え、あっ……」

 予想できた結果ではあったが、下着はぐしょぐしょに濡れ、身につけていられる状態ではなかった。

「あぁ……洗わなきゃ……」
「僕が脱がせていい?」
「えっ?きゃ!」

 足の間に座ったままのヴィクトルに、その白濁ごと下着をするりと抜き取られた。

「やぁ……!」

 パウラは足を擦り合わせ、急いでスカートを下ろす。

「だから脱いでおこう、って言っただろう?」
「だ、だって……直にするのは、まだ……!」
「……まだ、何?」
「はず、かしい、から」

 ふうん、という顔で彼女を見下ろしながら、ヴィクトルは指摘する。

「では君は、そのままの格好で実験を続けるの?」
「……あっ?」

 そんな事、できるわけが無かった。絶望的な表情になったパウラを見て、ぷっとヴィクトルが吹き出した。

「パウラ、ごめん。大丈夫だ。洗ったらすぐに魔法で乾かしてあげる」
「あっ!乾燥魔法……忘れてました!」

 ちゅ、と額に口付けながらヴィクトルは楽しそうだ。

「……いじわるです」
「どうしてかな。君の反応が見たくて、つい」
「早く……洗います!」
「そうだね、皆が帰ってくる前に……ね」

 昨日の件に続く証拠隠滅案件だわ、とパウラはため息をつき、肩を落とした。

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